キッチンカーを開業したい! 補助金や資金、資格などを解説

「キッチンカーを開業したいけれど何から手を付けていいのかわからない」といった方へ向けて、必要となる知識をまとめました。キッチンカーで開業するメリットや注意点、開業までに踏むべき5つのプロセスを解説します。開業した後の集客におすすめの方法も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

キッチンカーで開業するメリット

近年、キッチンカーは、さまざまな場所で見かけるようになりました。固定の店舗を持たずにキッチンカーで開業するのには、大きく3つのメリットがあります。ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

初期費用を抑えられる

飲食店を開業する際に固定の店舗を持つと、お客様が入って飲食するスペースや厨房、トイレなどを確保しなければなりません。キッチンカーであれば、必要な場所は厨房のみで済みます。そのため、外装や内装などの工事費用がほぼかからず、キッチンカーの改造費、厨房の工事費用だけで開業できます。基本的に、テーブルや椅子といった備品を用意することもないうえ、ホール担当のスタッフを雇わなくて済むため、開業にあたって初期費用の負担を減らせるのがメリットです。

家賃がかからない

固定の店舗を持とうとすると、まず物件取得費として、保証金として家賃10か月分ほどの費用が必要になります。さらに、開業するとお客様が来なくても固定費として家賃が発生します。立地や広さによっては、家賃が大きな負担となり経営を圧迫することもあるでしょう。一方、キッチンカーは、駐車場代やガソリン代、車両保険など、細々したコストが必要になるものの、固定店舗のように高額な家賃が不要なのは大きな特徴でしょう。固定費を減らせると、月々に必要となる運転資金の節約につながり、利益を増やしやすくなります。

好きな場所に出店できる

固定店舗を持つ飲食店の場合、お店のコンセプトや想定する客層などを基に、出店する場所を慎重に選ぶ必要があります。よく考えたうえで出店しても、実際に集客できるかは不明です。近隣に同様のライバル店が出店すれば、状況が大きく変わることもありえるでしょう。 その点、キッチンカーはお客様を待つスタイルではなく、集客できそうな場所を探し、自ら出向いて出店します。出店してみて、思ったように集客できないと感じれば、また別の場所を探して営業できることが大きなメリットです。

キッチンカーで開業するうえでの注意点

キッチンカーでの開業には、特に資金面でのメリットがあるものの、注意すべき点もあります。 固定の店舗を持った飲食店では、よりお客様が居心地よく過ごせるように店内のレイアウトを変更することも可能です。しかし、キッチンカーはもともとスペースが狭いため、一度決めたレイアウトを大幅に変更することは難しいでしょう。 また、出店場所を変えやすいのはメリットであると先に述べましたが、裏を返せば日々、出店する場所の確保が必要です。私有地はもちろん、公道など自由に営業できない場所も多いため、都度確認し自治体ごとに営業許可を得る必要が出てきます。 こうした申請作業は、慣れていないと難しく感じられるかもしれません。確認もれがあれば法令違反にもなりかねないため、細心の注意が必要です。

キッチンカーの開業5ステップ

キッチンカーで飲食店を開業しようと決めれば、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか。ここでは、開業までのプロセスを5つに分けて解説します。

ステップ1.キッチンカー開業の計画を立てる

まず、キッチンカーで開業するにあたって、経営的・営業的な視点で全体的な計画を立てることが重要です。たとえば、どのようなお店にしたいのか、どのようなお客様に来店してほしいのか、コンセプトを決めます。取り扱う料理、飲み物のジャンルやメニューを決めたら、開業までのスケジュールをどうするのかを大まかに決めるとよいでしょう。また、イニシャルコストやランニングコストなど、必要資金を試算し、調達方法も考えることが必要です。 キッチンカーは狭いスペースで営業するため、一人だけでも経営できるものの、人を雇うケースもあります。売上予測なども考え、人を雇うかどうかも検討して計画に盛り込んでいきます。

ステップ2.資金を調達する

次は、ステップ1で立てた計画を基にして、キッチンカーで開業するのに必要な資金を、実際に調達するフェーズに入ります。 目安として、約200万円から500万円とされているため、不足している分は借り入れなどを検討しましょう。ただ、国や地方自治体から補助金や助成金が制度化されていることもあります。うまく活用すれば、実質的な借入額を減らせるため、しっかりチェックしておくことが大切です。

ここでは代表的な補助金や助成金制度について、4つ紹介します。返還する必要はなく、条件に合致すれば早めに申請するのがおすすめです。

ただ、これらは執筆時点での情報のため、すでに終了している場合があります。申請時はあらかじめ申請先へ確認するようにしてください。

ものづくり補助金

「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」制度は、今後、中小企業や小規模事業者などが直面するであろう社会の変化(働き方改革や賃上げ、インボイス導入など)に対応できるよう、新しいサービス・試作品の開発、生産プロセス改善に向けた設備投資を支援する制度です。 いくつかの枠があり、キッチンカーの開業で使えるのは基本的に「通常枠(新製品・新サービス開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資及び試作開発を支援)」と考えてよいでしょう。従業員が5人以下なら補助の上限額は750万円で、補助率は中小企業で1/2、小規模事業者は2/3と定められています。

