人通り多いのに客が来ない…通過される店が【坪月商42万】を生んだ集客の仕掛けと「酒育」


「これだけ人通りがあれば、何もしなくても客が入るだろう」。
そう考えて出店したものの、蓋を開けてみれば誰も入ってこない――。

多くの飲食店が陥りがちな「立地の罠」を乗り越え新宿三丁目と新宿御苑前の「中間」という素通りされやすいエリアで坪月商42万円を叩き出す居酒屋があります。
それが、沖縄料理をベースにした人気店「あずま商店」です。
なぜ右肩上がりの繁盛店へと生まれ変わることができたのか。 その裏側には、販促戦略と独自の「酒育(さけいく)」、そしておもてなしの仕組みがありました。

「飲まない人が通るだけの道」だった。オープン当初の大きな誤算

オーナーの東さんは、物件を見学した際、店舗前の圧倒的な通行量の多さを見て「これはいける」と確信し、開業を決めました。
しかし、5月にオープンしたものの、7月前半までは「意外とお客さんが来ない」という予想外の苦戦を強いられます。

【東さん】
「みんな、ただ通過するんですよ。うちの店は新宿3丁目と新宿御苑のちょうど中間にあるんですが、飲みに行く人はみんな3丁目か御苑に直接向かってしまって。目の前を通る人は多いけれど、実は『お酒を飲まない人がただ歩いているだけの道』だったんです。」

人通りが多いからといって、そこが「飲食店にとって良い立地」とは限らない。
この手痛い誤算から、東さんの必死の逆転劇が始まりました。

地域特化インフルエンサーの活用で、売上は右肩上がりへ

自力での集客に限界を感じた東さんは、オープンから2ヶ月後、飲食店専門の販促プロフェッショナルである知人の力を借りることにしました。
そこで実施したのが、地域に特化したインフルエンサー施策です。

【東さん】
「新宿に特化したインフルエンサーさんや、特定の地域に強い発信者の方にお願いしました。そういう方は、そのエリアに住んでいる人や働いている人にダイレクトにフォローされているので、非常に費用対効果が高いんです。実際にそれほど高額な費用をかけずに実施できました。」

この施策が功を奏し、7月後半から8月にかけて売上は一気に跳ね上がりました。
さらにその後もInstagram運用などを並行して行い、秋以降は毎月のように売上を更新。1日平均15〜16万円だった売上が、直近(2026年5月)では17万3千円に達するなど、現在も右肩上がりの成長を続けています。

「選べるお通し」と「調味料の後出し」で生むコミュニケーション

集客の導線を作る一方で、来店したお客様の満足度を最大化するための「付加価値づくり」にも徹底してこだわっています。
まず、お客様との最初の接点となる「お通し」は、大分の郷土料理である「りゅうきゅう(漬け)」と、沖縄県産の太もずくを使った「もずく酢」の2種類を用意し、お客様にどちらかを選んでもらうスタイルをとっています。
ただ出すのではなく、最初に説明して選んでもらうことで、その後の居心地の良さに繋がる最初のコミュニケーションを生み出しています。
さらに、料理を提供する際にもストーリーを添える工夫をしています。

【東さん】
「例えば、名物のもずくの天ぷらを提供する際、テーブルにあらかじめ調味料を置いておくのではなく、あえて料理と一緒にウスターソースを持っていくんです。『沖縄の甘いお塩も合いますが、現地ではウスターソースをつけて食べることもあるので、後で味変として試してみてください』と説明します。説明するかしないかで、同じ商品でもお客様が感じる価値や楽しさが変わりますから。」

まかないで飲んで学ぶ! アルバイトを即戦力にする独自の教育術

あずま商店で特にユニークなのが、沖縄名物の「泡盛」を中心としたドリンク戦略と、それを支えるスタッフ教育「酒育(さけいく)」です。
泡盛になじみのないお客様や苦手な方向けに、現地では定番の「泡盛のコーヒー割り」などを提案していますが、これらを実際にお客様にお勧めするのは、最も接客機会の多いアルバイトスタッフです。

【東さん】
「一番接客をするアルバイトの子が、お酒の知識を持っていないと自信を持っておすすめできません。だから、仕事終わりにまかないを食べながら、泡盛を少しずつ実際に飲んでもらう『酒育』をやっています。『どの泡盛が飲みやすかった?』と聞いて、その子が本当に美味しいと思ったものを自分の言葉でおすすめしてもらうのが一番の理想ですから。」

スタッフ自らが商品のファンになり、おすすめするからこそお客様の心に響き、ドリンクの注文数が自然と増えていくのです。

インバウンドを呼び込む外観の仕掛けと、世界へ羽ばたくあずま商店の野望

店舗の内装は、ターゲットである25歳から40歳の大人が落ち着いてお酒を楽しめる空間を目指し、沖縄らしい南国っぽさは取り入れつつも、全体的におしゃれで落ち着いたデザインに仕上げています。
オープンキッチンのカウンターはフラットに設計され、手元での丁寧な調理プロセスを楽しんでもらうと同時に、スタッフ側からもお客様の食事のペースを自然と見守る先回りのサービスを可能にしています。
さらに、近年増加しているインバウンド客を店内に引き込むための外観の仕掛けも光ります。
入り口のドアはすべて全開にできるようになっており、店内の活気がそのまま外の通りへと流れ出ます。また、入り口には「スパム缶」をあえて3個積み重ねて飾っています。

【東さん】
「海外の方が通りがかった時に、あのスパム缶を見て『スパム!スパム!』と反応して入ってきてくれるんです。また、外からも見える大きな焼き場で炎を上げて豪快に焼いている様子も、通行人の目を引きつける強いアイキャッチになっています。将来は都内での店舗展開はもちろん、元々海外に行きたくて独立したので、世界に羽ばたいていきたいですね。」

立地の罠に負けず、坪月商42万円を叶えた緻密な集客設計。
新宿御苑前で輝くその熱いパッションは、これから日本を、そして世界をさらに盛り上げていくに違いありません。

本記事の動画: 人通り多いのに客が来ない…通過される店が【坪月商42万】を生んだ集客の仕掛けと「酒育」

◆前編はコチラ
【13坪で月商540万】沖縄料理屋からの脱却! 客単価を劇的に上げる集客術

◆撮影協力:ゆんたく酒場 あずま商店/オーナー 東 良亮さん

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