飲食店成功の秘訣は“コンセプト”?開業時の決め方と参考事例

飲食店経営に成功するためにはコンセプトが非常に重要です。
考え抜かれた独自のコンセプトを持つ飲食店は、そのお店ならではの魅力を放ち、顧客の心を強くつかみます。
そこで本記事では、飲食店におけるコンセプトづくりの方法や参考事例などを紹介します。
飲食店開業を目指す方や、経営の見直しをしている方はぜひ参考にしてください。

目次

飲食店におけるコンセプトの重要性

飲食店のコンセプトは、店舗の核となる価値を表現する重要な要素です。
そのため、飲食店を開業する際には、このコンセプトを明確に決めることが最初のステップです。

コンセプトは、店舗の立地選び、外装・内装のデザイン、メニューの内容、価格帯、接客スタイルなど、経営の全てに影響を与えるものです。
明確なコンセプトに沿ってお店の各要素を設計することで、ブレない経営の軸を持つことができます。

またお店が提供する独自の価値や方向性を明確にし、顧客に対して「どんなお店か」を理解してもらうための基盤です。
顧客にとっては数多くある飲食店の中からその店を選ぶための差別化要因になるため、コンセプトの決定は飲食店経営で成功するために必須と言っても過言ではありません。
例えば、「地元食材のおかずが豊富な定食屋」「クラシックな大人のカフェ」「星の世界を満喫できる居酒屋」など、コンセプトはそのお店を特徴づける一貫したテーマです。

「5W2H」に着目! 飲食店のコンセプトの決め方

飲食店のコンセプトづくりには、問題解決や計画策定のフレームワークとしてよく使われる「5W2H」が役立ちます。
「5W2H」とは、「Why(なぜ)」「Who/Whom(誰が/誰に)」「What(何を)」「Where(どこで)」「When(いつ)」「How(どうやって)」「How much(どのくらい)」の7つの要素を元に、具体的なアクションや計画を明確にするフレームワークです。
コンセプトづくりのステップにこれらを当てはめると以下のように表せます。

  1. 「なぜ」飲食店を開業するのか明確にする
  2. 「誰に」「何を」届けたいのか考える
  3. 「どこで」「いつ」開業するのか検討する
  4. 「いくらで」「どのように」提供するかをイメージする

以下では、各ステップの具体的内容を解説します。

1. 「なぜ」飲食店を開業するのか明確にする

経営を始める上で最も大切なのが、その原動力となる「なぜ(Why)」です。
自分が飲食店を開業する目的は何か、どうしてその料理を提供したいのか、という根本的な動機をはっきりさせておくことが重要です。
これは、経営のモチベーションや方向性を保ち続けるための基盤となります。

この段階で、「若者向けにコスパの優れたおいしい料理を提供したい」「デートスポットとして利用されるような店にしたい」など、次以降のステップにも関係するイメージを持つこともできるかもしれません。
いずれにせよ、経営において一貫してこだわりたいテーマを持つことで、店づくりの軸を明らかにできます。

2. 「誰に」「何を」届けたいのか考える

飲食店経営を成功させるには、ターゲットの明確化が重要です。
軸が定まったら、次は「誰に(Whom)」その価値を届けたいのか、そしてそのターゲットに「何を(What)」提供するのを具体的に考えるステップへと進みます。
ここで欠かせないのは、ターゲットのニーズを考慮したうえで、何を届けるのかを決めることです。

例えば、「若者向けにコスパの良い料理を提供したい」という方針があれば、そのターゲットは「10代後半~20代前半の若者」、提供する内容は「ボリュームのある肉や炭水化物メインの定食」などが考えられます。
一方、「大人がデートで使うようなお店にしたい」というコンセプトであれば、30代~40代のカップルに「上質な接客や居心地の良い落ち着いた空間」を提供するといった形が思い浮かびます。

3. 「どこで」「いつ」開業するのか検討する

ターゲットと提供する価値が明確になったら、次に「どこで(Where)」その価値を届け、「いつ(When)」それを行うのかを検討します。
つまり、開業場所と営業時間を決めるのがこのステップです。
あるいは逆に、このステップを先に決めてから、「誰に」「何を」を提供するかを決めても構いません。