ものづくり補助金

地域雇用開発助成金

「地域雇用開発助成金」とは、雇用機会が特に不足している地域と定められたエリアの事業主が、事業所を設置・整備し、併せてその地域に居住する求職者を雇う場合、設置整備費用と対象労働者の増加数に応じて、1年ごとに最大3回、助成されるものです。 キッチンカーで飲食店を開業し、対象エリアでスタッフを雇用する場合は、こうした制度も利用できることがあるため、確認してみてください。

地域雇用開発助成金

小規模事業者持続化補助金

「小規模事業者持続化補助金」の「一般型」は、ものづくり補助金と同様に、さまざまな社会変化に対応するため、販路開拓等のための経費を一部支援してもらえる制度で、補助率2/3、上限50万円が補助されます。 一方、「低感染リスク型ビジネス枠」は、新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越え、対人接触機会を減らすビジネスへ転換しようと取り組んでいる事業者を支援する枠として、定期的に募集されています。補助上限100万円(補助率3/4)と一般型よりも高額で、キッチンカーの購入費用や改造するための内装、工事費用は経費にできることから、活用するとよいでしょう。

小規模事業者持続化補助金

事業再構築補助金

「事業再構築補助金」は、ポスト・コロナ時代を見据え、思い切った事業の転換や再構築に取り組む企業を支援する制度です。新規開業の場合は、2020年までに開業した人が対象です。いくつかの申請枠が設けられており、たとえば「通常枠」では、コロナ禍以前よりも一定の売上が減少していることや、展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編に取り組んでいること、支援機関と事業計画を策定することなどが条件となっています。 従業員の人数などの条件によって、100万円から受け取れるものの、キッチンカーの車両本体を購入するのには使えません。ただ、自家用車をキッチンカーに改造したり、厨房備品を購入したりする場合には適用されるため、おすすめです。

事業再構築補助金

各地方自治体の制度

ここまでは国の補助金や助成金制度について紹介しましたが、各地方自治体主導の補助制度が設けられていることもあります。 具体的な事例としては、東京都港区の「港区テイクアウト・デリバリー・通信販売導入商店街店舗応援事業補助金」などが挙げられます。これは、区内で事業を営む港区内商店会加盟の100店舗を対象に、テイクアウト・デリバリー・通信販売を実施する際の販売促進、設備・備品購入費、工事費、アドバイザー派遣費などを補助率2/3、最大40万円まで補助してもらえる制度です。条件をクリアできれば有効な制度でしょう。

港区テイクアウト・デリバリー・通信販売導入商店街店舗応援事業補助金

ステップ3.営業場所を確保する

さまざまな補助金や助成金制度も活用しながら資金調達できれば、次は、キッチンカーの営業場所を確保するフェーズです。基本的には、目星のついた営業場所へ連絡し、許可を得て確保する形になります。キッチンカーは移動するため、固定店舗よりも認知度を上げるのが難しい面もあります。そのため、営業場所は人が多く集まりやすいところを選ぶことが基本です。 現在では、出店したい場所を探せるキッチンカー出店マッチングサイトもあります。手数料などもかかりますが、こうしたサービスを利用するのも一つの手です。

ここでは、キッチンカーの主な営業場所として、3つ解説します。

スーパーの駐車場

スーパーなど商業施設は、特に平日のお昼前後や夕方に人の流れが多くなる傾向にあります。小腹が空いたときに食べられるようなメニューだと、喜ばれるかもしれません。出店料の目安としては、数千円から1万円ほどですが、店舗によって条件なども変わります。もし、気になるスーパーでキッチンカーを見たことがあれば、出店について直接問い合わせるとよいでしょう。

イベント会場

ここ数年はコロナ禍で減っていたお祭りや花火大会、野外フェスなどのイベント会場も、今後再開されればキッチンカーの魅力的な営業場所になります。「集客の多い、大きなイベントに出店しよう」と考えがちですが、他店も同様のことを考えるため、大規模イベントではおのずと競合店が増えがちです。逆にコンパクトな規模のイベントならそれほど集客はないものの、競合店は少ない可能性があります。戦略としてどちらを狙うのか、慎重な判断が必要です。 出店料はイベントの規模によって大きく異なるケースが多く、安ければ数千円、高ければ数万円かかることもあるため、主催者へ確認してみてください。

ビジネス街

ビジネス街では多くの会社員がランチに繰り出すため、その需要を狙って、オフィスビルの下にキッチンカーを出店するのもよい方法です。出店料は5千円前後、あるいは売上金額の15%程度が相場とされます。出店可能かどうかもふくめ、ビルのオーナーなどに問い合わせて交渉するとよいでしょう。

