数値管理をやめて売上げを最大化! “店長の仕事を削る”という選択の成功例


「美味しい料理を安く提供していれば、お店はうまくいく」――そう信じていませんか? 人手不足と高い離職率に悩まされる今の飲食業界では、それだけでは生き残れません。
多くの経営者が「原価削減」や「人件費カット」などの数値管理に躍起になる中、そうした管理業務をあえて手放し、従業員満足度(ES)の向上に全振りすることで、月商1200万円の店舗を2000万円にまで押し上げた企業があります。
それが、神奈川・東京を中心に「すし酒場 さんじ」など14店舗を展開する「Mostfun」です。

「従業員の幸せが、結果として売上を最大化する」という、一見理想論に聞こえる戦略をロジカルに仕組み化し、大繁盛店を作り続ける同社の代表・大崎さんの経営哲学に迫ります。

「まず自分たちが幸せになる」から始まる、ESと売上のロジカルな方程式

一般的に利益を上げようとすると、真っ先に経費削減を考えがちですが、大崎さんの考え方は全く逆です。

【大崎さん】
「すごいシンプルで、経費削減する時に、売上が2000万の店舗と500万の店舗ってどっちの方が経費削減しやすいですかって話だけで言うと、売上が高い方がしやすいんですよ。ということは、売上をまず上げなきゃいけない。売上を上げるんだったら、顧客満足度(CS)が上がってリピーター率を増やさなきゃいけない。じゃあ顧客満足度を上げる人は誰なんですかって言うと、スタッフがやらなきゃいけない。だけどそのスタッフが満足度高くないとお客さんを歓迎しようなんて思わないじゃないですか。満足度を上げることによって顧客満足度が上がって売上が最大化すると、数値管理が楽になって利益が上がるっていう仕組みです。」

実際に、創業時の店舗を任された女性社員に対し、数値管理や売上を追わせるのではなく、「目の前のアルバイトや社員、お客さんと向き合うことだけに集中して」と指示したところ、月商1200万円だった店舗が2000万円に急成長しました。
また、M&Aで買い取った職人こだわりの店舗(当時月商350万円)でも、大崎さんはまず「休みがない、労働時間が長いというのを1回やめて、まず自分たちが幸せになることをやってから料理のことを大事にしよう」と改革。
その結果、1年半にわたって前年比120%の成長を維持し、今や月商1000万円を超える店舗へと生まれ変わりました。

「サークル」ではなく「部活動」の楽しさを。責任なき社員の廃止

Mostfunが目指す従業員満足度とは、単に「みんなでワイワイ楽しくやろう」というサークルのようなノリではありません。

【大崎さん】
「みんな楽しいって直結するのはサークルなんですよ。でも、本質的な楽しいって絶対部活なんですよ。要は苦労するけど、自分が成長して、このギャップで楽しいとか感動とかが生まれる。従業員満足度の高い会社を目指すために、その中から1個やったことは『責任のない社員さんをなくす』ことです。」

一般のフリーターと同じような「責任のない社員」のままでいると、店長に昇進した瞬間に責任が一気に重くのしかかり、潰れてしまうケースがあります。
同社では、一般社員の段階から売上ノルマではなく「それぞれの役割に応じた行動指標(KPI)」を持たせ、自らの業務に対して責任を負う訓練を徹底。
あらかじめ責任の重さに慣れさせておくことで、店長になった時に潰れない強い組織を作っています。

店長はESのみ。仕事の「縦割り分業化」で実行力を高める

さらに、多くの飲食店で店長が「原価、人件費、アルバイト教育、売上、利益」といった膨大な業務でいっぱいいっぱいになっている問題を解決するため、大崎さんは店長の仕事を大幅に削ぎ落としました。

【大崎さん】
「従業員満足度に関わるもの以外は、店長にやらせないようにしたんです。なぜなら、飲食を運営する上でめちゃくちゃ大事なのは『実行力』だから。本部でどれだけ素晴らしいことを決めても、現場に落ちない。店長が大変だから今はそのタイミングじゃないと言い訳して止まる。だから、実行力を下げないために、ここは手を空けておいた方がいいんです。」

同社では、店舗の役割を完全に「縦割り」で分業化しています。

【店長】の役割:ES(従業員満足度)のみに集中
KPI:アルバイト面談の達成率(PA WOM)、店舗ミーティングの参加率、人件費、適正人員の確保(シフトが埋まらず無理が生じるとESが下がるため、非常に重要)
【料理長】の役割:料理とキッチン教育
KPI:クオリティ臨店(社内チェックの点数)、提供速度、原価、アルバイトだけで営業できる日数
【サービス長】の役割:サービスとホール教育
KPI:アルバイトの初日からの7日間研修の進捗、サービス点、再来店意欲、リピーター率

店長と各セクションの責任者が自分のタスクに100%集中できる環境を整え、店長との人間関係の悪化による離職(店長ガチャ)を防ぐため、サービス長の育成は店長ではなく「人材開発部長」が縦割りで行うなど、仕組み化を徹底しています。

決意に価値はない。実行したことだけを話す「5分間プレゼン」

この縦割り組織をサポートするため、同社では学びを得る「インプット勉強会」と、成果を発表する「アウトプット会議」を徹底しています。
特に、会議における独自のルールが組織を動かす原動力になっています。

【大崎さん】
「会議では、まず5分間、自分が1ヶ月間でやってきたことをプレゼンだけをさせるんです。ルールは『実行したことしか喋っちゃいけない』。『実行にしか価値はない、決意に価値はない』んです。『やります』ではなく、『これをやりました』という事実だけを話す。そうすると店が実際に動きます。失敗は全然オッケー。でもやらないことは一番良くない。」

5分間喋れないスタッフがいれば、それは行動するための知識が足りない(インプット不足)の証拠。
だからこそ、勉強会で学ぼうという自発的な意欲が生まれます。

「運転してから免許を取る」のをやめる。店長ライセンス制度

さらに、店長になってから慌ててマネジメントを勉強するという飲食業界の「当たり前」をなくすため、同社では独自の「店長ライセンス(資格)」制度を設けています。

【大崎さん】
「多くの店長は、店長になってから仕事を覚える。それって車でいうと、運転し始めてから免許を取るようなもので、絶対に事故るじゃないですか。だから、僕たちは免許をまず取らせましょうと。」

店長を目指すスタッフには、16時間(4日間)にわたる研修と筆記テストを実施。
さらに最後には、「なぜ自分は店長になりたいのか」という店舗理念を伝える8分間のスピーチ試験を課しています。
「やらされる店長」ではなく、ライセンスを取得した「自らやりたい店長」だからこそ、店舗のリーダーとして圧倒的な強さを発揮します。
ライセンスは経営者ライセンスまで段階的に用意されており、ゲーム感覚でスキルアップを楽しめる仕組みになっています。

数値管理という目先の管理に縛られず、従業員が成長を実感し、幸せに働ける環境を徹底的に作り込む。
この一見遠回りに見える「人への投資(日本の従業員満足度世界一への追求)」こそが、結果として売上を最大化させ、活気あふれる大繁盛店であり続ける本質的な成功理由と言えるでしょう。

本記事の動画: 数値管理をやめて売上げを最大化!“店長の仕事を削る”という選択の成功例

◆撮影協力:Mostfun  大崎拓実さん すし酒場 さんじ

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