飲食店の種類には何がある? 業種・業態をまとめてご紹介
飲食店を開業したいと考えているのなら、どのような業種・業態があるのかを把握しておく必要があります。選ぶ業種や業態によって、経営戦略などが大きく変わるためです。本記事では、飲食店の業種や業態、売り上げが伸びる飲食店の特徴などについて解説します。
目次
飲食店における「業種」と「業態」の違い
飲食店を開業して成功するためには、業種と業態について理解しておく必要があります。それぞれの違いを把握したうえで、今後どのような業種、業態で開業するのかを検討していきましょう。
飲食店における業種とは
飲食店における業種は、提供する商品の種類によって分類され、以下のような種類があります。
詳しくは日本標準産業分類(総務省2013年改定)の大分類M「飲食サービス業」その中の中分類「飲食店」の欄をご覧ください。
総務省「日本標準産業分類」
一般的によく知られた業種の種類は、
- フランス料理
- 和食
- 中華料理
- イタリア料理
- 創作料理
- ラーメン
- エスニック料理
- 焼き鳥
- 韓国料理
- 食堂・洋食レストラン・和食レストラン
- すし
- 焼き肉
- バー
- 酒場・ビヤホール
- 甘味処
- 喫茶店・コーヒー専門店・フルーツパーラー
- うどん・そば
- カレー
- ハンバーガー・お好み焼き・たこ焼き・焼きそば
- サンドイッチ・ドーナツ・フライドチキンなど
飲食店における業態とは
飲食店の業態とは、メニューの提供方法によって分類された営業形態です。飲食店とひと口に言っても、メニューの提供方法はお店によって異なります。店内に用意した座席へ案内し料理やドリンクを提供する一般的な飲食店のスタイルをはじめ、立ち飲み形式やホームデリバリー、テイクアウトなどもあります。
- ファストフード
- バイキング
- カフェ・喫茶
- ダイニング
- ビュッフェ
- 居酒屋
- ホームデリバリー
- テイクアウト
- 立ち飲み
「業種」「業態」を選ぶポイント
飲食店を開業する場合は、最初に業種や業態を決める必要があります。どのような業種、業態を選ぶかによって、飲食店経営が成功するかどうかが左右されるため、正しいポイントを踏まえて選びましょう。 具体的には、「どんな種類の商品」を売りたいかが決まっていれば「業種」は決まり、どのように提供するかを決めれば「業態」が決まります。また出店したいエリアが決まっている場合は、商圏内でニーズが高く競合の少ない「業種」を選び、さらに「業態」を選びます。
コンセプトにあったものを選ぶ
飲食店経営を成功させるには、コンセプト設計がとても重要です。コンセプトが曖昧では、誰に何を提供したいのか、お店の何が強みなのかといったことがわからず、集客もままなりません。飲食店経営を成功させるには、まずコンセプトを明確にし、それを商品やインテリア、価格、サービスなどへ落とし込んでいく必要があります。
業種や業態は、コンセプトにマッチしたものを選びましょう。たとえば、「アイデアを詰め込んだオリジナルの料理を低コストでお腹いっぱい食べられるお店」がコンセプトであれば、業種は創作料理、業態はバイキングが適切と考えられます。
なお、コンセプト設計を行う際には、5W1H、もしくは7W2Hのフレームワークを活用してみましょう。7W2Hは5W1Hの進化版で、「いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように、どれを、誰を、いくらで」などの指標を用います。より具体的なコンセプトを設計したい際には、7W2Hを活用してみましょう。
市場調査をしっかりと行う
飲食店経営に限らず、ビジネスで成功するには市場調査が必須です。市場の動向やニーズ、トレンドなどを把握できていないと、求めるものを提供できず経営も失敗してしまいます。
市場調査を行いつつ、どういったターゲットをメインにするかを考えましょう。顧客として取り込みたいメインターゲットによって、適切な業種や業態が変わってきます。出店しようとしているエリアにどのような層が多く暮らしているのか、競合は存在するのか、競合の価格帯は、といった部分のリサーチも重要です。
なお、業種や業態を検討する際には、一時の流行に流されないよう注意しましょう。一時の流行で業種や業態を決めてしまうと、わずか1、2年以内に流行が去ったとき、経営が立ち行かなくなるおそれがあります。流行に流されず、冷静にリサーチしたうえで検討を進めましょう。
周りの意見も取り入れながら選ぶ
飲食店を開業するにあたり、さまざまな部分にとことんこだわりたい、と考える人は少なくありません。こだわりをもつのが悪いわけではないものの、こだわりが強くなりすぎると視野が狭くなってしまうおそれがあります。