例えば、「新宿にお店を出したい」など場所の希望が先に決まっているなら、新宿の特徴や近隣の施設、どんな客層が来店する可能性が高いのか、何時に最も来店する可能性が高いのかを考えていきます。
逆に、「誰に」「何を」が先に決まっている場合、若者向けのお店にしたいのであれば、若者の人気スポットや学校の近くなどを開業場所に選ぶ、という順番です。

4. 「いくらで」「どのように」提供するかをイメージする

サービスや商品を「いくらで(How much)」提供するのか、そしてその価値を「どのように(How)」顧客に伝えるのかも欠かせないステップです。
この段階では、価格設定や店舗のデザイン、接客スタイルなどの具体的な施策を考えます。

例えば、30~40代のカップルをターゲットにした場合、価格は少し高めに設定し、店内はラグジュアリーな雰囲気で高級感や特別感を出すことが有効です。
一方、オフィス街でランチの需要を狙う場合は、低価格で素早く食事ができるようにインテリアに重点を置きすぎることなく、ひとりでも気軽に入りやすい、すぐに食べやすい環境を整えることが重要と考えられます。

5. すべての要素が一致するコンセプトへ落とし込む

最後に、すべての「5W2H」の要素を考慮して、最終的なコンセプトに落とし込みます。
例えば、「低価格・高栄養で若者を満足させるお店」や「大人の特別な時間を楽しめるバー」など、キャッチコピーのように考えてみましょう。

その上で、そのコンセプトが「当初のWhyに沿っているか」「実現可能か」「顧客にとって魅力的か」などを検討し、随時見直しをすることが大切です。

「飲食店を成功に導くコンセプト」を決める3つのコツ

5W2Hに加え、次に挙げる3つのコツを意識することで効率的かつ的確にコンセプトを考えやすくなります。

  • コンセプトシートを活用する
  • 似た条件の飲食店を探す
  • ターゲットとなる人に話を聞いてみる

以下では、それぞれの具体的な内容について解説します。

コンセプトシートを活用する

最初に述べた通り、コンセプトは飲食店経営の全体に渡って一貫すべきものです。
その一貫性を保つためには、5W2Hの要素をしっかりと明文化して、常にその方針を意識しながら経営していくことが重要です。
その際に役立つのが「コンセプトシート」です。
5W2Hを一覧で確認できるこのシートを作成することで、決めるべきことや各要素の整合性を考えやすくなります。

似た条件の飲食店を探す

コンセプトの実現性を検討する上で、具体的な市場調査は欠かせません。
出店予定のエリアを中心に、料理のジャンルや価格帯、ターゲット層などの要素が自分の構想と類似している飲食店を探してみましょう。
その店舗の営業状況、客層、評判などを調査することで、自分の考えているコンセプトがそこで受け入れられるか目途を立てやすくなります。

ターゲットとなる人に話を聞いてみる

飲食店のコンセプトは、最終的にはお店を利用する顧客に受け入れられなければ意味がありません。
そのため、ターゲットとして想定している層の人々へコンセプトの感想や意見を聞くことは非常に有益です。
また、飲食店経営の経験者やグルメ好きな人々からの意見も、現場の実情やトレンド、客観的な視点での評価を得るために役立ちます。

飲食店がコンセプトをアピールする方法

せっかくコンセプトを決めても、それが顧客に伝わらなければ意味がありません。
では、顧客へコンセプトを効果的に伝えるためにはどうしたらいいのでしょうか。
ここで重要となるのが、「店名・見た目」「メニュー・価格」「接客」の3ポイントです。
これらの要素は店舗の第一印象に直結しているため、それぞれにコンセプトを明確に反映できれば大きな効果が期待できます。

例えば、大人向けに高級感を打ち出す飲食店であれば、店名はその高級感を惹起するような名称を選び、内装・外装やカトラリーには、ラグジュアリーな雰囲気を持つ素材やデザインを採用するとコンセプトとの相性が良くなります。
さらに、メニューには高価な食材を使用した特別な料理をラインナップし、価格設定もその価値に見合ったものにしましょう。
電話対応や接客も一貫して高品質になるように、マニュアルの作成や接客訓練をしっかり行い、統一した高級感を演出しましょう。 このようにお店の各要素にコンセプトを反映させた経営を行うことで、そのコンセプトに魅力を感じたターゲット層に来店してもらいやすくなります。

