【原価率10%の名物料理】8坪1日8000円のレンタル店舗で営業! リピーター7割を生むメニュー戦略
自分の実店舗を持って飲食店を開業するには、まとまった資金と大きなリスクが伴う――。
そんな業界の常識を覆し、低リスクな「レンタルスペース」からスタートしてファンを掴み、大繁盛を収めているのが、杉並区高円寺にある「ルルさん」です。
現在はすぐ近くの裏通りに実店舗を構え、客数はさらに1.3倍、客単価は2500円から3500円にまでアップして絶好調。
借金をせず、コツコツ貯めた貯金だけでスタートし、リピーター率7割を叩き出す人気店へと成長させたオーナー寺岡さんの、緻密な「時間」と「原価」のコントロール戦略に迫ります。
日割り8000円からスタート。借金ゼロで開業できる超・低リスクな物件戦略
光熱費や水道代も全てコミコミで「1日8000円、月額で20万円いくかいかないか」という破格の条件で場所を借りたのが始まりです。
【寺岡さん】
「他のレンタルが入った時だけテーブルをどかしてほしいと言われて。椅子も置かずに立ち飲みという形で始めました。テーブルもネジを外せば1枚の板になるよう自分で手作りして、レンタルが終わったらまたテーブルを出して、というのを繰り返していましたね。」
大きな借金を背負うことなく、自分の貯金だけでコツコツとスタート。
このレンタルスペースの「明日やめると言ってもどけられる」という圧倒的な身軽さが、新しい名物メニューを恐れずに開発・実験できる最高の環境となったのです。
奥まったキッチンの弱点を克服。1つの大テーブルが育む「客同士のコミュニティ」
ワンオペで調理をしていると、お客様に話しかけるタイミングがどうしても作れません。
そこで寺岡さんは、逆転の発想で「お客様同士が仲良くなれる空間」を設計しました。
【寺岡さん】
「キッチンの構造的に自分が話しかけるのが難しかったので、お客様同士で仲良くなってもらおうと思ったんです。大きなテーブルを中央にドンと置いて、別々のお客様でも『1つの食卓』を囲んでいるようなレイアウトにしました。」
お客様の趣味を知っている寺岡さんが、偶然居合わせたお客様同士の共通点を見つけて会話のパスを振る。
これにより、お客様同士で自然とコミュニティが出来上がっていきました。
この空間設計は売上にも好影響を与えています。
メニューがコロコロ変わるルルさんでは、目の前で常連客が美味しそうに食べているのを見て、「あ、私もあれ頼みたい!」と注文がドミノ倒しのように伝播。
一組にパスタを出したら、周りのお客様から一斉にオーダーが入り、寺岡さんがひたすらパスタを作り続けることになったという、嬉しい悲鳴をあげるエピソードもありました。
ワンオペの限界を突破する。「蒸し器」を活用した“放置”オペレーション
レンタルスペース時代はIHコンロだったため、炒め物は火力不足になるという課題もありました。
そこで導入したのが「蒸し器」です。
【寺岡さん】
「ワンオペで営業を回すには、蒸し器は絶対に必要ですね。お米を温めたり、お肉にじっくり火を入れたりする時に、蒸し器を使えばある程度の“放置”ができるんです。オーダーが入ったら、シューマイを入れてタイマーをかけて、あとはほっとくだけ(笑)。その間に、お客様とお話ししたり、お酒を作ったり、他の作業ができますからね。」
徹底的に調理時間の「余白」を作ることで、ワンオペでもサービスの質を落とさず、お客様とのコミュニケーションに集中できる環境を整えました。
原価率10%の名物「豚足の唐揚げ」と、心配されるほどお得な「酢もつ」の原価バランス
そして、ルルさんを裏で支える絶対的な名物料理が、オーナーの出身地である福岡の文化を取り入れた「豚足の唐揚げ(550円)」です。
【寺岡さん】
「豚足の唐揚げは、実は原価が50円くらいなので原価率は10%弱です(笑)。ラーメンなどのスープをとる時に茹でるために豚足を入れるんですけど、そのまま捨てるのがもったいないから揚げて出してみよう、というのが始まりなので原価が低いんです。頼まれれば頼まれるほどありがたい優秀な商品です。」
一方で、この高利益な「豚足の唐揚げ」とは真逆の役割を担うのが、こちらも人気メニューの「酢もつ(300円)」です。
【寺岡さん】
「酢もつは、豚足でだいぶ楽をさせてもらっている分、お客様にお得に楽しんでもらおうと思って、原価率は40%〜50%と高めに設定しています。お客様からもよく『もうちょっと値上げした方がいいんじゃない?』って心配されるくらいです(笑)」
原価10%の圧倒的な利益商品と、原価50%の顧客満足度を高める還元商品を組み合わせることで、全体の原価率をコントロールしています。
客単価2500円でリピーター7割。禁断の「白酒」戦略と実店舗移転後の大躍進
これには「罪悪感なく何度も通える店にしたい」という明確な狙いがありました。
【寺岡さん】
「お会計が1万円になると、どれだけ美味しくても気張ってしまって頻繁には行けないですよね。だから、週に2回来てもらっても罪悪感がない2500円〜3000円くらいのお会計を目指していました。そのおかげで、常連のお客様が7割を占めていました。」
ドリンクの主役に、中国の蒸留酒「白酒(パイチュウ)」を据えたことも大きなフックとなっています。
アルコール度数は38%〜62%と非常に高いものの、ラムネやパイナップルのような華やかな香りが特徴です。
【寺岡さん】
「仕入れ値自体は日本の焼酎と同じくらいです。これを炭酸で割ると、華やかになって飲みやすくなるため、意外と女性のお客様に人気です」
実店舗に移転してからは、レンタルスペース時代からの常連のお客様に加え、新規のお客様も急増。
客数は1.3倍になり、客単価も3500円にアップして売上も好評です。
莫大な初期投資や多額の借金というプレッシャーに縛られず、極小のリスクから自分のペースでファンを育てていく。
「ルルさん」が体現したこの持続可能でロジカルな起業モデルは、これから新しく店を始めたいと願うすべての人に、最初の一歩を踏み出す勇気と、確かなヒントを与えてくれます。
本記事の動画:【原価率10%の名物料理】8坪1日8000円のレンタル店舗で営業!リピーター7割を生むメニュー戦略
◆ワンオペ店の工夫シリーズ
◆取材協力
ルルさん/オーナー 寺岡燿さん
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