飲食店で稼ぐための原価率とは? 計算方法から原価率を抑えるコツまで解説

飲食店の原価率は30%という基本数値みたいなものがありますが、飲食業界の取り巻く環境は年々変わってきています。この記事では、原価率の計算方法や経営していく際にどのようにこの数値をコントロールしていくのか、また、この原価率を抑えることによる効果や弊害についてもふれていきます。

目次

原価率の基礎知識を解説

飲食店の経営に携わっている人、これから開業しようとする人は、「飲食店の原価率は30%以内に収めるべきだ」というのを一度は聞いたことがあると思います。これは基本的な飲食店の収益モデルを頭に入れる上では基準となる数値ですが、この30%説は50年前から言われ続けている数値です。この定説を、現代の環境に併せて解釈し理解を深めていきます。

原価率の概要

飲食店における原価率の原価とは、食材などの材料費のことを指します。原価率は「食材の価格の比率」です。そして、この比率は何に対しての比率かというと「売上金額」ということです。つまり、正確にいうと原価率とは「売上金額に対する食材の金額の比率」のことを示しています。飲食店を経営していく際も、新規で開業する際も、この数値を細かに検討して常にコントロールしていきます。

原価率の計算方法

原価率は「売上金額に対する食材の金額の比率」です。これを大きく捉えてみると、1ヶ月間の売上金額が300万円の飲食店が90万円の食材費を使っていた場合の原価率は30%となります。

料理一品で捉えると、1000円のパスタランチの食材費が300円ならば、これも原価率30%となります。 原価率は基本的に「食材原価÷売値×100」で求められます。

注意しなければいけないのは、売上金額が税額込みの計算ならば、食材費も税額込みで条件をそろえて計算しなければいけない点です。 また、食材によっては仕入れた際の質量と実質的に使える質量が大きく変わります。例えば、1kg1000円で仕入れた魚の場合、捌いて骨と頭を除くことにより、実際に使える質量は1㎏よりも少なくなります。こういった食材を使用する場合、調理の際に100g使ったから原価が100円とは簡単に計算できません。歩留まりという考え方が必要で、その初期設定がずれると正確に計算できないことを把握しておくべきでしょう。

業種別の平均原価率

この飲食店の原価率は、お店の業態や営業スタイル、立地によっても大きく異なります。さらに多様化の進んだ近年では原価率の振り幅はかなり大きくなってきており、60%で成立することもあれば、10%に抑えているお店もあります。 原価率というものは、あくまでも他の経費とのバランスを考慮した上で決定されるべきです。業種別に平均の原価率をいくつか挙げますので、参考にしてください。

  • ラーメン 35%
  • 居酒屋  38%
  • 焼肉   35%
  • 喫茶店  25%
  • ファーストフード 35%
  • 日本料理 35%
  • 東洋・エスニック 25%

一部の業態ですが、このようになっています。

引用:飲食店の利益率って?経営に必要な原価率の考え方を解説!|renew

飲食店の適切な原価率とは?

飲食店の一般的な原価率は30%前後であると言われていますが、これはあくまでも基本となる数値であり、現在は業態やジャンルの多様化で一概には言えない状況にあります。よく模範とされる飲食店の経費の構成比率は以下のようになっています。

売上金額の全体を100と考えると

  • 原価30
  • 人件費30
  • 家賃10
  • その他の経費20
  • 利益10

このうち原価と人件費を合わせたものをFLコストといい、売り上げ金額に対するFLコストの比率をFL比率といいます。「FL」は「フード FOOD」の頭文字Fと人件費「ラバー LABOR」の頭文字Lをとったものです。このFL比率が60になるようにすることが飲食店の理想の収益モデルだと言われています。

しかしこの基準となる数値も数十年前に提案されたものであり、最近の人件費高騰や食材費の値上がり、円安の影響などによって、この理想の収益モデルのFL比率である60%に抑え込むことが非常に難しい状況になっています。これからは、このモデルにとらわれることなく柔軟に、総合的に経費の構成を考えていくことも必要です。

原価率の高い食べ物とはどんなものか?

飲食店において原価率をコントロールする上で、原価率が高くなりやすい食材と低く抑えることのできる食材を把握しておくことも重要です。

まず原価率の高い物として一番に挙げられるものは、そのままの状態で飲むことが多いアルコール類です。代表格となるのはビール、日本酒、ワインです。想像できるかと思いますが、薄めて飲まないアルコールは、ソーダ割りなどが可能なものに比べて、非常に原価率が高いものとなります。

また、焼肉店など希少部位となるものを取り扱う業種では、提供時にあまりにも高い価格設定だと注文しにくいこともあるので、価格を抑える傾向にあり、結果的に原価率が高い状態になることがよくあります。

また、原価率の高い商品はバックエンド(サービス品)としての役割もあり、集客するために割安商品として提供していることがあります。

原価率の低い食べ物とはどんなものか?

