飲食店における売上管理とは? 目的や方法や必要な項目をわかりやすく解説

飲食店の経営において、売上管理は欠かせません。通常の営業に加えて日々の売上管理を行うのは大変ですが、店舗の経営において非常に重要な業務です。 本記事では、売上管理の概要とその目的、必要な項目、管理の方法まで、わかりやすく解説します。売上管理について詳しく知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。

目次

売上管理とは

売上管理とは、顧客名や商品名、数量、単価などの一日の売上に関するデータを記録する日常業務です。 記録には専用の販売管理システムやExcelなどの表計算ソフトを用いて作成します。日、週、月、年ごとに集計した売上管理表をもとに分析を行うことで、書き入れ時や来客数の少ない時間帯、曜日による来客数の変動などを把握できます。 こうして集計したデータをもとに将来的な繁閑を予測することで、業務の効率化や店舗の経営方針決定に役立てられます。目標の達成や収益向上のためにも、売上管理・分析を日々欠かさずに行うことが大切です。

店舗の営業に忙しい中で、売上管理などの事務作業にまでリソースを割くのは大変です。そこでおすすめなのが、食べログが提供する「食べログノート」です。 食べログネット予約を利用している店舗向けのオンライン予約台帳サービス「食べログノート」では、ネット予約をした顧客の情報が自動で登録されます。紙の台帳に比べて記帳の手間が少なく、電話予約や各種グルメ媒体のネット予約をまとめて管理できます。

顧客管理の手間を削減することで、売上管理に時間をかけられるようになるほか、得られた顧客情報は売上管理におけるデータ分析にも役立てられます。 このような情報管理に役立つサービスを活用すれば、より便利で快適な店舗経営が実現可能です。


売上管理を行う目的

売上管理は、現状を把握し経営に役立てるという目的で行います。実施する際にはただ漠然とデータを集めるのではなく、これらの目的を意識しましょう。

現状の把握

売上管理を行う目的の第一は、現状の店舗の状況を数値で把握することです。 売上のデータが曖昧では、目標の達成状況といった課題を定量的にとらえられず、数字やデータに基づいた根拠のある解決策を見つけにくくなってしまいます。 売上管理で売上・収益が増減する根本的な要因を突き詰めることで、現状の店舗の弱みや問題点が鮮明になります。これにより、勘や思い込みに頼らない、効果的な改善案・解決策を探ることが可能です。

管理したデータを経営に役立てる

第二に挙げられる目的は、店舗の経営に役立てることです。 たとえば、売上が減っているのにもかかわらず、それを知らないままでは、店舗の改善すべき点にも気づけず、手遅れになってしまいます。経営状況を理解していれば、売上の減少を早い段階で発見でき、余裕をもって対策できます。 また、売上が増えていて好調な時に、新しいことにチャレンジしたい場合もあるかもしれません。売上管理で得たデータは、そうしたチャンスとなる時期の把握にも役立ちます。

売上のデータや顧客情報を経営に役立てるためには、これらのデータを適切に分析する必要があります。以下では売上管理に活用できる2つの分析手法を紹介します。

RFM分析

RFM分析とは、「最終購入日(Recency)」「購入頻度(Frequency)」「購入金額(Monetary)」という3つの指標から顧客をグループに分け、購買行動を分析する手法です。 「最終購入日」では、収集したデータから、ある顧客が最後に購入した日を抽出します。購入日からの期間を5つ程度の段階に分けて評価を行います。 同じく、「購入頻度」はその顧客がこれまでに購入した回数を、「購入金額」は購入金額を抽出し、段階的に評価します。

このようなデータの抽出を多数行うことで、全体の割合から顧客数の多い組み合わせを分析し、売上の向上につながる顧客の傾向を発見できます。 たとえば「最終購入日」が近く「購入頻度」が低い層は新規顧客、「最終購入日」が遠く他2つが高い層は休眠顧客であることがわかります。分析結果に休眠顧客が多い場合には、競合する他店に顧客が奪われているといった状況が考えられます。この仮説をもとにして、従来の顧客を対象とした来店を促すキャンペーンを行うなどの施策を行えます。 また、施策の実施とともに定期的な分析を行うことで、ターゲット層の増減から施策の効果を測定できます。

