未経験バイトが4回で即戦力に。人手不足でも名物料理を回す“仕込みの仕組み化”


飲食業界で深刻化する人手不足。特に、魚を捌くといった職人技が必要な仕込みは、経験者の確保が難しく、頭を抱える店舗も多いのではないでしょうか。

しかし、巣鴨の繁盛店「魚枡(うおます)」では、人気メニュー「究極のアジフライ」の仕込みを、未経験からスタートした大学生アルバイトたちが担当しています。
属人的な技術が必要と思われる海鮮の仕込みを、未経験者だけで回せる裏側には、どのような秘密があるのでしょうか。

1日最大150匹の仕込み。未経験者を最速で育成する「動画」の活用

週末や市場が休みの前日には、1日に150匹ほど用意するというアジフライ。
アジの仕込みだけで2〜3時間かかる大仕事ですが、これを担っているのは大学生のアルバイトたちです。
彼らは、職人歴50年近いベテランの指導のもと、わずか4〜5回経験するだけで、アジ1匹を約1分で捌けるようになるといいます。
その速さの秘訣は、現代的なアプローチにありました。

【押田店長】
「今のアルバイトの子には、最初教える時に『1回動画を撮りなさい』と伝えています。そうすれば自分で動画を見直せるので、その後自分で実際にやってみるという感じですね。映像として記録が残せるのは、昔と今で大きく違うかな。僕が習った時は絵を描いてましたからね。」

感覚に頼らない。素人でも迷わずできるロジカルな「調理手順」

動画での学習に加え、アジを捌く工程そのものも、素人がつまずかないよう明確なポイントとして言語化されています。
例えば、硬くて食べられない「ゼイゴ」を取る際は、力任せにするのではなく、刃をスライドさせるように切るのがコツです。
また、内臓を取った後の「血合い」は臭みの原因になるため、手ではなく歯ブラシを使って綺麗に取り除き、水気をしっかり拭き取ります。

さらに、背開きの際も、一度で開こうとはしません。
包丁が骨に当たっている感覚を目印にして、骨に沿って少しずつ刃を入れていくよう指導されます。
長年の感覚による職人技ではなく、明確な指標を持たせることで、誰でも迷わずに捌けるようになっているのです。

クオリティを底上げする「ひと手間」のルール化

捌き終わった後にも、名物料理としての美味しさを担保するための重要な「ひと手間」が組み込まれています。
それが、アジ特有の生臭さを消し、旨味を引き出す下処理です。

【押田店長】
「生姜をすりおろして絞ります。少し置くと生姜のアクも取れるので、その上澄みの綺麗な液体だけを日本酒とブレンドしています。これを塩を振ったアジに霧吹きでかけて30分置くんです。」

30分置いた後に表面から出た水分を綺麗に拭き取り、パン粉をつけて揚げることで、臭みがなく身がフワフワのアジフライが完成します。
この下処理をするかしないかで、味が劇的に変わるのです。

「仕組み化」で勝つこれからの店舗運営

職人技が必要と思われがちな仕込み作業ですが、動画を使った現代的な教育や、つまずきやすいポイントの言語化、そして味の決定打となる工程のルール化により、未経験者でも質の高い調理が可能になります。

気合いや長年の修行に頼るのではなく、誰でも再現できる「仕組み」を作ることこそが、人手不足の時代を勝ち抜くロジカルな店舗経営の鍵と言えるでしょう。

本記事の動画:未経験バイトが4回で即戦力に。人手不足でも名物料理を回す“仕込みの仕組み化”

■前編はコチラ

◆取材協力 魚枡(うおます) 巣鴨本店/ 押田 怜さん・岸料理長

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