「優秀な人材は集めない」年商18億企業が時給スタッフに社員の仕事を丸投げする理由


「時給で働くアルバイトは、言われた仕事だけをこなすもの」。
もしそんな固定観念があるなら、この企業の仕組みはあまりにも常識外れに見えるかもしれません。

人手不足や高い離職率に悩まされる飲食業界において、アルバイトスタッフの「やる気」を引き出すことは至難の業とされています。
しかし、神奈川や都内で「すし酒場さんじ」など14店舗を展開する株式会社Mostfunでは、アルバイト(パートナー)が自ら責任を背負い、まるで社員、あるいはそれ以上の熱量で店舗を回しています。

「優秀な人材は集めていない」と語る代表の大崎さん。
時給で働く彼らに、なぜ社員がやるような仕事をまかせ、これほどの組織を作り上げることができたのか。
学生店長から新卒で「年収600万スタート」の店長入社へ繋がるキャリアパス、そして大の大人が泣き崩れるイベントの裏側にある、超・能動的な人材教育ロジックに迫ります。

自分で考え行動する「自律型行動人間」を育てる教育コンセプト

Mostfunが掲げるアルバイトの教育コンセプトは、「社会で大活躍できる人材の育成」です。

【大崎さん】
「社会で大活躍できる人材は何かっていう話の時に、僕たちは『自律型行動人間』と呼んでいるんですけど、自分で考えて自分で行動して自分で結果出せる人材を育てていくことを結構本気でやっています。」

この教育は、アルバイトとしての最初の「初日研修」からスタートします。
どんなに遠方であっても必ず本部に集まらなければならず、その段階で「社会で大活躍する覚悟はあるか」「自律型行動人間になってくれるか」を問いかけます。
単なる時間の切り売りとして働くのではなく、自分の成長のための場であるという「第一歩の意識づけ」を徹底しているのです。

時給スタッフがKPIを追う。学生店長から「年収600万」のキャリアパス

最初の研修を終えたメンバーの中から、全体の約20%が「トップランナー(アルバイトリーダー)」になります。
4ヶ月の任期制ですが、彼らが担う業務は、一般的な飲食店なら社員がやるような重い責任を伴うものです。
店舗ミーティングの司会進行を任されるため、事前にミーティングを重ね、毎月の勉強会(インプット)とミーティング(アウトプット)への参加は必須。
さらには、他のアルバイトの面談までトップランナーが担当することもあります。
さらにその上には、時給でありながら社員と同じKPIを持つ「学生社員」、そして大学生でありながら店舗の全責任を負う「学生店長」というポジションが用意されています。

【大崎さん】
「彼らは学生社員になる時に、僕らに向けてプレゼンをするんですよ。プレゼンをしないとなれない。でも、なりたいってすごくないですか。彼らが書く振り返りを見たら、一般の社員さんよりもレベルが高いです。そして、さらにそこからステップアップして学生店長をやった子だけが、新卒でそのまま『店長入社』できるんですが、その場合はいきなり年収600万(月給50万)スタートなんです。」

優秀な人材は「集めない」。勝手に育つ空気感

これほど高いモチベーションを持つ学生をどうやって採用しているのか。
大崎さんは「集めてはいない」と明かします。

【大崎さん】
「集めてないですよ。他の店舗でも他の会社でも、最初のアルバイトスタートは一緒なんです。ただ、大事なのは『雰囲気(空気感)』。例えば、めちゃくちゃ売れているお笑い芸人たちばかりのマーケットにずっといたら、絶対に自分もやらざるを得なくなって伸びるじゃないですか。あの環境にいるとやらざるを得ないし、やった方がいいって空気感になるんです。」

頑張っている人、成長している人が得をして、承認されてフォーカスされる組織制度。
この環境の空気感こそが、最初は普通の学生だったアルバイトを「化け物級」の優秀な人材へと覚醒させるのです。

大の大人が泣き崩れる「Mostfun祭」と、お金を払ってでも行きたい「合宿」

その熱量が最高潮に達するのが、年に一度の「Mostfun祭」です。
『アルバイトが日本一輝く日』をコンセプトに、店舗ごとの予選を勝ち抜いた上位3店舗が、決勝の舞台で15分間の成果発表プレゼンを行います。

【大崎さん】
「壇上に立てるのはアルバイトだけ。店長や社員は支える側です。15分間、何も見ずに自分の言葉で1年間の成果を語る姿は本当に感動的で、僕も泣きます。出られなかったことに泣くアルバイトもいるほどです。でも、1位に価値があるわけではなく、そこまでみんなで共に戦い、這い上がったプロセスにこそ一番の価値があるんです。」

また、さらに人間力を磨き、成長を加速させる場として、1泊2日の「アルバイト合宿」も実施しています。
「伝達能力」をテーマに、3分間スピーチなどを通じて、一人ひとりと本気で向き合います。
驚くべきは、この合宿にアルバイトが「お金を払って(参加費を支払って)」まで参加したがることです。
企業としてのイベント費用や合宿への先行投資は膨大ですが、それが採用費の抑制や、店舗の売上最大化としてしっかりと回収できるロジカルな好循環が作られています。

2030年100店舗へ。規模拡大よりも「日本一満足度が高い企業」へ

【大崎さん】
「2030年に100店舗を目指して走っています。でも、100店舗行くことに価値があるとは思っていなくて、100店舗行ったときに従業員満足度が日本一高い飲食企業になっていることが定量的なゴールです。僕たちが稼いでいないと他の企業に真似されないので、再現性も含めて、本気で満足度を高めていきます。」

「時給分の労働」という限界を自分たちで決めず、若者に圧倒的な成長の場を提供し、本気で向き合う。 この従業員満足度(ES)への果てしないこだわりと仕組み化こそが、採用に頼らずともアルバイトが「化け物級」に育ち、年商18億を支え続ける本質的な成功理由と言えるでしょう。

本記事の動画: 「優秀な人材は集めない」年商18億企業が時給スタッフに社員の仕事を丸投げする理由

◆前編はコチラ
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◆撮影協力:株式会社Mostfun / 大崎拓実さん
すし酒場さんじ

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