【飲食店】損益計算書(P/L)の作り方! 経営に活かして利益改善

損益計算書(P/L)は、飲食店の経営に必須の書類です。この記事では、損益計算書の利益の見方や詳しい種類(売上総利益、営業利益、経常利益など)について解説します。飲食店が損益計算書を使って利益改善を行う方法にも触れるので、飲食店経営者はぜひ参考にしてください。

目次

損益計算書(P/L)とは

損益計算書とは、事業の経営成績を示す書類のことです。一定期間における収益、費用、利益などを一覧にすることで、経営状態の現状を明確に表します。この資料により決算時の利益が可視化されるため、「何に対して費用を使ったのか」「どれだけ売上がアップしたのか」などについて把握しやすくなります。また、変動費と固定費とを分別し「損益分岐点(黒字と赤字を分けるライン)」を算出することなども、よりスムーズに行えるようになります。

損益計算書は、上記のように経営の効率化に寄与することに加え、確定申告の際にも利用する資料です。したがって飲食店経営者を含め、ほとんどの事業者が必ず作成することになります。なお英語では「Profit and Loss Statement」と表現されるため、「P/L」とも呼ばれています。

損益計算書(P/L)の必要性

飲食店経営では、損益計算書(P/L)により自店舗の経営状態を客観的に把握することで、今後の課題点を見つけたり改善策を立てたりしやすくなります。たとえば「今後の売上増加・減少を予測し、取り組むべき対策を考案する」といった活用方法が代表的です。

加えて損益計算書(P/L)は、さまざまな機関への提出が義務づけられています。たとえば確定申告の際は、1年間の所得金額を計算するために、損益計算書を税務署へ提出しなければなりません。融資を申し込む際も、金融機関から提出を求められます。

損益計算書(P/L)における利益の見方

損益計算書(P/L)を見ると、一定期間における事業の利益が理解できます。ここでは、損益計算書の利益の見方や、注目すべき5種類の利益について詳しく解説します。一般に飲食業では、売上総利益と営業利益を重要視する傾向が強いため、特にこの2つはよく理解しておきましょう。

売上総利益

まずは、「売上総利益」で、「いくら利益が出たか」を表します。これは「売上高 - 売上原価」で算出され、別名「粗利(あらり)」とも呼ばれており、経営状態を判断するためのもっとも重要な基準です。もしこの数字が小さい場合は、原価に対してメニューの金額が安すぎるか、原価をかけすぎており、経営が成り立たない恐れがあります。

さらにこの「売上総利益」を「売上高」で割ることで、売上総利益率を出せます。 つまり 売上総利益率(%)= 売上総利益 ÷ 売上高 × 100です。こ の率が約60%〜70%の範囲にある飲食店では、一般的に良好な経営状態が維持できていると読み取ることができます。

営業利益

2つ目は、「営業利益」で「営業活動によって、利益をどれほど得られたか」を表します。計算式は、「売上総利益 - 販売費および一般管理費」です。 収益力が高い事業だと評価されるには、この営業利益を伸ばさなければなりません。なお、式内の「販売費および一般管理費」は、広告費、家賃、人件費、交際費、通信費などを指す言葉です。つまり売上総利益がある程度あるのに営業利益が上がらない場合は、人件費や広告宣伝費などにコストをかけすぎているのではないかと考察することができます。

経常利益

3つ目は「経常利益」です。「営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用」で計算し、本業以外の利益も合わせ「事業全体でいくら利益が出たか」を求めます。また営業外収益と営業外費用は「営業外損益」と呼ばれ、たとえば資産運用で得た利息・配当金や、借入金による支払利息などが含まれます。

税引前当期純利益

四つ目は、「税引前当期純利益」です。「経常利益 + 特別利益 - 特別損失」で計算し、該当する期の税金を支払う前の利益を指します。特別利益と特別損失には、証券・株や固定資産を売却した際に得る損益や、自然災害などによる損失が含まれています。つまり、一時的・勃発的に発生した損益を反映させた利益のことです。ちなみに、特別利益と特別損失の金額によって、金融機関による評価が変わることはほぼありません。

当期純利益

最後は、「当期純利益」です。「税引前当期純利益-法人税(等)」で計算し、税金が引かれた後の利益を表します。企業において、最終的に判断される純粋な利益です。この数字によって、その期は黒字(プラス)なのか赤字(マイナス)なのかが示されます。

飲食店が損益計算書(P/L)を活かして利益改善するには?