視野が狭くなると、自分の考えだけで店舗づくりを進めてしまい、ターゲットのニーズを無視した飲食店になる、採算を度外視した飲食店になるなどの弊害が起きかねません。満足しているのはオーナーだけで、メインターゲット層からはそっぽを向かれてしまう、いくら頑張っても赤字になるといった状況に陥るおそれがあります。
そうならないためにも、専門家や家族や友人など周りからのアドバイスや意見には耳を傾けましょう。客観的視点でのアドバイスや意見を聞きつつ、業種や業態を選ぶことが大切です。
飲食店で人気な業種の例
飲食店で人気が高い業種であれば、一定の集客が期待できるため失敗のリスクを軽減できます。どのような業種で開業するのか決めていないのなら、人気の業種から選ぶのもひとつの手です。 そしてこの業種がいいと決まれば、できるだけ競合を避けるため、私の店は他店とここが違うという「差別化要素」を加えて開業しましょう。
ラーメン
もともと中国から伝わったラーメンですが、現在ではすっかり日本の国民食として定着しています。日本人はもちろん、海外からの観光客からも高い人気を誇ります。
狭い店舗でも開業できる点が魅力です。実際、個人で経営しているラーメン店のなかには、狭小物件で営業しているケースも珍しくありません。回転率の高さや、餃子、チャーハンなどのサイドメニューでクロスセルを狙えるのも人気の理由と考えられます。
よくあるラーメン店の業態は、ダイニングやホームデリバリーなどです。デリバリー営業するのなら、麺が伸びないようにスープと容器を分ける、麺の茹で時間を工夫する、伸びにくい性質の麺を使うなどの配慮も必要です。
和食
古くから日本人が慣れ親しんできた和食は、外食産業でも人気の高いジャンルです。煮物や焼き魚、煮つけなど、和食はヘルシーなメニューが多く、健康志向が高まっている現代にマッチした業種でもあります。和食の代表的なメニューでもある寿司や天ぷらは、外国人からも高い支持を得ています。
和食を提供する飲食店の多くは、ダイニングスタイルが一般的です。店内でくつろげるよう、畳を敷いた和の雰囲気漂う個室などを用意しているお店も少なくありません。また、ビュッフェや立ち飲み、テイクアウトなどの形式を採用しているお店もあります。
焼き肉
日本でも高い人気を誇る焼肉。和牛は世界的な知名度を誇る牛肉であり、海外からわざわざ和牛の焼き肉を食しに来る人も少なくありません。たしかな需要が期待できるため、業種の候補に加えてみましょう。
焼き肉店を開業しようとする人が多いのは、客単価の高さがひとつの理由です。肉だけでなく、ビールなどのアルコール飲料、ライスをはじめとしたサイドメニューも一緒に注文されることが多いため、客単価が高い傾向にあります。また、お客様が自ら肉を焼いて食べるスタイルの飲食店であるため、メイン食材の調理作業が不要であり、少ない人員で運営できるのも魅力です。
ほとんどの焼き肉店は、ダイニングや立ち飲み形式で運営されています。また、近年のコロナ禍に対応するため、テイクアウトやデリバリーに踏み切る焼き肉店も増えました。
エスニック料理
エスニック(Ethnic)は、「民族的な」を意味する英単語です。エスニック料理とは、特定の民族や地域などに伝わる料理を指しますが、一般的にはタイ、ベトナム、インドネシアなど、東南アジア料理を指すケースがほとんどです。最近は、広くインド料理、中南米料理、トルコなどの中近東料理もエスニック料理と呼ぶ傾向です。
エスニック料理は、さまざまな種類の香辛料を用いていることが多く、独特な香りや風味を楽しめます。日本にもすっかり定着しており、一定の需要も見込めます。
ダイニング形式で提供されるケースが多くを占めるものの、ビュッフェやバイキング形式で店舗運営しているお店も少なくありません。
洋食
洋食は、明治時代の初期から日本国内に広がり始めたと言われています。現在では食の欧米化が進み、洋食は我々の身近な存在となりました。オムライスにハンバーグ、ピラフ、エビフライなど、子どもから大人まで愛されるメニューが多く、国内では数多くの洋食店が営業しています。
日本人にもおなじみのメニューが多いため、たしかな需要があります。また、洋食とは言うものの、実際には海外ではなく日本で誕生した「洋食風の料理」も少なくありません。たとえば、洋食の代表格とも言えるエビフライは日本発祥の料理です。そのほかにもトンカツ、カレーライス、オムライス、コロッケ、カキフライなどが日本発祥です。近年では、こうした日本発祥の洋食に興味を抱く外国人観光客も増えています。
業態としてはダイニングやファストフード、カフェなどが一般的です。また、弁当や総菜などのテイクアウトやデリバリーに対応している洋食店も少なくありません。
飲食店で人気な業態の例
居酒屋
