集客やサービス向上に役立つ飲食店の売上アップのためのアイデアを紹介

飲食業界は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、苦境に立たされている店舗が少なくありません。外食自粛や時短営業の要請などから大きな打撃を受けていますが、飲食店はアイデア次第で大きな飛躍が期待できる業界でもあります。本記事では、新しい時代に即した飲食店の生存戦略について解説します。

目次

飲食店における売上アップの施策を考える前に

収益性の最大化を目指す際は、まず飲食店の売上を構成している具体的な要素を把握し、定量的に分析する必要があります。どのような事業においても、基本的に売上を拡大する方法は

  • 「新規顧客の獲得」
  • 「顧客単価の向上」
  • 「購入(来店)頻度の上昇」

の3つです。これは米国のコンサルタントであるジェイ・エイブラハムが提唱する売上の3原則で、飲食事業にも当てはまります。

売上とはどんな要素でできているのか?

「新規顧客の獲得」と「顧客単価の向上」、そして「購入(来店)頻度の上昇」の3原則を飲食事業に当てはめると、

売上=来店客数×客単価×購入(来店)頻度

という数式に変換可能です。「来店客数」は店舗に来店した顧客数、「客単価」は顧客一人あたりが1回の購入で支払う平均額、「購入(来店)頻度」は顧客が店を利用する頻度を意味します。飲食店の売上を拡大するためには、いかにしてこの3要素を最大化するかが重要な課題です。

そして、来店客数を向上させるために重要となるのが「見込み客数数」「認知率」「来店率」という3つの要素です。「見込み客数」は見込み客の数、「認知率」はお店の存在、商品やサービスの知名度、「来店率」は店舗ビジネスの領域では、見込み客が複数の選択肢から自店舗を選ぶ割合を意味します。

来店客数=見込み客数×認知率×来店率

という数式が成り立つため、飲食店の来店客数をアップするためには見込み客数・認知率・来店率を高める施策が必要です。

売上アップとは何をすればよいのか

飲食店の売上は「売上=来店客数×客単価×購入頻度」という数式で成り立っているため、3つの要素を総合的に向上させる必要があります。たとえば、SNSやオウンドメディアを通じてユニークな情報を発信し、店舗の認知度が高まれば見込み客数や来店率の向上につながり、来店客数の増大が期待できます。

飲食店の客単価を上げるためにはセットメニューの開発や期間限定メニューの提供、あるいはドリンクやデザート、テイクアウトの充実といった施策が必要です。

客単価の向上を目的としてメニューを値上げする場合は、計画的かつ慎重に実行しなくてはなりません。物価の高騰により値上げせざるを得ない場合もありますが、安易な値上げは客離れの要因となり、顧客満足度の減少となる可能性があります。

購入頻度を増やすためには、競合店にはない独自の付加価値を創出することが大切です。そこでしか味わえない看板メニューの提供や高品質な接客対応、清潔感溢れる空間演出、美麗なインテリアデザインなど、顧客満足度の最大化に寄与する施策が求められます。

飲食店の売上アップのアイデアを実施する流れ

売上の拡大につながるアイデアを実施する際は、「手法」ではなく「本質」を捉えることが大切です。一口に飲食事業といっても店舗によってジャンルや客層が異なるため、売上アップにつながる施策に絶対的な正解はありません。

したがって、「何を実施するのか」という手法ではなく、「どうすれば顧客満足度の最大化につながるか」という本質を追求する必要があります。以下のプロセスを段階的に踏破することで、自店舗に必要となる本質を捉えたアイデアや施策の創出につながります。

  • 施策の課題と目標を定める
  • 顧客のターゲットを明確に決める
  • 実施後の効果を測定する
  • 結果を参考に改善案を計画する

施策の課題と目標を定める

売上の拡大を目指す上でまず行うべきなのが現状認識です。現在の店舗が抱える経営課題を洗い出して分析し、問題となっている数字を探します。

たとえば、来店客数が減少しており、新規顧客数が少ないとなれば、自店舗の商圏に同ジャンルの飲食店が出店し、客足が遠のいていると仮定し、新メニューの開発や認知度の拡大を目的とする広告戦略などが必要です。現状の経営課題を認識し、何が達成されたら成功なのかという目標を明確にすることで、施策の方向性が具体化されます。