ABC分析

ABC分析とは、売上高や粗利率、コスト、在庫などといった評価軸を決め、それに従って商品を3つにグループ分けする手法です。 売上高の構成比が全体の70%を占める商品群はAグループに該当します。品切れを起こさないよう常に準備しておくべき商品であり、看板商品として売り出したり、改良したりすることによってさらなる売上の向上が見込めます。

構成比が20%の商品群はBグループに該当します。Aグループ下位に近い売上のものであれば、工夫次第では改善が見込めます。 構成比が10%未満の商品群はCグループに当たり、見直しを必要とします。飲食店では潤沢な在庫を抱えていても廃棄につながる可能性が高いため、メニューの廃止も視野に入ります。

さらに、売上高から原価を差し引いた粗利から、売上高に対して占める割合である「粗利率」を計算すると、「人気があっても実は利益が出にくい商品」などを把握できます。 これらの分析結果から、メニューを表示する優先順位を改める、利益の出やすい商品の販売数を増やすといった施策を行えます。

売上管理を行うために必要な項目

以下では、売上管理を行うためには具体的にどのような項目が必要なのか、またそれぞれで注意すべき点について紹介します。

売上高

売上高とは、売上の総額を示します。一般的に、月ごとの売上高をまとめた売上高表から、月・年単位での売上目標との比較などに利用します。 総額だけでなく、販売日時や購入者の顧客情報、商品ごとの売上などを記録しておくことで前述のような分析に役立てられます。

売上目標・目標の達成状況

売上目標は、今後の計画や施策を検討するための指標として設定します。月、年、半期、四半期といった時期ごとに分け、過去の実績をもとに決定しましょう。たとえば、冷たい飲料などを主に扱う店舗では、冬季は閑散期を迎えることが予想されます。そのため、常に繁忙期と同様の数値を設定していると、現実的でない目標となる可能性があります。

また、日々の売上高から達成率を算出し、進捗を確認します。新メニューのヒットといった想定外の要因で、達成率と目標が大きくかけ離れた場合には、適宜目標を再設定しましょう。 努力すれば手の届きそうな目標を掲げることで、従業員のモチベーション向上が見込めます。

売上目標や達成状況を従業員に周知するためには、現状の売上と目標を比較しやすいよう、グラフなどにして掲示しておくことが大切です。

売上の前月・前年比

前月・前年との売上を比較することで、経営計画や施策の効果を測定できます。 もし以前と比較して売上が大きく減少しているといった場合には、施策の取りやめなど早急な対応が必要です。一方、事前の予想に近い売上の向上が確認できた場合には、同様の仮説に基づいた戦略の強化などに踏み切る指針となります。

ただし、事業内容の大きな変化や組織改編があった場合には、施策に関係がない理由で増減が起こっている可能性があります。また、特需と言っていいような突発的なニーズが発生した場合にも、同じような需要が継続するとは限らないため、注意が必要です。

原価

原価とは、商品の仕入れ値です。飲食店においては、原材料費・食材費を指します。 原価は売上高と直接的な関係はないものの、把握しておくことで経営状況を詳細に知る手掛かりになります。 まず、売上から原価を引くと、粗利を求められます。さらに人件費などの固定費を引けば店舗の営業における利益を算出できます。

これにより、たとえば原価が高く利益が伸びていない状況では、売上が上がっていても、経営的には苦しい状況にあることがわかります。 特に食材類の原価は取引先や社会情勢、天候などに左右されやすいため、市況にあわせて対策が必要です。原価と売上の双方を押さえておくことで、仕入れ先を変更する際の判断材料になるなど、対策に役立てられます。

売上管理の方法

上述のように、売上管理では単一の数字だけでなく、さまざまなデータを扱います。手書きでは手間が大きく、比較・分析のための計算も困難です。 ExcelやPOSレジ、売上管理システムなど、売上管理に向いたツールを利用して効率的に実施しましょう。ここからはそれぞれのツールの特徴について紹介します。

