なぜ客は4時間も帰らないのか? 客単価1万円を生む“炎と香り”の店づくり


飲食店の利益を上げるための重要な指標とされる「回転率」。
多くのお店が回転率をいかに上げるかに注力する中、あえてお客様の滞在時間を延ばすことで客単価1万円を達成しているお店があります。
それが、店内に薪火の焼き場を設ける「並木橋みりん」です。
薪火だけでなく、炭・藁・ガスの合計4つの熱源を巧みに使った和食が人気となっています。
目先の回転率を追わず、高い顧客満足度と客単価を両立させる裏側には、「薪の炎」を使った空間づくりと、緻密に計算されたコース設計がありました。

「薪火」を見つめる。非日常の空間が付加価値を生む

お店の中心に薪や炭の焼き場を設けている並木橋みりん。
ガスを使えばお店としては十分に成り立ちますが、あえて手間のかかる薪を導入したのには理由がありました。

【オーナー・田中さん】
「独立した時に、料理に『付加価値』をつけようという話になりました。魚を一番いい状態で出すなら炭火だと思いやり始めたのがきっかけで、そこから徐々に香りなど、どんどん料理に付加価値をつけていくようになりました。キャンプの時に薪を使うと癒し効果があるように、お客様側から見ても赤い炎がメラメラ燃えているのを見ると癒される。普段味わえない非日常の空間や雰囲気があると思います。」

人間の本能に訴えかける「薪火を使った料理」に立ち返ることで、他のお店にはない圧倒的な付加価値を生み出しているのです。

回転率よりも「滞在時間」。リラックス効果が追加注文を生む

店内の中央で燃える薪火は、圧倒的な癒し効果でお客様の滞在時間を引き伸ばします。

【オーナー・田中さん】
「1組1組のお客様が薪火を見ながら、本当に4時間ぐらい滞在されます。追加注文をしながらなので、結果的に客単価も上がってきます。コース料理にご飯をつけると7500円で、そこにドリンクがプラスされるので、1万円ぐらいになりますね。」

1日の回転率は1.5回転ほどですが、無理に回転率を上げるのではなく、「1人のお客様に長くリラックスしていただく」ことを第一に考えています。
その居心地の良さが結果として追加注文を生み、高い客単価へと繋がっているのです。

針葉樹と広葉樹を使い分ける。香りと提供方法へのこだわり

薪火を使った調理技術も本格的です。
燃えやすい「針葉樹」と長く燃える「広葉樹」を使い分け、アスパラガスなどの食材に極上の香りを纏わせ、アジの炙り棒鮨には、高温の炭を押し当てて炭の香りをつけています。
お刺身を提供する際も、藁焼きで瞬間的に高温にして皮目を炙ることで、皮と身の間にある一番美味しい脂の旨味を引き出し、1つのお皿に盛るのではなく、藁を使って炙ったお刺身と普通の生のお刺身の2回に分けて提供しています。

【オーナー・田中さん】
「お刺身を2回に分けることによって、1つのものが2つになり、お客様が喜ぶ数が増えます。また、5種類を1度に盛ると時間がかかってしまいますが、分けて出した方が提供スピードも上がり、お客様をお待たせする時間もなくなります。」

「香り疲れ」を防ぐ。帰り道の満足度を逆算したコース設計

独自の香り付けは最大の武器ですが、コース全体を通して「香りの足し算」ばかりをしているわけではありません。

【オーナー・田中さん】
「全部が香りづいてしまうと、舌が疲れてしまいます。少しほっとするようなおひたしなどのメニューも入れつつ、その中でバランスよく薪や藁の香りを入れています。トータルで食べ終わって帰り道で『美味しかったね、香りが良かったね』と言われるような内容にしています。」

香りをつけるところと、あえて素材の味だけを楽しむところの緩急をつける。
この緻密なコース設計によって「香り疲れ」を防ぎ、最後まで飽きさせない最高の満足度を提供しているのです。

付加価値で勝負する、これからの店舗運営

効率を求めてガスだけで調理し、回転率を上げる経営スタイルもありますが、同店はその真逆を行きます。
薪火による非日常の空間演出、旨味を最大限に引き出す調理技術、そして帰り道の余韻まで計算されたコース設計。
これらすべての「付加価値」が掛け合わさることで、滞在時間4時間、客単価1万円という熱狂を生み出しているのです。

本記事の動画: なぜ客は4時間も帰らないのか?客単価1万円を生む“炎と香り”の店づくり

◆取材協力
並木橋みりん/ 田中 秀和さん

◆「小規模店の必勝法」を取材する当シリーズの他の回はコチラ

飲食店のための食べログチャンネル

前の記事へ

【店長不在・仕込みゼロ】素人バイトだけで月商500万を叩き出す亀戸「牛たん居酒屋」の極限オペレーション

次の記事へ

【無名商材の売り方】誰も知らない商品をどう軌道に乗せる? 「利用される店」を抜け出すファン化の極意

関連記事