居酒屋は、気軽にお酒を楽しめる飲食店として人気があります。ビールや日本酒、焼酎、酎ハイといったアルコールメニューはもちろん、枝豆や冷奴、焼き鳥、唐揚げ、焼き魚、フライドポテトなど、酒のつまみに適したメニューを豊富に取りそろえている点が特徴です。
出店したい業態として、居酒屋は高い人気を誇ります。新型コロナウイルスが猛威を振るい、緊急事態宣言が発令されたときは、居酒屋をはじめとした多くの飲食店が時短営業を強いられました。ただ、現在では国の新型コロナウイルス対策も緩和されており、客足も戻りつつあります。出店したい業態として人気があるのは、今後客足が戻ると予測してのことではないかと考えられます。 居酒屋業態で成功率を高めるためには、従来の総合的なメニューの居酒屋形態よりも、天ぷら、魚料理、焼き鳥など一つの料理部門を拡大強化して専門性を高め、他の料理部門を少なくした居酒屋にすることも一案です。大型店や競合他店に負けない強さを発揮できる可能性があります。
ダイニング
ダイニングとは、食事場所を提供する営業スタイルです。たとえば、和食メニューがメインの定食屋やフレンチの高級ダイニングなどが挙げられます。提供しているメニューも店によって大きく異なり、洋食や和食、中華、カレー、すしなどあらゆる業種と組み合わせられます。
汎用性が高い業態ゆえに、業種と組み合わせて理想的な飲食店づくりを行える点が魅力です。限りなく低コストで和食を味わえる昔ながらの食堂や、デートで利用できる高級感漂うイタリアンダイニングなど、アイデア次第でさまざまなお店づくりが可能です。
カフェ
コーヒーをはじめとした、ドリンクメニューを提供するお店をカフェと呼びます。もともとは、コーヒーやコーヒー豆を意味する言葉でしたが、現在ではコーヒーなどを提供するお店がカフェと呼ばれるようになりました。
ドリンク以外にも、トーストやサンドイッチ、パスタなどの軽食を提供しているお店も少なくありません。規模が小さければ個人でも経営しやすく、雰囲気のよい隠れ家的なお店づくりも可能です。
また、さまざまな業種と組み合わせた営業が可能なのも人気の理由です。たとえば、マンガ喫茶やネットカフェ、和食カフェなどが挙げられます。
立ち飲み
店内に椅子を用意せず、お客様が立ったまま飲食するスタイルのお店です。カウンターだけを用意した、簡易かつ小規模な店舗が多く、仕事帰りなどに気軽に立ち寄れることから人気があります。
飲食店の業態として人気が高い理由は、回転率の高さです。立ったまま飲食するスタイルゆえに、長々と居座る人が少なく、それゆえにお客様が次々と入れ替わります。客単価が低くても、回転率が高ければトータルの売上はダイニング業態と同レベル程度が見込めます。
広い物件が必要ないのも魅力です。実際、立ち飲み専門店のなかには、カウンターだけを設置した簡易かつ狭小なお店が少なくありません。広い物件が不要であるため初期コストを抑えられ、月々の賃料も節約できます。
テイクアウト
料理をお客様に持ち帰ってもらう営業スタイルです。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い外食する人が減少し、多くの飲食店がテイクアウト事業へのりだしました。たとえば、夜しか営業していない居酒屋が昼間弁当を販売する、レストランが店内で提供しているメニューをテイクアウト対応する、といった具合です。店内売りだけよりも新たにテイクアウト窓口を設置することで、大きく売上を伸ばすことができます。
テイクアウト専門であれば、お客様を案内する座席やホールが不要であるため、最小限の設備で営業できます。また、案内できる客数に制限もないため、機会損失を回避できるのも魅力です。お客様に料理を持ち帰りしてもらうスタイルゆえに、新型コロナウイルスの影響を受けにくい業態なのも人気の理由です。
近年の飲食店の市場動向
飲食店の開業を検討しているのなら、近年における市場動向も把握しておきましょう。以下、5類に移行した新型コロナウイルスの感染拡大も踏まえつつ、代表的な業態の市場動向を解説します。
参考:一般社団法人 日本フードサービス協会「月次データ(2022年5月)」
ファストフード業態の動向
一般社団法人日本フードサービス協会が実施した「外食産業市場動向調査 2022年5月度結果報告」によれば、ファストフード業態の全体売り上げは105.7%となっており、比較的好調です。デリバリーやテイクアウトに舵を切った店舗も多く、新型コロナウイルスの影響を受けにくかったことがよい方向へ作用しました。
近年、ファストフード店ではオンライン予約サービスを導入する店舗も増えています。「食べログノート」なら、予約から顧客管理、自社メディア集客まで効率よく行えます。
食べログノート
ファミリーレストラン業態の動向
