飲食店の開業に伴う8つのリスクとその対策方法

飲食店の開業に際して、リスクを把握したいと考える方もおられるでしょう。元来、飲食店は閉業率が比較的高く、開業後すぐに閉業に追い込まれてしまうケースも多く見られます。飲食店開業におけるリスクを把握し、対策を立てておくことで、万が一の場合も影響を抑えられます。本記事では、飲食店の開業における8つの起こり得るリスクとその対策方法を解説します。

目次

飲食店の開業においてリスクの把握は不可欠

飲食店を開業するにあたり、起こり得るリスクを把握しておくことはとても重要です。飲食店は新規参入しやすい反面、開業して上手くいく確率はそう高くなく、開業後すぐ閉店に追いやられるお店も少なくありません。飲食店の経営が上手くいかなくなる背景には、あらゆるリスクの存在があります。その中には、金銭面や衛生面などの自店の営業に関わるリスクだけでなく、他店や市場が要因となるリスクもあります。

これから解説する飲食店の開業におけるリスクを把握しておくことで、それを意識した経営や対策ができ、リスクによる影響を抑えることも可能です。多くのハードルを乗り越えて開業したお店を閉業させないためにも、あらゆるリスクを把握した上で対策を立てておきましょう。

飲食店の開業における8つのリスクと対策方法

飲食店の開業におけるリスクは、自店の金銭面や衛生面に加え、競合店、市場に関わるものなど、多方面からのリスクが存在します。ここではそのリスクを8つにまとめ、対策方法を解説します。

金銭面のリスク

飲食店の開業には、多くの場面で費用がかかります。主に店舗取得費や外装・内装にかかる費用や設備費、備品費などの開業時の費用に加え、店舗の賃料や人件費、仕入費、水道光熱費、通信費、広告宣伝費などの運転資金などです。また、資金の借り入れをしている場合は、返済費用も考慮しなければなりません。あらゆる部分に費用がかかる状況の中、費用のかけ方や配分、資金繰りを上手くやらないと、一気に経営が悪化する恐れがあります。

開業時に自己資金の全てを使ってしまうと、開業後の資金繰りが苦労しますので、特に要注意です。開業後、すぐに売上が上がるとは限らず、最初の6ヶ月は集客に苦労する可能性が高いです。最低でも、6ヶ月分の運転資金を持っておきましょう。

人手不足のリスク

近年、少子高齢化に伴う労働人口の減少は飲食業界にも大きく影響しており、今後は人手の確保が課題になることが想定されます。飲食店が人手不足に陥ると、スタッフ一人ひとりの負担が大きくなり、サービス品質が低下する可能性があります。これは店舗経営に大きな影響を及ぼしかねません。

人手不足による経営悪化を防ぐには、労働環境や雇用環境の見直しが必要です。例えば、業務量の偏りをなくしたりスタッフの誰もが公平に休みを取りやすいシフトにしたりすることなどです。また、福利厚生の見直しも行いましょう。どうしても欠員が出てしまうような日は、単日アルバイトなどを募集できるサービスなどを活用して、人手不足でお客様に迷惑をかけないようにすることも大切です。

一方、人手不足をシステムでカバーすることも有効な方法です。モバイルオーダーシステムの「食べログオーダー」を導入すると、スタッフがホールに出てオーダーを取る必要がありません。こうした優れたシステムを積極的に取り入れれば、人手不足解消に貢献することでしょう。



原価変動のリスク

食材の原価高騰も、経営に関わる大きなリスクです。世界情勢や気候などによる不可抗力がもたらす事態は避けようがなく、対策を講じなければ利益に大きな影響を及ぼします。

原価変動によるリスクを最小限に抑えるには、仕入れ量や在庫の徹底した管理に加え、安価な食材に変更するなどの対策が考えられます。また、利益率を保つために価格および客単価を上げる取り組みも必要です。しかし、価格を上げるには、それ相応の満足感を得られるようにしなければなりません。様々な工夫を凝らしながら、マイナスイメージを与えないようにしましょう。

一方、仕入れ量や在庫の徹底した管理には、デジタル化も推し進めることが重要です。「食べログ仕入発注」を利用すれば、発注業務の効率化だけでなく在庫管理が簡単に行えます。



競合のリスク

競合店が多い、または今後増える可能性があることも飲食店経営の大きなリスクです。競合相手が多いと、顧客を取り合うことになり、利益を上げていくことも簡単ではありません。例えば近隣に同じジャンルの競合店舗がある場合、その店舗がすでに顧客を獲得していることも多く、新規参入は不利になるでしょう。

この場合、競合店を調査し、自店と比較・分析を行い、強みや独自性を伸ばす取り組みが必要です。加えて、集客力向上を図るためにも、多くのユーザーが利用するグルメサイト「食べログ店舗会員」として登録することもおすすめです。



病気・怪我のリスク

オーナーのみ、もしくは少人数で営業している場合、病気や怪我による離脱は影響が大きくなります。例えば、オーナーがひとりで調理を担当していた場合、オーナーが病気や怪我をすれば休業を余儀なくされるでしょう。飲食店は営業時間および日数により売上が伸びる「労働集約型」の業態です。休業が多い分損失も大きくなるため、経営に直結するリスクになります。

