自宅で飲食店をやる! 開業するための準備や押さえておくポイントを解説

飲食店を開業する際にはテナントを借りることを前提に考えがちですが、「自宅で開業する」という選択肢もあります。コストやリスクを抑えて、比較的手軽に飲食店を始めたい人にとって、自宅開業は検討の価値がある方法です。本記事では、飲食店を自宅で開業するメリットとデメリット、開業のための準備の流れやポイントなどを解説します。

目次

自宅で飲食店を開業するメリット

店舗を購入したり借りたりするのに比べ、自宅で飲食店を開業することにはどのような利点があるのでしょうか。自宅開業の主なメリットについて解説します。

開業にかかる費用を抑えられる

自宅開業の大きなメリットは、開業にかかる費用を抑えられることです。飲食店の開業にはさまざまな初期投資が必要ですが、その中でも店舗物件の取得費用は大きなコストを要します。

たとえば、飲食店のテナントを賃貸契約する際の保証金は賃貸住宅の敷金よりも高く、10ヶ月程度が一般的な相場です。したがって、この保証金を支払うだけでも数百万円単位で資金が必要になります。月々の賃料も必要なので、ランニングコストも低くありません。土地や店舗を自前で購入する場合のコストの大きさは言うまでもないでしょう。

これに比べて、自宅で飲食店を開業する場合は、内装や外装のリフォームが必要になることもあるものの、テナントを借りるよりコストを安く抑えられます。自宅開業の場合は店舗スペース分の家賃を経費計上できるので、ランニングコストの面でも節約できます。

副業としてもスタートできるのでリスクを抑えられる

副業として始めやすいことも自宅開業の魅力的な点です。平日は会社などで働いている場合、飲食店をオープンできるのは休日や終業後の限られた時間のみになります。こうした場合、実店舗を持っていても、高いコストに見合うほどの採算を得るのは難しいでしょう。

自宅開業の場合は、先に説明したコスト面で優れているため、万が一失敗した場合のリスクも抑えられます。将来的に実店舗を持ちたい場合も、副業としてコストを抑えて自宅開業し、空き時間にコツコツと店舗経営のノウハウを積み重ねていけるメリットは一考の価値があるでしょう。

通勤に時間がかからないため余裕が生まれる

通勤に時間がかからないことも自宅開業のメリットです。自宅を店舗として活用する場合、通勤する必要がないため、時間面での余裕が生まれます。移動時間が減った分は、店舗経営に関する時間に充ててもいいですし、家事や趣味、休息などプライベートに充ててもいいでしょう。フレキシブルに時間を使いやすくなることは、心身両面でのストレス軽減につながります。

自宅で飲食店を開業するデメリット

上記のようなメリットがある一方で、自宅での飲食店経営には以下のデメリットもあります。

仕事とプライベートの時間を分けにくくなる

自宅経営の場合、職場とプライベート空間の境界が曖昧になることで、精神面でも公私の区切りをつけにくくなります。たとえば、翌日に持ち越せるようなちょっとしたことでも、自宅経営の場合はすぐに取り掛かれてしまうので、いつのまにかプライベート時間が圧迫されてしまうかもしれません。

また、店舗スペースと住居スペースの境界が曖昧な間取りの場合、お客様にプライベートな空間や姿を見られてしまう可能性もあります。特に公私の区別をしっかりつけたい人にとって、こういったことはストレスになるでしょう。たとえ自分は平気でも家族が気にする場合もあるので注意が必要です。

ご近所とトラブルを引き起こす可能性がある

ご近所トラブルが起きる可能性があるのも不安な点です。飲食店では大量の生ゴミなどが出るので、害虫問題などが付き物です。また、人の出入りが増えることによって、騒音や違法駐車などのトラブルが生じることも懸念されます。こうした問題は当然、近隣の住民にとって迷惑になるので、ご近所トラブルの原因になる可能性があります。自宅が住宅街に位置する場合は特に注意が必要です。