【参考】飲食店のコンセプト事例一覧

飲食店経営において、コンセプトはその店の魅力や特色を示す大切な要素です。
成功している実在の飲食店のコンセプトを参考にすることで、新たなアイディアのヒントや成功の鍵を見つけることができるかもしれません。

人気店・有名店のコンセプト例

最初に紹介するのは、多くの人から支持を受けている人気店や有名店のコンセプトです。

【参考例】
「厚切りステーキをリーズナブルに楽しくたくさん食べていただく」(ステーキ店)
「高級食材をふんだんに使用した至極の料理を、最高のコストパフォーマンスでご提供」(イタリアン&フレンチ)
「低価格・高価値の焼鳥屋で世の中を明るくする」(焼き鳥店)
「都心の海の家」(海鮮居酒屋)
「都会のオアシス」(喫茶店)

最初に挙げたステーキ店は、一般的に原価率25~30%が理想と言われる飲食業界で、原価率60%の低価格で質の良いステーキを提供している点が特徴です。
また、回転数を向上すると共に気軽さを演出するために、立ち食い方式を採用しているのも大きな特徴です。
同店は、「ステーキをリーズナブルにたくさん食べられる」というコンセプトを貫くために、定石に捉われない独自の経営をした結果、多くのファンを獲得することになりました。

ユニークで面白いコンセプト例

斬新なアイディアや独自の世界観を持つユニークなコンセプトも飲食店経営の成功を導くことがあります。
その好例としては以下のようなものが挙げられます。

【参考例】
「19世紀末のヨーロッパで起こった怪奇現象を調査する秘密組織の基地」(コンセプトカフェ)
「小学校」(個室居酒屋)
「カップ酒と缶詰を片手にフラッと列車旅」(鉄道居酒屋)
「多彩なオーシャンビューを楽しめる海賊レストラン」(レストラン)

最初に挙げたコンセプトカフェは、内装から外装、メニューに至るまでこだわって、19世紀末ヨーロッパのファンタジックな雰囲気を再現したお店です。
SNSを活用し、コンセプトに沿ったオリジナルメニュー紹介などで話題となり、多くの客を引きつけることに成功しました。

顧客の需要を的確に捉えたユニークなコンセプトを立案し、それに沿って設計した店舗経営をすることは、他の飲食店にはないその店ならではの強みを作り、経営を成功させることにつながります。

まとめ

飲食店経営に成功するには、入念にコンセプトを考案し、それに沿って各要素を設計することが重要です。
特に現代のSNS時代においては、ユニークで話題性のあるコンセプトを立案できれば、一気に多くの顧客の心を掴み、知名度を上げることも夢ではありません。
飲食店経営を始めたい、リニューアルを検討しているという方は、どんなお店にしたいのか、コンセプトを軸にして考えてみましょう。

参考URL

飲食店におけるコンセプトの重要性

飲食店の開業におけるコンセプトとは?作るときの流れを解説|資金調達ノート|株式会社ソラボ
飲食店のコンセプトとは?|商売繁盛を招くメディア マネケル|株式会社イタミアート
【人気店の例あり】飲食店の開業時などにコンセプトが必要な理由とつくり方3ステップ|おなじみ丨近くの店から、なじみの店へ。|LINEヤフー株式会社
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「5W2H」に着目! 飲食店のコンセプトの決め方

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1. 「なぜ」飲食店を開業するのか明確にする

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2. 「誰に」「何を」届けたいのか考える

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3. 「どこで」「いつ」開業するのか検討する

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4. 「いくらで」「どのように」提供するかをイメージする

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5. すべての要素が一致するコンセプトへ落とし込む

飲食店のコンセプトを顧客にアピールする方法|商売繁盛を招くメディア マネケル|株式会社イタミアート
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「飲食店を成功に導くコンセプト」を決める3つのコツ

コンセプトシートを活用する

店舗コンセプトは一貫性を持たせよう|飲食店経営の繁盛を応援するHANJO TOWN|CASIO
飲食店の開業におけるコンセプトとは?作るときの流れを解説|資金調達ノート|株式会社ソラボ

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飲食店がコンセプトをアピールする方法

飲食店におけるコンセプトとは?決め方やアピール方法も紹介|aumo|アウモ株式会社
コンセプトをもとに決めたい飲食店の4大項目|おなじみ丨近くの店から、なじみの店へ。|LINEヤフー株式会社

【参考】飲食店のコンセプト事例一覧

人気店・有名店のコンセプト例

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