このリスクにおける対策として考えられるのは、休業リスクに備えた保険への加入です。休業中の賃料や固定費の支払いなどを賄える保険に加入しておくことで、突然の病気や怪我による閉店リスクを軽減できます。

火災のリスク

火や油を扱う飲食店において、極力気を付けるべきリスクが店舗火災です。火災が起きると、店舗だけでなくお客様にも被害が及ぶ恐れもあり、建物の所有者からは損害賠償請求を受ける可能性があります。

火災を起こさないためには、こまめな点検作業や防火管理者の専任、防火訓練、教育などを行うことが重要です。また、日ごろから清掃を隅々まで行うことで、ホコリによる火災も回避できます。加えて、加入する火災保険も万が一に備え内容をしっかり検討しておきましょう。

アレルギーのリスク

特定の食べ物により過敏な反応を起こす食物アレルギーは、飲食店経営を行う上で注意しなければならないリスクです。お客様によっては、突然呼吸困難や意識障害に陥るアナフィラキシーショックを起こしてしまう恐れもあります。また、そこまで重篤な症状でなくても発疹や嘔吐、下痢などもアレルギー症状として現れます。

食物アレルギーを起こしやすい食品として有名なものは、牛乳や鶏卵、小麦です。しかし、アレルギーを起こす可能性のある食品は他にも多く、食物アレルギーを持つ人は普段から細心の注意を払い食事をしなければなりません。食物アレルギーに対して飲食店側ができる対策は、メニューを構成する食品の情報提供やアレルギーに関する知識の習得です。スタッフ全員が正しい情報や知識を持つことで、お客様からの食品に関する質問などにも対応できます。お客様からの質問があった際に、「特定原材料」の7つについては一目でわかるような表が作ってあるとさらにいいでしょう。

食中毒のリスク

飲食店経営に大きな打撃を与えるのは、食中毒のリスクです。万が一、自店で食中毒を発生させてしまうと、社会的信用を失い閉店を余儀なくされる可能性があります。

食中毒を起こさないためには、食中毒防止の三原則である「付けない・増やさない・消滅させる」に加え、「持ち込まない」ということを意識して営業しなければなりません。調理器具を衛生的に保つことはもちろんのこと、温度管理や調理時間にも最大限の注意を払う必要があります。また、食品衛生管理者や責任者を専任し、食品衛生管理の徹底が必要です。一方で、万が一に備えて保険に加入しておくことも対策のひとつです。慰謝料や弁護士費用、和解費用の保障など、しっかりと内容を検討した上で加入しましょう。

まとめ

飲食店を開業し経営を安定させるためには、リスクの把握が必要不可欠です。飲食店の経営においては、自店の問題である金銭面や人手不足に加え、原価変動、競合店などの外的要因によるリスクもあります。また、病気や怪我による休業リスクや火災、食物アレルギー、食中毒など、最大限の注意を払う必要があるリスクも存在します。これらのあらゆるリスクにおける対策を立てておくことで、万が一の場合も影響を最小限に留められます。

参考URL

飲食店の開業にともなう7つのリスクを解説|知らずに開業すると危険|OTOMOmagazine
小さい飲食店を開業するために必要な準備・資金は?成功させるためのコツもご紹介|ペイサポ
飲食店を開業するの?覚悟がないならマジで辞めましょう。食品業界者が語る6つのリスク|食彩life
飲食店経営で資金繰りに困らないようにする運転資金確保のコツとは?|AIG損保
飲食店の開業にはどんなリスクがありますか?|飲食店M&Aサポート
飲食店の人手不足【原因や理由・コロナとの関係・人手不足の影響と解消法・業務効率化に欠かせないIoT】|SmartMatCloud
飲食店経営が難しい理由とは? 年収や失敗しないためのノウハウ、準備について解説|THE OWNER
飲食店向けモバイルオーダーで売上向上・人手不足解消を実現|食べログオーダー
深刻化する食材仕入れ価格の高騰。飲食店の原価率を上げないための対策は? |飲食店ドットコム ジャーナル
いつでも・どこでもスマホから発注業務が可能に!|食べログ仕入 発注
競合店が近くにできたら|CREATIVE DEVELOPMENT株式会社
体調不良による飲食店の閉店は誰でも起き得る。今からできる対策と万が一の対応は?|飲食店ドットコム 居抜き売却
飲食店に保険は必要?補償の種類別にみる注意点とメリットを紹介|R&CMAGAZINE
飲食店を開業するリスクと回避方法!成功のカギは集客にあり|飲食店なんでもスクエア
火災リスクの高い飲食店、防火のための安全管理を見直そう!|税理士法人タクト
これで安心!飲食店が必ず直面する3つのリスクとその対処法 |店サポ
飲食店の対応術 お客様とのコミュニケーションで共有すべき4つのこと|フーズチャネル
飲食店でのアレルギー事故を防ぐ ~あるアルバイトのヒヤリ・ハット事例と予防策~|株式会社CAN EAT
6月~9月に増加する食中毒。飲食店がするべき対策は? 厨房でできる予防策を紹介|飲食店ドットコム 厨房備品EC
飲食店で食中毒が発生した場合はどのような対応を取ればいいでしょうか?| 飲食店M&Aサポート

監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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