損益計算書を適切に活かすことで、飲食店の利益を上げることが可能です。それには以下のポイントを押さえ、損益計算書を活用することが重要です。

損益分岐点売上高を明らかにする

まず、「損益分岐点売上高」を明確にしましょう。「損益分岐点売上高」とは、黒字と赤字の境界線となる売上高のことです。この金額よりも高い売上を記録すれば、その分利益が出ます。損益分岐が起きる金額ラインが可視化されれば、今後の目標やアクション内容をスムーズに設定・実施し、利益改善へつながります。

なお、「固定費 ÷{1 -(変動費÷売上高)}」という計算で、上記の金額ラインとなる具体的な数値を得られます。変動費とは、繁忙期の人件費や食材費など、売上に連動する各費用のことです。 特に金額の確定しづらいアルバイトスタッフを雇用している店舗は、この点を把握することが重要となります。

FL比率を確認する

次に紹介する方法は、「FL比率」を確認することです。FLとは「Food cost(食材費)」と「Labor cost(人件費)」の頭文字を取った言葉であり、「FL比率」は「売上高に対する、原価と人件費の比率」を指します。 (原価 + 人件費)÷ 売上高 × 100の計算式を使うと、明確な数値を算出可能です。

一般的な目安としては、60%以内(食材費が30%以内、人件費が30%以内)に保つことが理想です。したがってこの基準をオーバーしそうなら、ビジネスとして成立しづらいと考えられます。しかし、近年の人手不足や円安の影響でこの60%以内という数値目標はかなり難しいものになっており、店舗の省人化を目指すためのDX化がさらに必要となってきます。

人件費の削減には「食べログ」がおすすめ

人件費のコスト削減を行う場合は、「食べログ」が運営する飲食店支援サービスを利用すると効果的です。主なサービスを以下にご紹介します。

  • 「食べログオーダー」
  • 「食べログオーダー」は、オーダー業務を効率化するサービスです。QRコードを読み取ってもらうことで、お客様自身のスマートフォンからメニューを注文できるようにします。オペレーションの簡略化や、セット・トッピングなどのオーダー増加を実現可能です。


  • 「食べログネット予約」
  • 「食べログネット予約」を導入すれば、予約業務をよりスムーズに行えます。お客様が自分自身で予約可能な日時に、ネット上で予約を入れられるため、忙しい営業中に店舗側が電話を受ける必要がありません。


  • 「食べログ仕入れ」
  • 「食べログ仕入れ」は、受発注業務を効率化するサービスです。スマートフォンを使って普段の仕入れ先に発注をかけられるため、発注時間を削減できます。店舗運営に必要な業務が減ることで、人件費の大幅なカットが可能です。


営業利益率を出す

「営業利益率」を出し、利益改善を実施する前の現状把握に利用することもおすすめします。「営業利益率」とは、売上高のうち営業利益が占める割合を示した数値のことです。「売上高営業利益率」が正式名称であり、「営業利益 ÷ 売上高 × 100」の計算式で求められます。一般的に、10%を超えている店舗は、収益性が高いと判断可能です。

損益計算書(P/L)の作成方法

損益計算書(P/L)を作成する方法には、さまざまな種類が存在します。ここでは、損益計算書の具体的な作成方法を3つ取り上げます。

手書きで作成する

まず手書きで作成する方法です。ノートや用紙に記入し、自分で帳簿を作成します。高額な費用はかかりませんが、簿記の知識が必要であるうえに、作成に時間や手間がかかることが懸念点です。帳簿の保管場所に困る場合や、誤って廃棄してしまう危険性もあります。

Excelを使って作成する

次に、Excelを使う方法です。Excel上で規定のフォーマットを作り、内容を記入していきます。ほとんどのパソコンにはExcelがすでにインストールされているため、初期費用をかける必要がないことや、フォーマットを用意すれば計算を簡略化できることがメリットです。ただし、一定以上の簿記の知識とExcelのスキルが求められます。

会計ソフトを活用して作成する

最後に、会計ソフトを活用する方法です。現在、さまざまな会社から、税務関係業務をサポートする会計ソフトがリリースされています。ソフトに数字を入れるだけで誰でも書類を作成可能なため、専門スタッフがいない現場にも最適です。作業を自動化できるところも特徴的であり、POSレジの仕訳などを大きく時短できます。

初期費用やランニングコストはかかりますが、導入が済めば、業務に必要な手間を大幅にカット可能になります。飲食店経営者を含め、多くの事業者に会計ソフトの利用はおすすめです。

まとめ

飲食店の経営において、損益計算書(P/L)は非常に重要視されています。損益計算書には、事業の経営成績が示されているので、現在の経営状況を把握したうえで、今後の対策を練ることに活用可能です。損益分岐点売上高を明らかにしたり、FL比率を確認したりすることで、利益改善を狙いましょう。 書類の作成方法にはさまざまな種類がありますが、おすすめは会計ソフトを使う方法です。簿記の専門知識がなくてもスムーズに業務が行えるため、多くの飲食店経営者に愛用されています。 本記事を参考に、損益計算書を的確に作成・活用し、理想的な店舗運営実現へつなげてみてください。

参考URL

【損益計算書(P/L)】飲食店の損益計算書の書き方と活用方法を解説! │REDISH
飲食店の損益計算書|見方・活かし方・作り方を解説!【無料エクセルテンプレート】│飲食店なんでもスクエア
飲食店の損益計算書の見方、作り方を例から解説 | クラウド会計ソフト マネーフォワード
飲食店の損益計算書(P/L)はどう見る?運営への活かし方と作り方を解説│Food’s Route Magazine
損益計算書(PL)の見方とは?5つの利益の読み解き方 | ビジドラ~起業家の経営をサポート~
PL管理とは? 飲食店経営に欠かせないPL(損益計算書)の作り方、BSとの違いも
個人事業主の青色申告決算書とは(収支内訳書との違い)|freee税理士検索
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監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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