【高単価化】高い食材に変えたら新規客が来た。20年続く焼鳥店の単価アップ術


飲食店において、食材の原価高騰による値上げは、「常連客が離れてしまうのではないか」という不安と常に隣り合わせです。
しかし、あえて高い食材へと切り替えながらも、20年以上お客様に愛され続ける焼き鳥店「山本屋」があります。
常連客が離れる恐怖を抱えながらも、単価アップと新規客の獲得に成功した裏側には、どのようなこだわりと経営哲学があるのでしょうか。

値上げの恐怖より「自分が使いたい鶏」を選ぶ

20年間お店が続いている秘訣について、オーナーの山本さんは「毎日こなしていたら気づかないうちに20年経っていた」と語ります。
しかし、その根底にあるのは「扱っているものやお客様と真摯に向き合う」姿勢です。
経営において、値上げや常連客が離れる不安は日々あると言います。
それでも、妥協して使っていた鳥から、「自分にとって良い鶏を使いたい」と高い食材へのシフトを決断しました。

【山本さん】
「離れられるお客様も少なからずはいらっしゃったとは思うんですけど、私が良い鶏を使いたいと思ってシフトさせていただきました。そしたら新しいお客様が来てくださって。何よりも美味しいものを常に提供し続けることが第一だと思ったので。」

目先の価格維持よりも、本当に美味しいものを提供するという本質的な価値の追求が、結果として新たな顧客層の開拓に繋がったのです。

「メス限定」の東京シャモと、理にかなった「ねぎま」の工夫

現在、山本屋で扱っているのは「東京シャモ」や京都の「京紅地鶏」ですが、どちらも「メス限定」という強いこだわりがあります。
血統が良く肉質がしっかりしているシャモの中でも、メスはある程度脂が乗っていて旨味がしっかりしているのが特徴です。
仕入れ値が上がるリスクよりも、品質を優先しています。
また、食道や白レバーなどの希少部位を優先的に仕入れたり、定番の「ねぎま」にも独自の一手間を加えています。

【山本さん】
「シャモは他の地鶏と違って脂が少ないので、それを補うために鶏の脂を間に挟ませていただいています。ネギはやっぱ脂があった方が美味しいですよ。」

食材の特性を深く理解し、弱点を補うために計算し尽くされた調理が、他店にはない圧倒的な美味しさを生み出しています。

食材に合わせて使い分ける「3種類の塩」

塩への並々ならぬこだわりも、料理の完成度を高めています。
同店では、用途に合わせて3種類の塩を使い分けています。
野菜には、素材の味に寄り添うような優しくまろやかな五島の塩を。
串に打っていない肉の塊には、肉の力強さに負けない歯ごたえのあるベトナムの「ニャチャンの塩(粗塩)」を使用しています。

さらに、通常の串に振る塩(振り塩)は、ニャチャンの塩に鰹節、干し椎茸、ワカメの出汁を加えて煮込んで作るという手間暇をかけており、味への追求に妥協がありません。

「天ぷら」から着想を得る、季節感を補う野菜串

焼き鳥という業態は、お寿司などと比べて季節感を出すのが難しい側面があります。
そこを補っているのが、八百屋で数ヶ月熟成させて旨味を凝縮させた「焼きりんご」といった果物や、野菜の串焼きです。
山本さんのメニュー開発の着眼点は、他の焼き鳥店ではなく「天ぷら店」にありました。

【山本さん】
「基本的には天ぷら屋さんにある野菜って焼き鳥でも焼けると思っているんですよ。揚げるか焼くかの違いで、その衣の代わりに何で補うかを考えたら、焼き鳥でもいける場合が多いと僕は思ってます。」

他ジャンルの調理法からヒントを得て焼き鳥に落とし込むという柔軟な発想が、メニューの幅を広げています。

他人の評価ではなく「自分が美味しいか」を基準にする

20年間、同じやり方を頑なに貫いてきたわけではなく、常に「昨日よりも今日こっちが良いと思ったらそっちを採用する」という臨機応変な姿勢がマンネリ化を防いできました。
その根底にあるのは、強固な「自分軸」です。

【山本さん】
「有名店に行った時に最初美味しいと思ったんですけど、他人が美味しいと評価しているから僕は美味しいと思っていたんですよ。他人が美味しいからではなくて、自分が美味しいか美味しくないかがすごく大事なことじゃないかなと。他の人が評価しているしてないに関わらず、そういう美味しいの基準はその時に持っていたいと強く思いました。」

値上げの不安を乗り越え、自分の信じる「美味しい」をひたすらに追求し、アップデートし続ける。
その真摯な姿勢こそが、20年以上愛され、新規のファンを惹きつけ続ける一番の秘訣なのでしょう。

本記事の動画:【高単価化】高い食材に変えたら新規客が来た。20年続く焼鳥店の単価アップ術

◆取材協力
山本屋/オーナー 山本 将人さん

◆「小規模店の必勝法」を取材する当シリーズの他の回はコチラ

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