場所によっては集客に影響が出てしまう

場所によっては、集客に悪影響が出ることも考慮すべき点です。自宅が住宅街にある場合、飲食店を開業してもどこにお店があるのか分かりにくく、お客様が集まりにくい可能性があります。住宅街は駅や大通りから遠い場合も多い上、駐車場を用意するのも難しくなりがちなのでその不安はなおさらです。地元客以外の集客に関しては、WebやSNSなどを活用した方法に依存する部分が多くなるでしょう。

自宅で飲食店を開業する際に注意すべきポイント

自宅で飲食店を開業する際は、営業許可の取得といった公的な手続きも含め、いくつもの課題をクリアしていくことが必要です。そこで以下では、自宅開業に取り組む際の注意点を解説します。

営業許可を取得するための確認事項とは?

自宅で飲食店を開業するには、営業許可の取得が必要です。営業許可とは、食品衛生法に基づいて公衆衛生を守るために店舗の適正性を審査する制度で、取得するには保健所の施設検査などを受けなければなりません。

営業許可の審査をクリアするには、まず、自宅のある土地エリアについて建築基準法に基づいた用途地域を調べておくことが重要です。通常の飲食店なら基本的にはどこでも開業できますが、お酒を提供することがメインとなるような業態では制限がかかってしまう用途地域もあるので注意しなければなりません。また、店舗面積などに制限が存在する場合もあるため、自宅でどのような業態で開業できるかは、用途地域と面積の2つの要素で決まってきます。用途地域は国土交通省の資料や、各自治体に問い合わせることで調べられます。

また、施設基準にも注意が必要です。特に飲食店では、自宅にあるキッチンを店舗用キッチンとして使えないので、ひとつしかない場合は店舗用を増設しなくてはなりません。これには大きなコストがかかるので、自分のお店に必要な設備を明確にした上で必要費用を算出し、入念な資金計画を立てましょう。

さらに、飲食店の開業には、お店が自宅であるかどうかとは無関係に、「食品衛生責任者」の資格取得も欠かせません。また、店舗の収容人数が30人以上である場合は防災管理者の資格取得も必要です。

自宅での開業に必要な手続きをチェック

飲食店特有のもの以外にも、開業に必要な手続きはいくつもあります。自宅で飲食店を開業する場合は、個人事業主として「個人事業主の開業・廃業等届出書」、通称「開業届」を納税地の税務署に、「個人事業開始等申告書」を各都道府県税事務所に提出しなければなりません。これらの手続きは開業から1ヶ月以内に行う必要があるので、開業の準備段階から書類作成を行っておくことをおすすめします。

また、開業届と同時に、「青色申告承認申請書」を提出するのも重要です。青色申告とは簡単に言うと、確定申告において詳細な帳簿の提出を必要とする代わりに、さまざまな税制上のメリットを得られる制度です。たとえば、青色申告を活用すると最大65万円の青色申告特別控除を受けたり、「青色申告専従者給与」といって、配偶者などの家族を従業員として雇用した場合の給与を経費計上したりできます。

また、そのほかにも従業員を雇用する場合は労災保険関係書類、雇用保険関係書類、社会保険関係書類、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書など、さまざまな種類の書類提出が必要です。このように開業前には税関系など多くの手続きが必要となるため、抜けや漏れがないように事前に必要な申請手続きをリストアップしておきましょう。

開業後の確定申告についても知っておく

開業後の確定申告についても事前に把握しておくのが重要です。青色申告の場合、赤字を3年間繰り越せるので、たとえ初年度に利益が出ない場合も、確定申告はしっかり行うことをおすすめします。

飲食店においては仕入れや売上の計上など、お金の出入りが多くなるので、確定申告の時期に慌てることがないように普段から帳簿付けをしておくことが大切です。先述の通り、青色申告には詳細な帳簿付けが必要ですが、今ではスムーズに青色申告用の帳簿を作れる会計システムがインターネット上でも提供されているので、そうしたサービスを利用するのもよいでしょう。 特に、個人での自宅での店舗となると、「自家消費」などが混在してしまう可能性があるので、十分に注意してください。食材をお店で使ったのか、自宅で使ったのかを明確にしておくことが必要です。その他、水光熱費の案分なども同様です。

小規模で手堅く集客を成功させるには?

