仕込みの工夫で高効率化|ワンオペでも成立する営業設計の全貌


人件費の高騰や人材不足は今やどの業界も抱える深刻な課題となっています。
しかし、誰もが効率化や省人化に頭を悩ませる中、ワンオペ(1人営業)でありながら70種類以上ものメニューを提供し、圧倒的な高効率化を実現しているお店があります。

「最終的に人件費が店を潰すんだなっていうようなところを思ったことがあって。それだったら、1人でできるものを作り出せばいいんだなと。」
そう語るのは、元スーツアクターという異色の経歴を持つオーナーの渡辺さん。
店内が仮面ライダーなどのフィギュアで埋め尽くされているというユニークな一面を持つ一方で、その経営戦略は非常に合理的です。
ワンオペの限界を超える、驚きの仕込みと営業設計の裏側には、これからの個人店が生き残るための緻密な戦略が隠されていました。

1週間分をストック! 「真空パック×冷凍」の極意

まず驚かされるのは、その圧倒的なメニュー数です。
一般的なワンオペの店舗では20〜30品が平均的とされる中、こちらのお店ではおでんだけで25種類以上、合わせて70種類以上のメニューを用意しています。
その秘密は、店内に3台設置されたストッカー(冷凍庫)と「真空パック」の活用にあります。

【渡辺さん】
「1回の仕込みで1週間ないし10日分のものを仕込んで、それを全部真空パックにして冷凍保存し、ないものを補充していくというような感じでやってます。」

空気に触れさせないことで冷凍焼けを防ぎ、味を落とさずに提供することが可能になります。
真空パックにする前には、「日本酒に塩を少し入れたもの」で魚を洗い、雑菌を取りつつ身を引き締めるというプロのひと手間も加えられています。
ちなみに、大量に消費する真空パックのシートも、まとめ買いをすることで1枚あたり6〜7円程度に抑えられており、コスト面でも非常に優秀です。

毎日大量に取る「出汁」を全メニューのベースに

もう一つの効率化の要が「おでん」と、その「出汁」の徹底活用です。
ワンオペにおいておでんは営業中の手間がかかりにくいメニューですが、この店では毎日30〜40リットルもの出汁を取っています。

【渡辺さん】
「基本的に出汁は1日で廃棄するのが当たり前なんですが、残った出汁がもったいないんでどうしようかなと考えていた時に、全てのおばんざいのベースの出汁として使えることに気づきました。」

残った出汁を、ナムルやきんぴら、ひじきなどのベースとして使い回し、醤油やみりんなどの割合を変えることで様々な味付けに変化させています。
これにより、おばんざいごとに一から出汁を取る必要がなくなり、仕込み全体の負担が劇的に軽減されているのです。

常連を飽きさせない「小ポーション」と名物メニュー

常連客が多い同店では、「同じものを常に出したくない」という思いから、おばんざいの種類を豊富に揃えています。
しかし、種類を増やすとロス(廃棄)のリスクも高まります。

【渡辺さん】
「出なくてダメにしたくないんで、もうとにかく出し切りっていうものを考えて、1つ1つのポーション(量)はちっちゃくして準備してますね。」

ポーションを小さくして真空で小分けにしておくことで、すぐに出せる状態を保ちつつロスを防ぐ仕組みを構築しています。
また、お店の名物となっているのが「ミニクロワッサン」のおでんです。洋食のオニオングラタンスープに入っているパンのようなとろりとした食感で、一度食べたお客さんの「96%がリピーターになる」という強力な看板メニューとなっています。

「人件費が店を潰す」という原体験からの最適解

渡辺オーナーは過去に雇われで店を任されていた際、「人件費が店を圧迫し、最終的に店を潰していく」という厳しい現実を目の当たりにしました。

【渡辺さん】
「自分が楽したいがために人を雇って、それで店を圧迫してどうすんだよっていうところが正直あるんですよ。それだったらもう自分が頑張ってやっていこうみたいな。」

今後も人を雇う予定はないと語り、「1人でできる仕組み」を徹底的に作り上げました。
真空冷凍によるストック、出汁の賢い使い回し、そしてロスをなくす小ポーション戦略。
趣味全開の空間の裏側には、個人店が人件費リスクを抱えずに高い顧客満足度を維持するための、極めて合理的で強かな経営哲学が詰まっていました。

■撮影協力
でんや御馳走
店主 渡辺直樹さん

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