飲食店開業におすすめの業態は? 成功しやすい店の特徴や開業に必要なものとは?
飲食店を開業するにあたり、少しでもリスクを小さくしたいと考えるのは不思議なことではありません。リスクやコストを抑えて飲食店を開業したいのなら、小さなお店や無店舗営業などがおすすめです。本記事では、飲食店開業におすすめの業態や成功しやすいお店の特徴などについて解説します。
目次
開業しやすい飲食店の特徴
間取りの狭い飲食店
間取りが狭い店舗であれば、店舗の取得費用を抑えられる利点があります。たとえば坪数が2坪~15坪とそれほど広くなければ家賃も高くなく、物件を契約する際に必要な敷金や礼金なども抑えられます。
また、間取りが狭ければ内装工事費や厨房設備・空調設備などの設備費を抑えることも可能です。総面積が狭くなれば、壁紙や床材などのコストを減らすことができ、厨房もコンパクトにまとめられます。居抜き物件であれば、内装工事費などをさらに削減できます。
ただ、狭い飲食店は入店できるお客様の数が制限されるデメリットがあります。そのため、小さなお店を経営するのなら、メニューや販売価格を工夫して、回転率を高めることも考えなくてはなりません。
間取りの狭い飲食店における開業費用の目安
間取りが狭い飲食店とひと口にいっても、さまざまなパターンやケースが考えられるため、一概に費用を説明することはできません。それを踏まえたうえで目安を紹介するのなら、特別な場合を除き、だいたい300~800万円が開業費用の相場と考えてください。
内訳としては、物件の取得費として1ヶ月の賃料の6~10ヶ月分、内装工事費が坪単価20~60万円、厨房設備費が100万円~150万円程度です。ほかにも、看板やHPの制作費、食器や消耗品の購入費、運転資金などが考えられます。
内装工事費や厨房設備費が大きなウエイトを占めるため、慎重に業者を選定しましょう。過去の飲食店の施工実績をきちんと確認するのはもちろん、相見積もりを提出してもらい価格や工事内容を比較しつつ決めるのが基本です。
低コストで経営できる飲食店
たとえば、ほかの飲食店を間借りして営業するスタイルも、近年では広がりつつあります。たとえば、夕方から営業を始める居酒屋の店舗を、カレー店が昼間のランチタイムに間借りするといった具合です。
また、スタッフを雇う必要がない、月々の賃料が安いといった小さな飲食店であれば、低コストで運営できるため開業のハードルが高くありません。開業資金や運転資金も抑えられるため、まとまった資金を用意できないといったケースでもおすすめです。
一人利用客が多い飲食店
一人客の利用が多い飲食店は、大きなテーブルが必要ありません。カウンターや、1~2人用の小さなテーブルを用意すれば営業できるため、狭い店舗で十分であり、開業費用を大幅に抑えられます。
ただし、一人利用客がメインの飲食店となると、家族連れに比べると客単価は低くなると考えられます。それにともない利益も少なくなるおそれがあります。
ただ、この問題は回転率を高めることで解決可能です。たとえば、ラーメン店やうどん店、牛丼店などはのんびりと食事をとるお客様は少ない傾向があるため、回転率を高められます。これらの業態でなくても、単品中心メニュー、かんたん調理でスピード提供、迅速な片づけ、着席前にオーダーをとるなど工夫すれば、回転率を上げることは十分可能です。
開業しやすい飲食店の形態
規模の小さなお店や無店舗型などは、コストとリスクを抑えた開業が可能です。
小さい飲食店
小さい飲食店の定義やイメージは人によって異なるものの、一般的には客席が10席程度で、厨房やトイレなどを含めた坪数が10~15坪以下の広さが該当します。小さい飲食店は、コストを抑えやすいメリットがあるため、開業もしやすい傾向があります。
規模が小さな飲食店は、カフェやバー、寿司店など、一人で利用しやすい業態が多くを占めています。小さければ、テーブルやチェアの数を少なくできるほか、オーナー自ら経営もできるため、人件費も必要ありません。
店舗を持たない飲食店
店舗を持たない無店舗型の飲食店も、開業のハードルが低いおすすめの開業スタイルです。昼間に営業していない居酒屋など夜型飲食店を間借りする、昼夜型飲食店の深夜の時間帯を間借りするなども、無店舗型営業店の一種です。
近年増えている形態に、ゴーストレストランが挙げられます。ゴーストレストランはデリバリーの専門店であり、飲食店のようにお客様に食事を提供するスペースなどは用意していません。しかもシェアキッチンなどを利用しますから投資額が少なくて済みます。コロナ禍でデリバリー需要が高まり、ゴーストレストランが増加しました。