自宅での飲食店経営に成功するには、集客方法を工夫することが鍵になります。そこで以下では、飲食店の主な集客方法を紹介します。

飲食店の主な集客方法とは?

飲食店の集客に際しては、主に以下の方法が利用されるのが一般的です。

グルメサイトへの登録

「食べログ」などのグルメサイトに自店舗の情報を掲載する方法です。一定の利用料金はかかりますが、グルメサイトはお店選びの際に幅広い層のユーザーが閲覧するため、認知度拡大が見込めます。ユーザーからの評価が高くなれば、遠方からの集客も見込めるでしょう。

クーポン付きチラシの配布・ポスティング

店舗の周辺で割引クーポンをつけたチラシを配布したり、ポストに投函したりする方法です。特に開業時に近隣住民への認知度を高めるためには、こうしたアナログな方法も重要になります。

地域メディア・情報誌への掲載

地域密着型の情報誌などに店舗情報を掲載する方法です。広告料などが発生する可能性はありますが、地域情報に高い関心を持っている層にアピールできます。

ホームページ・SNSの運用

ホームページは自分で自由に情報発信するための優れた方法です。画像なども使ってメニューや店内の様子を魅力的に伝えられれば、近隣住民以外からの集客も見込めます。また、SNSで情報を定期的に発信することは既存顧客とのつながりを保つ上でも効果的です。

LINE@の活用

LINE@の活用も効果的な方法です。LINE@では登録した人にメッセージを配信できます。チラシやメニューなどに登録用のQRコードを付記したり、登録者用のサービスを用意したりして積極的に登録を促進しましょう。

リスティング広告

リスティング広告とは、特定のキーワードをWeb検索したユーザーに広告を表示する集客方法です。たとえば居酒屋を営業するなら、「自宅の地名+居酒屋」でキーワード設定することで、その地域で居酒屋を探している人をピンポイントで狙ってアピールできます。

おすすめは「グルメサイトへの登録」

上記のように、飲食店の集客方法はさまざまですが、特におすすめなのは「グルメサイトへの登録」です。グルメサイトには住所などの基本情報はもちろん、メニューや店内写真なども載せられるので、ホームページと同様の効果を得られます。特にお店の認知度が低い場合は、せっかくホームページを作ってもアクセス数が伸びにくいので、グルメサイトに掲載した方が多くの人の目に留まる可能性が高いでしょう。

また、グルメサイトには集客効果のほかにも、Web予約やクーポンの発行、アクセス解析など便利な機能があるのも魅力です。アクセス解析においては、グルメサイトを訪問したユーザーがどのようなことに興味を持っているのかなどを分析できます。その分析結果を活かせば、お客様のニーズに沿った新メニュー開発や雰囲気づくりがしやすくなるため、さらに集客アップが望めます。

まとめ

コストやリスクを抑えて飲食店を始めたい方にとって自宅開業は検討すべき選択肢のひとつです。とはいえ、自宅開業の場合、集客がネックになりやすいので、グルメサイトの登録やチラシの配布など、デジタルとアナログの両方を駆使して集客をしていくことが成功の鍵になります。

食べログは83万もの店舗が登録しているグルメサイトです。食べログではお店情報の掲載はもちろん、ネット予約やクーポンの発行、アクセス解析など、さまざまなことができます。食べログ店舗会員であれば無料のプランもあるので、まずはお気軽に登録してみてはいかがでしょうか。


参考URL

飲食店の開業資金の平均相場はいくら?内訳や融資についても解説│ワイマガ|Wiz cloud(ワイズクラウド)
自宅開業のやり方とは?個人事業主必見!おすすめの業種とメリット注意点を解説 | マネーフォワード クラウド会社設立
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監修者:原島純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。
また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。
2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。
また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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