飲食店はキャンセル料を請求できる? 対策や請求方法を解説

予約しているにもかかわらず、連絡なしに来店しない無断キャンセルの被害に悩まされていませんか?キャンセルによって大きな損害を被らないためには、お店側での対策が必須です。本記事では、キャンセル問題への事前対策やキャンセル料の設定、キャンセル料の請求方法について解説します。

目次

飲食店が頭を抱えるキャンセル問題

予約のできる飲食店では、キャンセル問題は必ず生じる問題です。なかでも連絡なしに来店しない無断キャンセル(No Show)は、お店への損害が大きくなりやすいものです。まず本記事では、無断キャンセルが発生してしまう理由や、キャンセルによる店側への影響を詳しく解説します。

無断キャンセルが発生してしまう主な理由

無断キャンセルになってしまう理由には、以下のようなものが挙げられます。

  • 予約したことを忘れていた
  • とりあえず予約してキャンセルするのを忘れていた
  • キャンセルの連絡が面倒だった

最近では多くのお店でネット予約ができるシステムが導入されており、いつでもどこでも気軽に予約が可能になりました。しかしその反面、「来店できなくなった場合にキャンセルの手続きや連絡をしなければならない」という意識が薄れてしまっていると考えられます。

キャンセルによる損害や影響

無断キャンセルは飲食店の予約全体の1%弱を占める(※)と言われていますが、過去には数十人規模の無断キャンセルを行う悪質なケースもありました。No Showがお店に与える被害は大きく、決して無視できません。

予約がキャンセルされると、お店側は次のような損害を被ることになります。

  • 食材や人件費などコストの損害
  • 予約席が空席になることによる機会損失
  • 従業員のモチベーション低下

コース料理の予約がキャンセルされた場合、本来お店に入るはずだったコース料金がなくなるだけでなく、食材費や仕込みと予約客のために出勤した店員の人件費も無駄になります。また、無断キャンセルで来店の有無が不明なままである場合は、開店中、当該の予約席を確保し続けなくてはならないでしょう。

こうしたNo Showが繰り返されると、予約客のために頑張って準備したことが報われないため、従業員のモチベーション低下にもつながります。従業員が仕事にやる気を感じられない事態になると、普段の接客にも悪影響が及びかねません。

キャンセル料の請求が難しい実情

お客様が予約をキャンセルした場合、法律上は、お店側はキャンセル料を請求することが可能です。しかし実際は、予約時間直前でのドタキャンや無断キャンセルの場合、キャンセル料の請求は難しくなってしまいます。

キャンセル料の支払いにスムーズに応じてくれない場合、何度も連絡したり、交渉したり、ときには裁判に発展したりする恐れもあります。しかし、そうした対応には時間やお金や労力が必要になります。一般的な飲食店にとって、通常の営業を続けながら、キャンセル料の請求対応にコストを割くのは大きな負担を伴うでしょう。

また悪質なケースでは、予約時に偽名を用いていたり、嘘の個人情報で予約していたりすることもあります。その場合はキャンセルした予約者の特定が困難なため、キャンセル料の請求自体が難しいことも多いです。

飲食店の無断キャンセル問題への対策

先述のようにお店側へさまざまな損害・負担をもたらすNo Showを回避するためには、お店側で事前対策を講じておくことが重要です。具体的には次のような対策が考えられます。

予約客への通知・確認

まずは、予約確定時や予約前日・当日などについて、定期的にお店から連絡することです。また「予約者に対してメールで確認・通知を行い、それでも無断キャンセルが繰り返された場合は、当該人物からは予約を受け付けないようシステムを設定する」などの対策を採るお店も増えています。

ルールの策定と明記

予約のキャンセルに関してルールを定め、それを明記することも重要です。 こうした予約についてのルールを定めたものを「キャンセルポリシー」と呼びます。キャンセルポリシーには以下の項目を記載しましょう。

  • キャンセル可能な期間
  • キャンセル可能期間を過ぎた場合の対応
  • キャンセル料金
  • キャンセルの受付方法、連絡先

策定したキャンセルポリシーは予約サイトやホームページ、SNSなどに掲載します。キャンセルポリシーを広く・わかりやすく周知することで、キャンセル料が発生する前にキャンセルしてもらえるように促す方法です。

システムによる予防

コース料理や団体での予約の場合には、事前決済のシステムを活用するといった策も有効です。全額とまではいかずとも、「予約時にコース料金の一部や入場料として、一定額を前払い制にする」という対策も考えられます。この前払金はキャンセルした場合に返金しない旨を明示しておけば、よりキャンセルされにくくなるでしょう。また、万が一キャンセルされてしまった場合にも、一定額がお店に入ってくるので損失を抑える効果もあります。

さらに予約時に、氏名や連絡先などの個人情報を入力してもらうのも効果大です。お店から予約者に連絡できるだけでなく、詳細な個人情報の入力を求めることで予約者が無断キャンセルしにくい心理状態になります。

キャンセル料を保証するサービスの利用

予約サイトの中には、無断キャンセルが発生した際にお店に補償金を支払う「予約補償サービス」を提供しているところもあります。補償金によってお店の損失を抑える効果がありますが、補償の金額や補償を受けられる条件は予約サイトによって異なるため、確認が必要です。

「食べログ店舗会員」のネット予約無断キャンセル保証とは?