顧客のターゲットを明確に決める

施策の課題と目標を定めると同時に行うべきなのが、自店舗の顧客となり得るターゲットの明確化です。たとえば、ターゲットが20代の女性と60代の男性では趣味嗜好が大きく異なり、魅力的に感じる商品やサービスに差があると考えられます。

仮に新たなメニューやサービスを開発する場合、自店舗のターゲットを明確化できなければ、的確なニーズを捉えた商品開発はできません。ターゲットを明確化し、見込み客の潜在的なニーズを捉えることで、アイデアや施策の方向性が固まります。

実施後の効果を測定する

アイデアや施策の実施後は、必ず成果を測定しなくてはなりません。一例としてビュッフェ形式のサービスを開始し、SNSや広告出稿による宣伝効果で来店客数が向上しても、材料費や広告費の増加によって利益率の低下を招く可能性があります。

また、来店客数が増加してもリピーターの獲得につながるとは限らないため、リピート率を調査するプロセスも必要です。このように、施策を実行する際は成果を定量的に分析できる形式にし、その効果を測定する必要があります。同時に、常連客の意見やアンケート調査などで定性的なデータを収集するプロセスも求められます。

結果を参考に改善案を計画する

企画の立案や施策の実行は、一度で終わりという性質のものではありません。数値化できる定量的なデータと、顧客の認識や感情を表す定性的なデータを収集・分析し、

計画(Plan)」→「実行(Do)」→「評価(Check)」→「改善(Action)

のPDCAサイクルを回し続ける継続的な改善が必要です。そのためには、商品・メニューを軸にした「ABC分析」や、顧客を軸にした「RFM分析」など、データ分析への理解も求められます。こうした情報をすべての従業員が共有できる環境を整えることで、店舗の総合的な経営力の強化に寄与します。

飲食店の売上アップのためのアイデアを紹介

売上アップにつながる具体的なアイデアには、どのようなものが挙げられるのでしょうか。ここでは、飲食事業の売上を拡大する具体的なアイデアや施策について解説します。

ただし、売上アップにつながる施策に絶対的な正解は存在しません。料理のジャンルや主要な客層、店舗の財務状況や立地などによって必要な施策が異なるため、以下に挙げるアイデアを参考にしつつ自店舗の経営に応用してください。

期間限定メニューを開発する

飲食店の売上を拡大する上で意識すべき要素のひとつが「希少性」です。人間には「希少性の原理」と呼ばれる心理作用があり、絶対数が少なく入手が困難な品物に魅力を感じる傾向にあります。

この原理をマーケティングの領域に応用したものが、季節限定の製品や数量限定の生産品、タイムセール価格の商品などです。飲食店であれば春夏秋冬の各季節に応じたメニュー開発や、イベント時期の期間限定メニューなどが該当します。とくにクリスマスやハロウィンといったイベントの前は高い効果が期待できるため、積極的に取り入れたい手法です。

裏メニューを開発する

期間限定メニューの開発と平行して実践したいのが「裏メニューの開発」です。通常のメニューには掲載されていない裏メニューを開発し、常連客のみに提供することで特別感を演出できます。一般客には出さない裏メニューを提供することで顧客の優越感を満たし、ロイヤルカスタマー化を促進する一助となります。

繁盛している飲食店は既存顧客のリピート率が高い傾向にあり、常連客によって支えられているといっても過言ではありません。飲食事業において次回来店を促すリピート戦略は必須の取り組みであり、その手段のひとつとして裏メニューの開発は非常に有効な方法です。

