激戦区・三軒茶屋で選ばれる「野菜」の魅せ方。あえて盛り合わせを解体した理由


飲食業界において、他店との差別化や原価率のコントロールは永遠の課題です。
しかし、誰もが肉や魚などのメイン食材に力を入れる中、「野菜」を主役に据えた独自の戦略と魅せ方で、激戦区・三軒茶屋において存在感を放つお店があります。

「良いお野菜を頂いてるんで、1個1個にブランド力がある。シンプルに美味しい野菜をシンプルに際立たせたいっていうのがあって。」
そう語るのは、秋田野菜にこだわったおばんざいを提供する三軒茶屋「せきらら」のエリアマネージャー北村さんと、店長の藤野さん。
野菜のポテンシャルを最大限に引き出す、驚きの工夫と商品開発の裏側には、これからの飲食店が生き残るための緻密な戦略が詰まっていました。

東京では出回らない「秋田野菜」で圧倒的な差別化

同店の強みは、なんと言っても「秋田野菜」を中心としたおばんざいです。
肉や魚は価格の変動が激しい一方で、野菜は比較的価格のブレが少ないという経営的なメリットがあります。
さらに、秋田野菜を選んだことには明確な理由がありました。

【北村さん】
「東京ではなかなかそういう地方のいい野菜って出回らないんで、他のお店との差別化というところで秋田野菜を中心に使ってます。秋田は水が綺麗で土壌が良く、雪の下で冬を越えるので旨味が詰まっていたり、寒暖差で糖度が上がる野菜があります。」

希少性の高い伝統野菜などを扱うことで、お店側も「価値をつけやすい」というメリットが生まれます。
仕入れの際は、「お母さん」と呼んでいる秋田の生産者さんに社員みな、直接電話をしてその日入った旬の野菜や、時には現地ならではの調理法まで聞き出し、メニューに活かしています。

三軒茶屋の文化に合わせた「盛り合わせの解体」

野菜の価値をさらにお客様に伝えるため、三軒茶屋の店舗ではあえて提供スタイルを変えました。
系列の学芸大学や渋谷の店舗では、おばんざいを1つのお盆にまとめて乗せる「6種盛り合わせ」のスタイルでしたが、三軒茶屋では「6つのお皿を独立させてテーブルに並べる」という方法をとっています。
【藤野さん】
「三軒茶屋っていう街は飲み歩きの文化がすごい強いところだと思うので、2軒目・3軒目っていう使い方をする方がとても多い。なので、単品が出やすいように盛り付け方を変えました。」

さらに、独立させた一皿のおばんざいの中でも工夫があります。
皿に乗っている食材は一緒くたに和えずに、素材ごとに調理した後に、一つの皿にまとめるという一手間を加えています。
そうすることで、例えばメインの「うど」を引き立たせるためにきゅうりの厚さを変えたり、女性が噛み切りやすいようにワカメを工夫したりと、食感や食べやすさをコントロールし、料理の完成度を一段引き上げているのです。
手間はかかりますが、それぞれの食材の味を際立たせることで、確かな価値を伝えているのです。

フード原価34%。浮いた原価で商品力を上げる

野菜をメインの売りにすることで、原価率は必然的に下がります。
現在、同店のフード原価率は約34%に抑えられています。
しかし、ただ原価を低く保つだけではありません。

【北村さん】
「一品料理でいいもの食べて欲しいなっていうので、カニを出してたりするんですけど、居酒屋で食べれるような価格帯で出しています。それも野菜とうまく掛け合わせるから(高級食材が)使えるっていうところも、僕たちの強みかなと思います。」
浮いた原価を活用してカニなどの高級食材を組み込み、一つ一つの商品力を底上げしているのです。

料理長不在!「みんなで作る」自走する組織論

そして驚くべきことに、同店には「料理長」が存在しません。
【北村さん】
「料理長がいると、遠慮しちゃうとか考えなくなっちゃうなっていうのも1つあって。各店舗ごとに独立を想定したような店舗運営をやらせてもらっているので、『みんなで作る、みんなで売る』みたいなのがうちの会社かなと思います。」
ガチガチのマニュアルで作られた料理よりも、スタッフの思いが乗った料理の方がお客様に伝わると考えています。

社員全員が生産者に電話をし、自ら調べて意見を出し合い、実行に移す。
秋田野菜の希少性と確かなブランド力。
街の特性に合わせた「引き算」の提供スタイル。
そして、料理長に頼らず全員で考える自走型の組織作り。
激戦区・三軒茶屋で選ばれるお店の挑戦には、これからの飲食店における「食材の価値の伝え方」と「強いチームづくり」のヒントが隠されていました。

本記事の動画:激戦区・三軒茶屋で選ばれる「野菜」の魅せ方。あえて盛り合わせを解体した理由

撮影協力:
せきらら(マルホ株式会社)エリアマネージャー北村 翔大さん、店長 藤野 廉さん

飲食店のための食べログチャンネル

前の記事へ

【客単価UP】鳥取・島根の「日本酒」が飛ぶように売れる! 四谷三丁目の隠れ居酒屋に学ぶメニュー戦略

次の記事へ

【飲食店の接客マニュアル】スタッフの印象がみるみる良くなる! 「声の出し方と表情」

関連記事