自宅を店舗に改装するのも開業費用を抑えるひとつの手です。たとえば、持ち家の戸建てをカフェに改装する、親から相続した古民家をレストランにリフォームして営業するといった具合です。自分の持ち家を店舗にするのなら、月々の賃料も発生しないため、固定費を大幅に節約できます。
キッチンカーを用いた移動販売も検討してみましょう。キッチンカーを導入する費用はかかるものの、月々の固定費は店舗を構えるのに比べ大幅に節約可能です。より有利な商圏に移動して販売できることも強みになります。
飲食店を開業するまでの流れ
飲食店開業のスタートダッシュでつまづいてしまわないように、開業までの流れを把握しておきましょう。一般的には、コンセプト設計→事業計画書作成→資金調達→物件探し→メニュー開発→内装工事・設備・備品購入→各種手続き→開店準備→開店と進めます。
ステップ1:コンセプト設計
飲食店経営を成功させるには、コンセプト設計が重要です。コンセプトによって、訴求の方法や提供するメニューなどが変わってくるためです。そのため、まずはコンセプトの設計と明確化を進めましょう。
コンセプト設計は、7W2Hを軸に考えます。Why(なぜ)、When(いつ)、Where(どの地域に)、Who(誰が)、Whom(ターゲットは誰か)、What(メニューは何か)、Which(どのメニューがメインなのか)、How(どのように認知を向上させるのか)、How much(どの程度のコストをかけるのか)を軸に考えると、コンセプトが見えてきます。
コンセプトが決まったら、それを店舗のインテリアやメニュー、サービスなどへ反映させていきましょう。
ステップ2:事業計画書の作成・資金調達
事業計画書は、飲食店を開業し事業を進めるにあたっての指標となる地図(ロードマップ)です。また、金融機関から融資を受ける際に、事業計画書の提出を求められ、金融機関の審査を受けるケースがほとんどです。事業計画書には、具体的な事業の内容や収支計画を組み立てて整理し、収支のシミュレーション内容も記述します。
店舗の取得や内装工事費などに多額の費用がかかるため、資金も用意しなくてはなりません。自己資金がなければ、日本政策金融公庫や銀行や信用金庫などからの融資を検討します。金融機関によっては、審査の時間が長く融資の実行まで数ヶ月を要するケースもあるため、余裕を持って申し込みましょう。
国や自治体が用意している、補助金や助成金を活用するのもひとつの手です。たとえば、小規模事業者持続化補助金や起業支援金などが挙げられます。利用にあたり、細かく条件が設けられているため、事前にWEB検索をして種類と内容を確認しておきましょう。
ステップ3:物件探し・施工
物件選びは、立地条件も含めて開業する業種や業態で異なります。開業後の事業継続や利益にも大きく関わってくるため、慎重に探さなくてはなりません。予算や立地を考慮しつつ、設定したコンセプトに即した物件を見つけましょう。
物件探しでは、まず、このエリアがいいと希望する商圏内を自分の目で確かめ足で歩いて、街の景色や通行者を確かめること重要です。そして不動産会社の担当者に相談して進めることもおすすめします。店舗物件の扱いに長けた不動産会社や、居抜き物件を専門に扱う会社などの不動産会社であれば、地域の特性も把握しているケースが多いため、どのような層が多く住んでいるのか、開業しようとしている飲食店でやっていけそうか、といったことをアドバイスしてもらえる可能性があります。
店舗が決まったら、内装工事業者を選定したうえで依頼し、施工してもらいましょう。施工を始める前に、内外装のコンセプトをきちんと工事業者に伝えておくことが大切です。認識のずれがないよう、店舗の視察や参考になりそうなイラストや写真を資料として提供するのもおすすめです。
ステップ4:メニュー開発
メニューは、飲食店の利益を大きく左右するため、慎重に検討を重ねましょう。もっとも大切なのは、ターゲットのニーズにあわせることです。たとえば、メインターゲットが食べ盛りの男子学生なのに、女性が好みそうな見栄えがよくボリュームも少ないメニューばかりとなれば、繁盛は望めません。
また、近隣で営業している競合店のリサーチも行いましょう。特に、プライスゾーンが同じ同業他社はライバルであるため、どのようなメニューを提供しているのか、いくらで販売しているのか、どのようなサービスを行っているのかなどのチェックが必要です。そのうえで、競合との差別化を図りましょう。
差別化の方法としては、料理やドリンクのボリュームを増やす、価格に大きな差をつける、映える見た目を意識する、などが考えられます。差別化の方法は多々あるため、試行錯誤を繰り返してみましょう。
ステップ5:設備・備品の導入