安定客の3回と常連客の10回の壁を超える

飲食事業や小売業界のマーケティング理論のひとつに「3回安定10回固定の法則」と呼ばれる法則が存在します。これは店舗に3回来店した顧客は「安定客」となり、その後に10回来店した安定客は「常連客」になるという法則です。

飲食事業の経営基盤を安定させるためには、新規顧客の獲得を推進するとともに、いかにしてリピーターを獲得するかという視点をもたなくてはなりません。次回来店を促す短期的な施策としては、クーポンの配布やポイントカードの発行などが挙げられ、期間限定メニューや裏メニューの開発などは長期的な視点に基づくリピート戦略となります。

SNS・オウンドメディアを運用する

あらゆるビジネスにおいて、「認知度の最大化」は非常に重要な経営課題のひとつです。現代はSNSが隆盛を極めており、TwitterやInstagram、オウンドメディアなどを通じて情報を発信することで認知度の拡大が期待できます。

たとえば、新メニューの宣伝やイベントの告知などを定期的に発信し、ユーザー接点を強化することで見込み客の来店を促進したり、既存顧客との関係性を深めたりといった成果につながります。基本的には事業内容と関係のないコンテンツ配信は避け、見込み客や既存顧客の来店を促すような情報を発信するのがセオリーです。

お店のコンセプトを変える!狙っている客層の心をつかむ

集客に悩んでいる飲食店の特徴として挙げられるのが、「店舗のコンセプトが曖昧」という点です。近年は消費者の購買行動に「インターネットによる情報検索」が加わり、グルメ情報サイトで評価の高いお店を選択するという行動が一般化しています。

そして、消費者のITリテラシーが高まるとともに差別化が困難となり、コンセプトの曖昧な飲食店は淘汰されていく傾向にあります。このような時代に飲食店が生き残るためには、得意分野に特化すると同時に「ファミリー向け」「富裕層向け」「女性向け」などのコンセプトを明確化し、特定のニーズを捉えなくてはなりません。

メディアに取り上げてもらう

店舗の認知度を高める具体的な方法は、SNSやオウンドメディアなどのWeb媒体だけではありません。テレビや新聞などのマスメディアに対し、新店舗や新商品などの情報をニュース素材として提供する「プレスリリース」も有効な施策です。

インターネット社会においてもマスメディアは強い影響力を備えており、テレビ・新聞・雑誌といった媒体の知名度を広報に利用できます。また、若年層をターゲットとする店舗はグルメ情報サイトを積極的に活用し、主要な顧客が中年層やシニア層の場合はプレスリリースを利用するといった使い分けも可能です。

営業時間の見直しを図る

コロナ禍で生活習慣が変わったため、店舗の営業時間の見直しも売上の確保に有効な施策です。たとえば、居酒屋では深夜の集客が期待できないので、昼の時間にランチメニューやテイクアウトサービスなどを始めることで、夜間営業より利益率が低くとも売上の拡大につながります。

また、昼間の宴会なども増えてきていることから、その時間限定のドリンク飲み放題などを提供することで、新規の客層を獲得できる可能性が高まります。

誕生月限定のクーポンを利用する

クーポンによる割引やサービスの追加は、売上の拡大やリピーターの獲得において非常に有効な施策です。年齢や性別、誕生日といった顧客データを取得できていれば、誕生月限定のクーポンを発行することで店舗への来店を促す効果が期待できます。

顧客に対して特別感と優越感を提供する一助となり、ロイヤルカスタマー化に寄与する点も誕生月限定のクーポンを発行するメリットです。ただし、こうした集客方法は顧客情報の取得が必須事項となるため、店舗のアプリケーションやメールマガジンなどへの登録を促す戦略が求められます。