食べログでは、ネット予約無断キャンセル保証サービスを提供中です。これを利用すると、食べログのネット予約で生じた無断キャンセルについて、キャンセル料の請求に応じてもらえない場合、補償を受けられるようになります。


キャンセル料を請求するための条件

飲食店の予約は、成立した時点で法律上お店と予約者との間で契約が結ばれたことになります。そのため「予約者が契約を破って予約をキャンセルし、お店に損害を与えた」と判断されるなら、お店は予約者にキャンセル料の請求が可能です。

請求するキャンセル料の相場

キャンセル料を請求できるのはわかったけど、金額はどうやって決めたらいいのでしょうか。特に、請求額のことでトラブルになるのは避けたいと悩む経営者の方は少なくありません。キャンセル料の金額は、予約の内容やキャンセルのタイミングなど、状況に応じて決める必要があります。

キャンセルのパターンに応じた設定

予約をキャンセルされた場合、予約人数が少人数か大人数かでお店の損害は大きく変わります。特に数十人規模など大人数の予約の場合は、キャンセル料を請求するよう決めておいた方が安心ですね。

また、コース料理の予約を無断キャンセルされた場合は、全額をキャンセル料として請求できます。ただし、準備していた食材を他のお客様に提供する料理に使用した際は、その分が差し引かれることが多いです。 料理の予約はなく席だけを予約されていた場合も、キャンセル料を請求できます。その際請求できる金額は、一般に平均客単価の50~70%です。

キャンセルのタイミングに応じた設定

キャンセルが予約日に近いほど、食材の仕入れや準備の費用がかかるためお店の損害は大きくなります。これらを考慮しつつ、キャンセルされたタイミングに応じてキャンセル料を設定することが一般的です。

キャンセル料の相場は次の通りです。

  • 予約日の3日前まで:総額の0~30%
  • 予約日の前日まで:総額の30~50%
  • 予約日当日:総額の50%~全額(無断キャンセルも含む)

キャンセル料の請求方法

ここからは、実際にキャンセルされてしまった場合の請求方法について解説します。

電話やSMSで直接請求する

まずは、予約者にお店から直接連絡します。お客様がキャンセルポリシーを把握していない場合、交渉が難航する可能性もあるので、連絡する際には規定事項を再度説明するようにしましょう。万が一電話がつながらない場合は、電話番号がわかれば送れるSMS(ショートメッセージサービス)でメッセージを送信するのがおすすめです。

法的な手続きにより請求する

電話やSMSで連絡してもキャンセル料の支払いに応じてもらえない場合は、内容証明郵便を送って督促しましょう。 内容証明郵便とは、郵便の発送日や内容、相手が受け取った日にちなどを郵便局が証明するサービスで、予約のキャンセル料など、損害賠償請求の際にも使用可能です。たとえば「期日までにキャンセル料を支払わないと法的措置を取る」と明記するなどして、支払いを強く求めることもできるようになります。

まとめ

No Showに代表される予約キャンセル。予約の内容やキャンセルのタイミングによっては大きな損失になるため、飲食店にとって避けて通れない問題です。損害を抑えるためにも、事前の対策やキャンセルの予防を行い、お店を守ることが大切です。 キャンセルされてしまった場合もきちんとキャンセル料の請求をして、損害を最小限にとどめることを目指してください。万が一、請求に応じてもらえない際は、法的手続きを取ることも可能です。これらを踏まえて、無断キャンセルについてどう対応するのかをお客様側にわかりやすく示しておくことも重要です。

参考URL

飲食店の予約キャンセル料は請求できる?キャンセル料に対する考え方 |アキナイラボ
飲食店の予約キャンセル防止策~悪質な「無断キャンセル」を防ぐテクニックと発生後の対応策を紹介|ぐるなびPRO
No show(飲食店における無断キャンセル) 対策レポート|愛知県飲食生活衛生同業組合
飲食店がキャンセル料を請求する方法は?算定基準や注意点などを解説|SMSLINK
飲食店におけるキャンセル問題|弁護士法人フロンティア法律事務所
令和3年度 電子商取引に関する市場調査|経済産業省
キャンセル料金の請求に必要なキャンセルポリシーとは?書き方と例文、伝えるコツ|Square (スクエア)
居酒屋のキャンセル料の相場は?絶対払わなきゃいけないのか?|外食ハック
ショートメールとは?スマホでSMSを利用する方法や注意点などをわかりやすく解説|Y!mobile
内容証明郵便とは?書き方、出し方、効力、弁護士費用を解説|企業法務の法律相談サービス

監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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