「売上拡大」はもう追わない。あえて“非効率な17席”でワンオペ 常連6割を作る独自の戦い方


飲食業界において、売上を最大化し、店舗を拡大していくことは一般的な目標とされています。
しかし、誰もが売上アップを目指す中、あえて客席を減らし、目標月商「150万円」を上限に見据えて拡大を追わないという、独自の生存戦略をとるワンオペ飲食店があります。

「売上をどんどん伸ばしていくと、空気感に合わないお客さんも一定数いると思うので、今いるお客さんとの空気感を大事にしたバランスをとっていますね。」

そう語るのは、鳥取・島根の魅力あふれる食材で作る料理と日本酒を提供するニューオーキタ店長の落合さんです。
あえて売上の上限を決めるという常識破りの経営戦略の裏側には、これからの個人店が長く愛されるためのヒントが詰まっていました。

「空気感」をコントロールする客席配置

同店のカウンターは5席。
本当はあと2席ほどは増やせる広めのテーブルではありますが、あえて増やしていません。

【落合さん】
「詰め詰めになると狭いなと思うところと、このお客さんとこのお客さんちょっと合わないよねみたいなのも、距離でコントロールできる。結果的にワンオペの接客においても余裕が生まれるんです。」

物件の変わった作りを活かし、テーブル席もあえて飛び飛びに配置。
静かに飲みたい人やグループで楽しみたい人など、周囲を気にせず過ごせる配置になり、多様なニーズのお客さんに対応することができます。

目標は月商150万。ブレないための「増やさない」勇気

飲食店なら誰もが売上を上げたいと思うものですが、落合さんは月商150万円程度を目安とし、これ以上無理に増やそうとは考えていません。

【落合さん】
「1人でやってると、売上の最大値がある程度見えてしまっている点があるので、しっかり満足度を作るっていうのは設計しやすい。」

現在、リピーターの割合は約6割に上ります。
売上を上げることを意識しすぎると、お店のコンセプトである「島根・鳥取の良さ」がうまく伝わらなくなるなどブレが生じてしまうため、無理な売上拡大はせず、今のベストな状態を維持することに注力しています。

ワンオペを成立させる「鍋」と「常温ストック」の知恵

ワンオペでお店を回すにあたって、提供に時間のかかるメニューをどう工夫しているのでしょうか。
実は、この店では「しじみ鍋」がスピードメニューとして活躍しています。

【落合さん】
「お野菜は仕込みの段階で切っておいて、スープはオーダーが入ってから食材を合わせてブレンドします。一瞬、鍋に集中することにはなるんですが、鍋が置かれることになるので、テーブルの上に何もない状態を避けることができる。」

スープを作り置きしない理由は、冷蔵庫に入れるとスペースを奪ってしまうからです。
ココナッツミルクの缶やレモングラスなど常温保存できるものを活用し、その場で具材と合わせてスープを作ることで省スペース化を実現しています。
また、3日〜1週間分まとめて作り置きできる「アイス」も、日本酒のあてにもなりワンオペ向きのデザートとして重宝しています。

シンプルな盛り付けを助ける「器」と秘密兵器

さらに、調理や盛り付けにもワンオペを助ける工夫があります。
秘密兵器として活躍しているのが、「セラミック焼き網器」。
ガスコンロに置くだけで遠赤外線効果で、野菜が炭火で焼いたようにジューシーに仕上がるため、ワンオペの強い味方になっています。
また、島根や鳥取の美しい器を使うことで、シンプルな盛り付けでも十分に魅せることができると語ります。

【落合さん】
「華やかな盛り付けをすると器に目がいかない。シンプルな盛り付けの方が魅力的だし、僕の余裕にも繋がるっていう点で、器に助けられています。」

客席を減らし、売上目標を150万円であえて止める。
その分生まれた「余裕」は、お客さん一人ひとりのお酒の好み(濃さやアルコールの強さ)を覚えることに繋がり、その人に合わせた日本酒の提案(加水や割など)をするという、きめ細やかな接客へと還元されています。

売上拡大だけが正解ではない。
自分自身のキャパシティとお店のコンセプトを守り抜く「拡大を追わない戦略」には、個人飲食店が長く生き残るための、温かくて強かな経営哲学が隠されていました。

本記事の動画:「売上拡大」はもう追わない。あえて“非効率な17席”でワンオペ常連6割を作る独自の戦い方

■前編はこちら 【客単価UP】鳥取・島根の「日本酒」が飛ぶように売れる!四谷三丁目の隠れ居酒屋に学ぶメニュー戦略

■撮影協力
ニューオーキタ/店長 落合 笙さん

飲食店のための食べログチャンネル

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