飲食店の多店舗展開で失敗しないためのポイントとは?

飲食業界において、最初に出店した店舗で良い収益を確保できるようになれば、次は「多店舗展開」を考えるのが一般的です。この記事ではまず、多店舗展開の概要から種類や特徴について解説します。また、多店舗展開を検討する際に気を付けておきたいポイントや、実際に展開するにあたり準備しなければならないことなどをピックアップします。

目次

飲食店における多店舗展開とは

飲食店の経営者なら、最初にオープンさせた店舗の経営が軌道に乗れば、将来的に多店舗展開も視野に入れたいと考えることがあるのではないでしょうか。ここではまず、店舗ビジネスにおける多店舗展開とは何かといった基本的な知識から解説します。

多店舗展開の概要

そもそも多店舗展開とは、その名の通り、複数の店舗を経営する方法のことです。たとえば、当初経営していた店舗の売上が好調で、さらに収益を伸ばしたい場合、ノウハウを活かして別の店舗をつくるというのはごく自然な流れです。それはさらなる売上のアップにつながり、店舗ビジネスとして成功できる可能性が高まります。

売上向上だけでなく、複数のエリアに複数展開することで、企業や店舗ブランドの認知度向上を図れたり、仕入れをまとめてボリュームディスカウントを効かせたり、スタッフの地位向上などができるといったメリットも考えられるでしょう。

たとえば、昨今のブームとなった高級食パン店は、都心部や郊外などさまざまな場所へ出店することで話題になり、さらなる多店舗経営に取り組んでいるといった事例もあります。 また、基本的に飲食店は人気やブームの浮き沈みが激しいため、単一業態だけではなく複数の業態に広げてリスクを分散する店舗展開という方法もあります。

多店舗展開の種類と特徴

多店舗展開は大きく「直営店展開」と「フランチャイズ展開」の2つに分けられるのが一般的です。 まず直営店展開とは、自社が店舗やその店舗で働く従業員を自前で用意し、雇用契約を直接結ぶ方法です。メリットとしては、店舗の売上はすべて自社の売上となるため、成功すれば大きな利益を確保できます。

また、スタッフにも自社との雇用契約を遵守させることが可能で、指示命令系統がシンプルになるのもポイントです。

ただ、直営店経営では、出店に関わるコストをすべて負担しなければならないのがデメリットでしょう。具体的には、出店する土地や建物にかかる費用や、スタッフの人件費や諸経費などが考えられます。

一方、フランチャイズ展開と呼ばれる方法では、自社がこれまで培ってきた店舗経営のノウハウや経験を「加盟店」と呼ばれるメンバーにも共有し、同じ屋号やブランドで経営する方法です。加盟店になるには、フランチャイズ展開を行う側が実施するさまざまな審査を経て承認される必要があります。展開する企業は、加盟店から加盟時に加盟金を、そして売上の一部から定期的にロイヤリティを徴収することで、実質的な売上を伸ばしていけるのがメリットです。

資金面や人材面などの負担が少なくなり、事業展開を早く進められることもフランチャイズ展開でのメリットとも言えます。 しかし、先に述べた直営店展開とは逆に、スタッフは自社と直接雇用契約を結んでいないため、指示命令の徹底が難しくなるといったデメリットがあります。各種経費はフランチャイズオーナーがすべて負担するため、利益率は高いものの、自社の方針から外れることによって発生する何らかの不祥事が起きた場合は、企業イメージやブランド自体を傷つけられるリスクが存在するため、あらかじめ注意が必要です。

飲食店が多店舗展開する上で気を付けるべきポイントとは?

飲食店において多店舗展開を検討する際には、これまで問題にならなかったようなことも気を付ける必要が出てきます。そこで、事前に以下のようなポイントを意識しておくと安心です。「経営管理」「人材確保」「資金」といった面から、それぞれ詳しく解説します。

複雑化する経営の管理ができるか

これまで数少ない店舗経営であれば問題なかったとしても、より多い店舗の状況を見なければならないとなると、さまざまな課題が発生します。たとえば、仕入れや請求などの経費が複雑化し、適切に管理できるかどうかといったことが考えられるでしょう。

あるいは、従業員スタッフのシフトに関しても、店舗間での移動なども含め効率的に回す必要が出てきます。こうしたヒト・モノ・カネといった企業のリソースにまつわるマネジメントの最適化は、多店舗展開において不可欠です。きちんと「仕組み化」できていないとお客様に迷惑をかけ、ひいては閉店のリスクさえ負うことになります。

新しい人材の確保と育成ができるか

これまでは1人の店舗責任者を置き、少人数のスタッフでシフトを組み回せていたとしても、多店舗に展開するなら、到底足りなくなります。各店舗における責任者にふさわしい人材や、それぞれ店舗の立地や規模などにあわせて、従業員スタッフの必要数を考え、早急に確保していかなければなりません。

ただ、人材の確保と言っても誰でもよいわけではありません。お客様からは各店でのサービスに同等のクオリティーを期待されます。そこで、研修などを通じ、スタッフの教育や指導には力を注いでいく必要があるでしょう。もちろん、スタッフは頻繁な入れ替わりも想定されるため、店舗での営業をしながら、同時にこうした育成体制をとっていけるかどうかも、あらかじめ検討が重要です。

経費が増加するため、早期に売上が立てられるか

そもそも新しい店舗をつくるためには、ある程度まとまった初期費用を用意しておくことが条件になります。具体的には、土地や建物にかかる費用、内装や外装にかかる費用、必要な設備を導入する費用、人材を採用するための広告費用などがあるでしょう。特に、店舗の保証金の負担が重くなります。店舗数が増えれば増える程、決算書上の保証金の額が増えていくので、財務上は資産でも現金として使用できず、使えないキャッシュが増えていくことになります。