既出資料によれば、ファミリーレストラン業態の全体売り上げは136.7%と、数字だけを見ると大きな伸び率です。新型コロナウイルスの勢いが衰え、客足が戻りつつあるものの、コロナ禍前と比べると依然として低い水準にあります。
業種によって回復スピードも異なります。たとえば、洋風タイプの売り上げが129.1%なのに対し、和風タイプは146.7%、中華タイプは127%、焼き肉タイプが159.6%とばらつきがあります。
パブ・居酒屋業態の動向
既出資料によれば、パブ・居酒屋業態の全体売上は468.9%と、他業態に比べて圧倒的な数値をたたき出しています。これは新型コロナウイルスの感染拡大に伴い多くのお店が営業を自粛していた状態から、制限の解除とともに客足が戻り大幅な売上増につながったからだと考えられます。
これから売り上げが伸びる飲食店の特徴
コンセプトが明確
コンセプトが明確でないと、自店の魅力や強み、他店との違いなどをアピールしにくく、集客もうまくいきません。どこにでもある、似たり寄ったりなお店との印象も抱かれてしまいます。
先述したように、コンセプト設計には5W1Hや7W2Hのフレームワークが有効です。よりシンプルにコンセプト設計をしたい場合は、ターゲットは誰なのか(客層)、いつどのようなシーンで来店してほしいのか(立地や営業時間帯)、何を提供するのか(商品)の3つを軸にして考えてみましょう。
顧客ニーズに対応している
飲食店経営に限らず、ビジネスで成功するには顧客のニーズに対応しなくてはなりません。そのためには、お客様が何を求めているのか、真のニーズを探る必要があります。
消費者のニーズは多様化しているものの、昨今の状況を踏まえればニーズが見えてきます。新型コロナウイルスの感染リスクが以前に比べ低くなったとは言え、まだまだ油断はできない状況です。そのため、デリバリーやテイクアウトに対応しているお店はニーズに対応していると考えられます。
ほかにも、SNS映えしやすい料理を提供する、SDGsを意識して食品ロスをなくす取り組みをしている、といった飲食店の需要も高いと考えられます。また、多くの消費者は来店前にネットでお店の情報をリサーチするため、食べログなどにメニュー、店内の写真などを掲載しておくことも大切です。
食べログ店舗会員
IT技術を取り入れている
最新のIT技術を導入するのも、顧客ニーズへの対応に有効です。たとえば、電子決済サービスやPOSレジアプリなどの導入が挙げられます。消費者の利便性が向上するのはもちろん、飲食店側も業務効率化や生産性の向上、人件費の抑制などにつながるなどメリットがあります。
近年、注目を集めているのがスマホで利用できる非接触注文サービスです。お客様は、自身のスマホを用いて好きなタイミングで注文でき、待たされることもありません。飲食店側も、オーダーをとる必要がないため人手不足の解消や業務効率化につながります。
「食べログオーダー」は、まさに上記を実現できるサービスです。ブラッシュアップされた使いやすいUIに加え、飲食店が求める機能を充実させており、人手不足の解消や客単価、顧客満足度の向上などさまざまな効果が見込めます。
食べログオーダー
まとめ
飲食店には、和食や洋食、中華、イタリアンなどの業種があり、ファストフード、ダイニング、テイクアウトといった業態があります。業種や業態は今後の経営に大きく関わるため、コンセプトにマッチしたものを選び、事前に入念な市場調査も行いましょう。繁盛店になるにはお店のコンセプトを明確にしたうえで、顧客ニーズに対応する、IT技術を導入するなどの取り組みも必要です。
参考URL
【業種別まとめ】飲食店の業種・業態一覧と特徴を解説!|KitchenBASE
【完全版】飲食店の業種・業態一覧|Aumo Biz
飲食店の業種と業態の違いとは?|OTOMO(オトモ)
飲食店を開業するには?ステップごとの流れを解説|FoodsFridge
飲食店のコンセプト作り|飲食店.COM
飲食店を開業するには?12のステップを紹介|Square(スクエア)
飲食店スタッフとは|辻調グループ L'ÉCOLE
飲食業界の業態多様化に関する調査を実施|シンクロ・フード
飲食店の業態と業種の違いとは?|テンポスフードメディア
【保存版】飲食店のコンセプト設計のポイント|FoodsFridge
監修者:宇津宮 正博
プロフィール |
飲食店研究者、食業専門経営コンサルタント、飲食店の困ったを解決相談所大分代表者。29歳~40歳まで飲食店への食器販売を通じて飲食業界のあり方を独学で学ぶ 1989年に独立し、1989年~2023年の間に飲食店の開業店90店舗以上、経営改善支援 延べ3000店舗以上を33年間にわたり行う。 2023年には「成功する飲食店の値上げ戦略2023」を出版した。 |
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