厨房設備や什器(食器・調理器具・家具など)をはじめ、お店で利用する各種備品を購入します。厨房設備や什器は中古品もあるので、予算に余裕がないのなら新品ではなく中古品を導入するのもひとつの手です。
什器を選ぶ際には、店舗のコンセプトに即したものを選びましょう。たとえば、「かわいい」がコンセプトのお店であれば、カラフルでかわいらしいデザインを採用した食器やチェア、テーブルなどを選ぶといった具合です。提供している料理やドリンクがコンセプトにあっているのに、什器がマッチしていないとなると、お客様が違和感を抱いてしまうため注意しましょう。
ステップ6:各種手続き
飲食店を開業し営業するには、飲食店営業許可を得なくてはなりません。飲食店営業許可は、保健所の窓口で申請します。申請の際には、申請書や営業設備の配置の平面図、場所の見取り図など各種書類が必要なのでもれなく用意しておきましょう。また関連して、食中毒保険の生産物賠償責任保険(PL保険)にも入っておくと安心して開業できます。
ほかにも、開業届や防火管理者選任届などの届出が必要になるケースがあります。自身に必要となる手続きを事前に確認し、忘れることなく進めましょう。
ステップ7:開店準備
従業員を採用する場合は、求人サイトや求人情報誌へ広告を出稿し人材を募ります。面談時に職務内容をきちんと伝えて採用したら、開業日までに教育を行いましょう。マニュアルの作成も必須です。業務や接客、調理など各種マニュアルを整備します。
開店したことを知ってもらわないことには集客できないため、お店の宣伝も必要です。近隣へのポスティングやSNSでの情報発信などを行います。また、開業前の準備として、「食べログ店舗会員」に登録するのもおすすめです。
食べログ店舗会員は、営業時間やメニュー内容などの情報を発信できるプラットフォームです。日常的に大勢のユーザーが利用しているため、集客力の強化にもつながります。
まとめ
飲食店を開業するにあたり、少しでもリスクやコストを抑えたいのであれば、小さなお店や一人利用客が多い業態の飲食店がおすすめです。また、キッチンカーや間借り店舗など、無店舗型の営業スタイルもコストを抑えやすい形態です。飲食店は開業時だけでなく、それ以降の店舗経営もしっかりと考慮しなくてはなりません。開業後の集客方法や資金繰りなどが不十分だと、経営が行き詰まるおそれがあるため注意が必要です。本記事でご紹介したポイントや流れに沿って準備を行うことで、そうしたリスクを低下させられるので、飲食店を開業する際にはぜひお役立てください。
参考URL
小規模で開業しやすい飲食店とは?|キーコーヒー
【飲食店開業】個人で開業できる飲食店の種類とは?|StartNote(スタートノート)
【完全版】一人で飲食店開業する方法まとめ!|TE-UP
飲食店の内装工事費用の目安とは?|店舗内装.com
スモール飲食店の魅力とは?成功するためのポイント解説|Scheemeマガジン
飲食店を開業するには?必要な手続き・資格・費用を解説|フリウリ
飲食店開業までのステップを解説!必要な準備とは?|USENの開業支援サイト「カナエル」
飲食店開業に必要な資金とは?|B-call
【保存版】飲食店の開業に必要な準備・手続きを徹底解説|ぐるなび PRO
飲食店を開業するには?ステップごとの流れを解説|FoodsFridge
【保存版】飲食店開業の流れと準備チェックリスト|日本政策金融公庫ガイド
飲食店開業に必要な資格と手続きとは?|Tips Note
飲食店の開業手順まとめ|開業までの流れや必要な準備を解説|GMOあおぞらネット銀行 起業マガジン
飲食店の開業手順|スムーズに始めるために押さえるべきポイント|カシオ店舗ソリューション
初めて飲食店を開業する方必見!成功するための基礎知識|アーキクラウド
飲食店の開業に必要な手続きまとめ【保存版】|クックビズ総研
飲食店の事業計画書の書き方|作成の流れと例文付きで解説|KitchenBASE
飲食店メニュー作りのポイントとは?コンセプトと設計の重要性|FoodsFridge
飲食店開業に必要な手続きまとめ|三井住友カード
お店を開く前に必要な飲食店営業許可とは?|食べログオーナー
監修者:宇津宮 正博
プロフィール |
飲食店研究者、食業専門経営コンサルタント、飲食店の困ったを解決相談所大分代表者。29歳~40歳まで飲食店への食器販売を通じて飲食業界のあり方を独学で学ぶ 1989年に独立し、1989年~2023年の間に飲食店の開業店90店舗以上、経営改善支援 延べ3000店舗以上を33年間にわたり行う。 2023年には「成功する飲食店の値上げ戦略2023」を出版した。 |
---|---|
サイトURL | https://note.com/39168154 |