リピーター獲得のための施策とは

マーケティングの領域には「5:25の法則」と呼ばれる法則があり、「顧客離れを5%改善することで利益率が25%改善する」とされています。

また、「新規顧客の獲得にかかるコストは、リピーターを獲得するコストの5倍を要する」とされており、これを「1:5の法則」と呼びます。あらゆる事業において新規顧客の獲得は重要課題のひとつですが、コストを抑えつつ効率的に売上の拡大を図るためには、リピーターの獲得を推進する施策が必要です。ここでは、飲食事業でリピーターを獲得するための施策について解説します。

気持ちのいい接客を心掛ける

飲食事業においてリピーターを獲得するためには「ホスピタリティ」が欠かせません。ホスピタリティは「心からのおもてなし」や「深い思いやり」を意味する概念で、優れた顧客体験を提供する土台となります。 特別なことをする必要はなく、丁寧な挨拶や礼節をわきまえたコミュニケーションを心がけるなど、小さなおもてなしを積み上げて顧客満足度の最大化を図るという意識が大切です。 そして、気配りと心配り、思いやりの精神で良い思い出を作ってもらうことが、既存顧客のロイヤルカスタマー化につながります。

情報発信を定期的に行う

リピーターの獲得や売上アップを推進する上で重要課題のひとつが「顧客接点の創出」です。現代はスマートフォンの爆発的な普及に伴い、インターネットの利用率が年々向上しているため、SNSやオウンドメディア、メールマガジンなどを活用した情報発信は必須の取り組みといっても過言ではありません。

オンライン上のチャネルを戦略的に活用し、顧客接点の強化に取り組むことでリピーターの獲得につながります。ただし、メリットのない情報はノイズとなるため、顧客のニーズを捉えた有益なコンテンツの提供が必要です。

また行きたくなる仕組みを作る

リピート率を向上させるためには、顧客がもう一度来店したいと感じる仕組みを構築しなくてはなりません。ここまで紹介してきたように、各季節に応じた限定メニューの開発や誕生月限定クーポンの発行、SNSを通じた情報発信などの施策を、自店舗に適した形式に変換しつつ提供する必要があります。

そして、こうした手法そのものにとらわれるのではなく、顧客満足度の最大化というビジネスの本質を捉え、ホスピタリティに溢れるサービスを提供するという意識がリピーター獲得における最重要課題です。

まとめ

2020年3月に新型コロナウイルスがパンデミック認定され、国内におけるさまざまな分野が大きな影響を受けました。とくに飲食業界は外食自粛や時短営業の要請などの影響により、多くの店舗が苦境に立たされています。

このような社会的背景のなかで飲食店が生き残るためには、顧客の購買意欲を醸成するメニュー開発や、ファン化を促進するSNS戦略といった取り組みが不可欠です。とくにデジタル化が加速する現代社会では、オンラインのチャネルを活用した販売促進活動が欠かせません。飲食事業のデジタルシフトを推進する店舗は、食べログ店舗会員の加入を検討してみてはいかがでしょうか。


参考URL

店舗の売上を上げる方法はたった3つ!商圏の顧客に愛される店舗になるには? | Shufoo!(シュフー)
小さな飲食店の常連獲得へのヒント〜3回安定10固定の法則〜 | ビズイーツ.JP 飲食開業経営辞典
飲食店の売上アップのアイデア11選!【方程式を利用しよう】|CAROT(キャロット)
お客様の離れを5%改善=利益は25%アップするってほんと?(5:25の法則) - FOOD-IN(フーディン)〜未来のレストランをつくる〜
新規の獲得コストはリピーターの5倍?(1:5の法則) - FOOD-IN(フーディン)〜未来のレストランをつくる〜
【たった一商品でテレビに出る為の商品開発】人口減少・デフレ時代の飲食店経営に必要な目的来店性を付加する商品開発法 | 船井総研フードビジネス支援部
売上を上げる方法を解説!購入前・購入時・購入後の設計が大事|HITOATSUME
知っておきたい!飲食店のPR VOL1.「プレスリリースの重要性」| RESTA[レスタ]
売上アップ 3つの方法|IROHA
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監修者:原島純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。
また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。
2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。
また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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