Excelで管理する

もっとも手軽に売上管理を始める方法としてはExcelなどの表計算ソフトが挙げられます。 個人経営など、小規模のデータであれば低コストで最低限の機能を備えたExcelでも管理できます。無料のGoogleスプレッドシートなど、他の表計算ソフトでも代替可能です。

入力フォームを自身で作成し、計算式を組み立てるには手間がかかりますが、インターネット上に売上管理のテンプレートが無料で公開されています。ダウンロードすれば、各項目を入力するだけで自動的に粗利・利益などを計算できるため、慣れていない人でもすぐに集計作業に取り掛かれます。 追加項目などのカスタマイズができる柔軟性の高さもメリットです。一方で、多くのデータを扱う複数店舗での管理では手間がかかりやすく、カスタマイズによっては他の人が操作しにくくなるといったデメリットもあります。

POSレジを導入する

POSとは、Point of Sales(販売時点情報管理)の略です。 POSシステムを搭載したレジを用いることで、販売した商品と数量、取引時刻などの販売情報をリアルタイムで記録・集計できます。

これにより、単純な売上だけでなく、分析に役立つ顧客の傾向といったデータを集められます。データは自動で入力されるため、収集の手間を大きく削減でき、ネットワーク経由で連携すれば複数店舗でのデータの集計・分析も行いやすいといったメリットがあります。

POSシステム内でデータ分析ができるものの、基本的に分析対象はPOSで記録したものに限られるため、その他の方法で収集したデータと組み合わせた分析をPOSの機能だけで行うことはできません。POSシステムからCSVファイルを出力して、Excelなどのツールにインポートすることでデータを取り出せますが、この場合、Excelでの管理と同様に手間がかかります。

飲食店向けのものでは、バーコードリーダーのないタブレット向けのPOSレジもあります。表計算ソフトに比べて導入・維持に費用はかかりますが、小規模向けの安価なサービスも提供されています。

売上管理システムを導入する

売上管理システムは、仕入れ管理や損益管理、店舗の従業員の勤怠管理など、飲食店経営に関するあらゆるデータをまとめて管理するためのツールです。

ExcelやPOSレジでの管理方法に比べて高い導入コストがかかる傾向ですが、その分メリットもあります。 システム次第では、注文用の端末やPOSレジのデータをリアルタイムで反映し、入力されたさまざまな項目を連動してデータを更新できます。売上の集計・分析の自動化もできるため、売上管理にかかる手間の削減に役立ちます。

また、整理されたデータがシステムやクラウド上に蓄積されるため、データが溜まっていくにつれて管理の手間が膨大化する心配はありません。 売上管理システムの導入は、多少のコストをかけてでも、業務の効率化を図りたい場合におすすめです。

まとめ

店舗の経営状況を正確に把握したり、分析して経営方針の決定に役立てたりするために、売上管理は必須です。 売上管理を行っていないと、課題に対する適切な解決策が見つけられず、問題発見が遅れることで対策が間に合わなくなるといったリスクがあります。

日々の業務に加えて売上管理もしなくてはならないのは大変な面もありますが、専用のシステムやサービスを導入すれば、人件費削減や業務の効率化を図れます。 具体的な方法としては、Excel、POSレジ、売上管理システムを導入する方法があります。 それぞれの店舗に合った管理方法を選択し、効率的な売上管理とデータの活用を進めましょう。

参考URL

売上管理の業務内容と目的とは?|ディータイド
飲食店の売上管理|目的や方法、おすすめのシステムまで徹底解説 | アキナイラボ
飲食店の売上管理方法4選!経理担当者が覚えておきたい帳簿付けのポイントも|Food's Route Magazine
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監修者:丸山 理

プロフィール

行政書士丸山理事務所 代表 行政書士・顧客心理士・銀行融資診断士 1997年10月より横浜市内飲食店勤務、店長としてアルバイト100名を率い、年商3億円を達成。2011年10月からは東京都内居酒屋チェーン勤務し、店舗開発・店舗マネジメントに従事。2018年12月、行政書士丸山理事務所開業独立開業以来、数多くの飲食店顧問として業務に従事。事業再構築補助金・小規模事業者持続化補助金・神奈川県ビジネスモデル転換事業費補助金等採択実績多数。

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