【無名商材の売り方】誰も知らない商品をどう軌道に乗せる? 「利用される店」を抜け出すファン化の極意


東京・四谷にある蕎麦屋「音威子府TOKYO」。
ここで提供されているのは、北海道の小さな村から届く真っ黒な「音威子府(おといねっぷ)そば」です。
東京ではほとんど知られていないため「ライバル店がいない」という圧倒的な独自性を持つ一方、誰も知らない商材をどうやって売っていくのか。
そこには、単に食事の場として「利用される店」から、お客様に「応援される店」へと変貌を遂げた独自のファン化戦略がありました。

「北海道」ではなく「道北」。ターゲットを絞り込む一点突破のSNS戦略

知名度ゼロの商材を扱う上で、日々の売上や店舗運営への不安はつきものです。
そこでオーナーの鈴木さんは、商圏を大きく持とうと考えました。駅から大通りを避けた路地裏に店舗を構えて家賃などの固定費を抑え、経営の「体力」を残し、X(旧Twitter)での情報発信に注力したのです。

【鈴木さん】
「例えば『おそば』ではなく『音威子府そば』、『北海道』ではなく『道北』という北の部分だけのエリアに絞って発信することに気づいてからは、そこが好きな人たちをしっかりターゲットにできました。その結果、お客様がかなり応援してくれるようになり、満席をいただけることも多くなりました。」

万人に向けた発信ではなく、極めてニッチな領域に絞り込む「一点突破」の戦略が、熱量の高いお客様を引き寄せる結果を生んだのです。

ファンの口コミを裏切らない「器」と「価格」へのこだわり

音威子府そばは、元々北海道の音威子府駅において400円〜500円ほどで食べられていた大衆食でした。
しかし、鈴木さんは東京で提供するにあたり、気軽な大衆食として扱うことはしませんでした。 現在は、990円(税込)で提供しています。

【鈴木さん】
「東京に持ってきた時、『黒くて珍しいね』と食べに来てくれたお客様が、いつも行く信頼できるお蕎麦屋さんに『こんなお蕎麦を食べてきたよ』と話すことがあります。その時、もし私たちが安っぽい器や汁を使っていたら、同業者から『あそこは他のものが二級品のごまかしだ』と見透かされてしまいます。そうなれば、お客様はご自身の体験よりも、信頼するお蕎麦屋さんの言葉を信用し、『1回行けばいいや』と消費されるだけの店になってしまう。そうならないよう、恥ずかしくない手作りの器、こだわりの汁、海苔を用意し提供しています。」

話題性だけで消費されるのではなく、こだわりの器を使い、適正価格で売る。希少性の高い音威子府そば本来の価値を伝えることで、ファンの口コミや信頼に全力で応える店づくりを徹底しています。

スタッフを北海道へ。作り手の想いを「自分ごと」化する

商品の本当の良さをお客様に伝えるためには、まずスタッフ自身が商品のファンになる必要があります。
鈴木さんは、スタッフが北海道を好きになるよう、実際に現地へ連れて行き、生産者と会う機会を設けています。
例えば、アスパラガスの収穫を自ら体験させることで、お客様に「このアスパラはどういうもの?」と聞かれた際にも、「私が取ってきました」と自分ごととして熱量を込めて語れるようになります。
このスタッフの体験が、店舗全体の接客力を底上げしているのです。

目先の利益より「文化の継承」。ファンがファンを呼ぶ好循環

珍しい商材を扱っているため、周囲の経営者からは「1杯2000円や3000円にして大儲けすればいいじゃないか」と言われることもあるそうです。
しかし、鈴木さんはそのアプローチを取りません。

【鈴木さん】
「私1人が儲けたいのであれば、入場制限をかけて一杯を高単価で売るでしょう。しかし、私たちの目的は、いつか音威子府に行って食べてみたいという人が広がり、音威子府そばというものが文化として長く続いていくことです。ファンの人たちが新しいお客様を連れてきていただける形が今、作れています。」

目先の利益を追求して高単価で囲い込むのではなく、適正な価値で提供し、熱狂的なファンが新たなファンを呼ぶ仕組みを作る。
これこそが、「利用される店」を抜け出し、「応援され続ける店」を作る極意と言えるでしょう。

本記事の動画: 【無名商材の売り方】誰も知らない商品をどう軌道に乗せる? 「利用される店」を抜け出すファン化の極意

◆取材協力
音威子府TOKYO/オーナー 鈴木章一郎さん

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