売上総利益の高い食材、原価率の低い商品としてよく挙げられるのは、「粉もの」と言われている「たこ焼き」「たい焼き」「お好み焼き」、そして麺類全般です。 近年では小麦粉の高騰や円安の進行もあり、以前と比べたら価格は上昇していますが、いまだに比較的原価率を抑えられる商品です。

そして、コロナショック以降、宴会の需要が減り飲酒量が減っている現在では、「ソフトドリンク」「スイーツ」「ノンアルコールドリンク」の3点のニーズが高まり、見直されています。

お酒を何杯も飲むのではなく、少し高級なソフトドリンクを飲み、スイーツを食べようと考える人は確実に増えています。 スイーツに関しては以前から原価率の低さに注目が集まっていましたが、アルコールの消費量が減っていく中でカフェメニューやデザートのニーズが増えている点に着目することで、このジャンルのラインアップを拡充して原価を下げることも狙えます。

また、焼き菓子をはじめとしたスイーツは材料が卵、牛乳、小麦粉といったものがメインであるため、やはり原価率を抑えられるメニューになります。

なおジャガイモ料理は、人気があるフライドポテトを筆頭に揚げる・煮る・焼くといったバリエーションが豊富な上に仕入れのパターンも多いことから、原価が安い料理を多数提供できます。

原価率が高くなる原因を考える

原価率が高くなる原因としては、商品の値段が適正ではない可能性があること、食材の管理や発注業務に問題があり廃棄が多く出てしまっていること、または食材の仕込み量が過剰なための商品が劣化し廃棄となることなどがあります。これらの点についてもう少し掘り下げてみましょう。

商品の値段が低い可能性がある

当然のことですが、食材の原価が商品の価格に対して割高だった場合は、原価率は必然的に高くなります。そこで単純に考えると商品の価格を上げることで原価率は下がることがわかります。

しかし、これはあくまでも飲食店側にとって都合がいいだけで、価格が上がった分、お客様の満足度を確実に失うことになります。 その点に充分注意して、お客様の離反につながらないように一部の価格を上げることも対策のひとつです。

廃棄につながる食品ロスが多い

お店の営業に必要だと思って仕入れた食材が、お客様の口に入らずに廃棄となってゴミ箱に捨てられる。これは最も無駄なことです。

1ヶ月間の原価率で検証していくと分かりやすく、毎日の営業を通して少しずつ蓄積される食品ロスの金額がはっきり現れます。当初の原価率の設定で計算された理論値よりも、実際に食材にかかった経費が大幅に多い場合は、どこかでロスが出ていることになるはずです。

これは、その店舗の食材の発注管理・在庫管理が徹底されていないことから発生する無駄な経費であり、まさに誰も得をしていないロスです。 これを改めることにより、大幅な原価率の抑制ができます。さらに、オーダーミスによる廃棄や普段ゴミ箱に当たり前のように捨てている食材について、再利用できないか検討することが原価率の低減には必要です。

オーバーポーションになっている

オーバーポーションとは、最適な量を超えて盛り付けをした料理を提供してしまうことをいいます。 お客様の食べ残しも原価率に大きく影響を与えます。毎日営業している中で、お客様の食事後に下げたお皿の状態を確認しているでしょうか?

いつも多すぎて残されているソースやたれ、毎回手をつけられていない付け合わせの野菜などを把握して、量の調整や差し替えをするだけでも原価率の大幅な改善になります。

原価率を抑えるコツとは?

原価率を抑えるためには、その店舗全体の食材管理のシステム化と情報の共有が最低限必要となります。これを徹底することによって原価率を抑えていきましょう。 また、アルバイトによる不規則な勤務がある店舗はスタッフの勤務交代が多いことも考え、必要な情報は明文化してマニュアルを作成し、個々の差が出ないようにすることも大事です。

食品ロスを減らす方法を実行する

食品ロスの大きな原因として挙げられるのが過剰な在庫のストックです。これは在庫の整理整頓ができておらず、食材の発注の際に在庫の数量をきちんと把握できないことが引き金となります。 まずは、在庫確認をスムーズにできるように環境を整え、先入れ先出しを徹底し、重複した発注が起きないようにすること、さらに在庫管理や発注管理のシステムやアプリも利用することを検討しましょう。

また、仕込み作業やお客様へ提供する際の盛り付け手順なども、誰が見てもわかるようにマニュアル化することによって作り間違えや分量間違いといったミスが減り、食材ロスを減らすことにつながります。

商品の価格設定を改める

これまで 原価を抑えることで原価率を下げることを考えてきましたが、その反対に商品の価格を上げることで原価率を下げることができる商品がないかをチェックするべきでしょう。

繰り返しますが、商品の価格を上げることは単純にその分お客様の満足度を下げることになるので、この料理だったら値上がりしても構わないというぐらいの、これまでの満足度が非常に高かった稀な商品に限ることを念頭に置いてください。近年は他の要因でも値上げをしなければならない状況だったため、慎重に判断するべきでしょう。

食材の管理方法を再確認する

それぞれの食材や調理済みの仕込みなどの消費期限はいつなのかを、改めて検証することは非常に大事な作業となります。日々の営業をしながらではなかなか時間を割けないかもしれませんが、品質保持が可能な日数をそれぞれ検証することが食材のロスを減らす第一歩になります。廃棄した日時と数量を徹底して記録するなど、データを取ることも重要です。

まとめ

改めて心得ていただきたいのは、なぜ原価率を抑えたいと考えるかということで、それは利益を残したいという目標があるからです。原価率を抑える一心でいろいろなことを進めて、売上や客数自体が減ってしまって利益が減っては何も意味がありません。

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参考URL

小規模飲食店各業態の平均利益率・原価率・人件費率を大公開 ~ カシオ独自統計より|CASIO HANJO TOWN

監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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