ステップ4.キッチンカーを入手する

営業場所の目星がついたら、移動販売をするためのキッチンカー本体を入手することも、もちろん必要です。しかし、営業しているキッチンカーは見たことがあっても、一般的な自動車販売店でキッチンカーを目にすることは基本的にありません。どうすれば入手できるのか、3つの方法を解説します。

購入する

キッチンカーを専門的に取り扱っている会社に問い合わせ購入する方法です。ただ、新車を購入するとなると、すでに移動販売について豊富な経験があったり、ある程度中長期的な収支計画が立てられていたりしなければ難しい選択肢かもしれません。 一方、中古車で品質のよいものを安く入手できれば、コストを抑えながら早めに利益を出していけるのでおすすめです。走行距離や搭載されている設備などによっても価格は大きく変わってきます。移動販売にくわしい専門家に話を聞いてアドバイスをもらったり、キッチンカーが販売されているWebサイトなどをチェックしたりして、知識を蓄えていくようにしましょう。

レンタルする

購入はハードルが高いと感じるなら、レンタルする方法もあります。水回りやガス回りの設備がすでに整っていれば、1から準備することがないため比較的すぐに開業できるのがメリットです。キッチンカーをレンタルしている会社と、基本料金にふくまれているものは何か、オプションには何があるのかをしっかり確認したうえで期間を決めて契約します。 短期でレンタルする場合は、1回あたり数万円が相場のため、月に数回程度の出店であれば手間賃もふくめ、レンタルする方が安く抑えられるかもしれません。

自車を改造する

もともとキッチンカーではない自家用車を改造して使う方法です。しかし、できるだけコストを抑えるために自分で改造することは、現実的ではありません。できれば実績豊富なキッチンカーの製作会社に委託し、作ってもらうのがおすすめです。会社を選ぶ際には、費用の妥当性を確認するために複数会社に相見積をとったり、不明点は質問して対応を確認したりすることが大切です。 現在では、タンクの大きさなどで提供できる料理なども決まります。事前に法令を確認のうえ、そうした事情にも精通した業者に依頼するとなおよいでしょう。

ステップ5.保健所から営業許可を取得する

飲食店を営む場合には、保健所からの許可をとる必要があります。もちろんキッチンカーも同様で、「飲食店営業」の許可を得なければなりません。「営業許可申請書」や「食品衛生責任者手帳」、「営業設備の配置図」など必要な書類を準備し、営業を行う地域の保健所へ提出します。施設(キッチンカー)完成後、保健所の担当者が施設基準を満たしているか検査を行います。不備があれば改善し、再検査を受け、問題がなければ許可がおります。 有効期限は5年間で、都度更新の手続きを行う必要があります。

自動車関係営業許可申請等の手引

キッチンカーの開業に必要な資格は「食品衛生責任者」

飲食物を提供するのに調理師免許が必要なのではないかと思われるかもしれませんが、調理師免許がなくても「食品衛生責任者」の資格さえあれば、キッチンカーの開業は可能です。逆に、調理師免許を持っていれば、わざわざ食品衛生責任者を取得する必要はありません。 食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会主催の講習会に1日参加するだけで、全国共通で基本的に有効期限がないため、開業前に一度だけ取得するものと考えてよいでしょう。

キッチンカーを開業したら行いたい集客

キッチンカーの開業を認知してもらい、集客するためには、さまざまな方法があります。 営業している場所周辺では、「OPEN」と書かれた看板やのぼりを立てたり、チラシを配布したりして知ってもらうことが重要です。キッチンカー自体が目立つように、ラッピングするのもよい方法です。 SNSを活用して広くアピールすれば、普段は周辺に来ないお客様も興味を示して来てくれるため、集客効果は大きく高まります。

グルメサイトの掲載もおすすめ

SNSでも集客効果は見込めるものの、グルメに興味を持ったユーザーが集まるグルメサイトに掲載すると、より大きな効果に期待できます。店舗情報の発信だけでなく、クーポンの発行やネット予約サービスを利用すれば、さらなる集客効果を見込めるでしょう。

「食べログ」では、「食べログ店舗会員」を募集しています。月間利用者数や掲載店舗数が日本最大級のグルメサイトであり、高い集客効果を期待できます。無料でこだわりの店舗ページを作成できるうえ、会員になれば正しい店舗情報への編集も可能です。クーポンや予約機能も利用できるので、ぜひキッチンカー開業の際には役立ててみてください。


まとめ

キッチンカーで開業したい場合、まずは計画を立てて全体の流れを認識したうえで、資金調達や営業場所の確保、キッチンカーの入手、営業許可取得など、多くのタスクが発生します。ただ、国や自治体からの補助金や助成金もあり、それほど高いハードルではありません。経験豊富な専門家のアドバイスをもらいながら、うまく集客ツールなども活用して、ぜひ憧れのキッチンカービジネスを成功させましょう。

参考URL

キッチンカーを開業するにはどうすれば良い? 必要な準備とアイテムをご紹介|スクエア・エキスプレス
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監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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