さらにオープン後にも、定期的に多大なランニングコストがかかります。家賃や光熱費、人件費といった固定費や、さまざまな税金も余裕をもって支払える経営状況でなければ、やがて厳しくなります。このように、初期費用やランニングコストといった金銭面での課題をクリアすることも、多店舗展開には不可欠です。

多店舗展開に向けて準備すべきこと

ここまで、多店舗展開の種類や始める前に気を付けておくべき点について解説しました。これらの課題を解決できそうだと目処を付けられれば、実際に開店に向けて準備します。では、どのようなポイントを押さえればよいのかについて、紹介します。

各種マニュアルを作成する

新たな店舗を開くことが決まれば、それに向けてまず各種マニュアルを作成することから始めます。マニュアルには、オーナーもしくは店長のためのマニュアルと、現場のスタッフが習得するための業務マニュアル、2種類があると便利です。前者の店長マニュアルでは、ビジョンを明確に示した上で店舗全体がどう動くべきかなど、主にマネジメントに関する内容を盛り込んでいきます。

たとえば、店長としてのマインドや心構え、スタッフの勤怠や労務に関すること、顧客クレームへの適切な対応、金銭管理、資産管理などが挙げられます。 一方、業務マニュアルでは、ホールで接客するスタッフや、調理場で料理をつくるスタッフのために、より具体的な手順や対応方法などを盛り込むのが一般的です。

挨拶や、お客様が来店してから席に着き退店するまでの流れ、メニューごとの調理方法、開店前や閉店後の清掃業務、レジでの金銭管理などが項目別に細やかに掲載されていると、たとえ接客業が初めてのスタッフでも要領を得やすくなるでしょう。さらに、通常異なる業務に就いているスタッフが臨時に対応する場合でも理解しやすくなります。

ただ、こうしたマニュアルは、必要最低限のサービス品質を標準化するためのものであり、顧客満足度を継続的に向上させるためには、日々の営業から改善を積み重ねる取り組みも大切です。

資金面に余裕をもって計画する

最初の店舗が赤字であるのに、多店舗展開を考えるケースは少ないでしょう。つまり、多店舗展開を検討するには、最初の店舗の経営状況が優れており、安定して黒字を出せていることが基本的な前提になります。ただ、飲食ビジネスにおいては、どれほど念入りに計画を立てたとしても、2店舗目が成功するとは限りません。それはタイミングや、競合店との兼ね合いなど、さまざまな要素が影響するからです。

そこで、2店舗目以降を展開する際には、あらかじめ失敗したときの対応についてもあらかじめ想定しておく必要があります。もし軌道に乗らなかった場合は、最初の店舗における売上で両店舗全体のキャッシュフローをまかなうといった計画でも構いません。

ただ、前述したように、新たな店舗を出す際は、さまざまなコストがかさみます。しかし、1店舗目で多額の借り入れがある場合は、2店舗目でも同様に借り入れることはなかなか難しいでしょう。そのため、多店舗展開を考える際は、投資する額の3分の1、あるいは2分の1ほどの自己資金を貯め、余裕のある状態で進めていくことが望ましいです。

ペーパーレス化を進め、効率化を図る

店舗数が少ない段階であれば、紙を用いて店舗における受発注や売上管理などの業務を行えます。しかし、多店舗展開で店舗数が増えると業務も煩雑になり、紙での管理は現実的に難しくなります。

そこで昨今は、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の流れをくみ、「店舗管理システム」を導入する企業もよく見られるようになりました。管理する媒体を紙からツールへ移行することで、必要なデータを迅速に収集、蓄積し、分析したり一元管理したりできるのがメリットです。

紙で管理する業務プロセスと異なり、ツールなら誰でも最新の情報を知りたいときに容易に拾えるため属人化を防ぎ、業務効率や生産性の向上に役立ちます。さらに、企業で消費する紙資源の削減にもなり、環境問題に取り組んでいるとして企業イメージの向上も図れるでしょう。

まとめ

飲食店において多店舗展開が成功すれば、全体的な売上向上のほか、企業や店舗ブランドの認知度アップ、複数業態へのリスク分散など、さまざまなメリットを享受できます。ただ、複雑化する経営管理がネックになることが多く、たとえば紙などアナログな方法での店舗管理では到底追いつかなくなるため、早急にDX化を進める必要があるでしょう。 また、多店舗展開には、集客力アップも欠かせません。日本最大級のグルメサイトである「食べログ」を活用し、「食べログ店舗会員」に登録すると、店舗情報やアクセス方法の掲載、クーポン発行が無料で行えます。さらに従量課金制でネット予約に対応できるのも魅力です。多店舗展開を検討する際は、「食べログ店舗会員」へもぜひ登録してください。


参考URL

多店舗展開を成功させるコツとは?注意点や企業が取り組むべき課題・解決方法も解説 | チェーンストアの店舗運営DX/ネクスウェイ
『多店舗展開』とは? | フランチャイズWEBリポート
多店舗展開とは?【多店舗化.com】
店舗管理システムの比較14選。目的別の選び方|アスピック
飲食店の多店舗展開、出店時の課題・対策と出店後の店舗運営のポイント|フーズチャネル
飲食店の多店舗展開、出店時の課題・対策と出店後の店舗運営のポイント|フーズチャネル
多店舗展開のメリットとデメリット~成功に導くDX活用|POS+(ポスタス)店舗運営お役立ち情報
飲食店を多店舗展開するメリットと注意点!成功のコツは将来設計と管理環境 | TRYETING Inc.(トライエッティング)

監修者:原島純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。
また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。
2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。
また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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