【飲食店】インバウンド集客の施策10選を紹介!

新型コロナウイルスの水際対策も緩和が進み、インバウンドも意識した経済活動に取り組めるようになりました。訪日外国人観光客の飲食費は日本に滞在中の支出第3位になっており、外国人観光客は飲食店にとって重要なターゲットです。この記事では、インバウンド集客が重要視される理由や集客方法10選を紹介します。

目次

飲食店がインバウンド集客を行うべき3つの理由

「入ってくる」という意味を持つ英単語の「インバウンド(inbound)」は、日本では主に外国人観光客を指す際に用いられます。日本は長引く少子化問題により人口が減少傾向にあるため、日本人だけをターゲットにしたビジネスでは大きな経済成長が見込めません。「爆買い」に代表されるように外国人観光客の購買欲求は経済効果が高いため、インバウンドを対象にした集客が注目されています。

さらに以下の3つの理由が加わり、インバウンド集客の重要性は高まっています。

一人当たりの消費金額が増えている

観光庁が公開した「訪日外国人消費動向調査(2022年10-12月期)」によると、訪日外国人一人当たりの旅行支出額は21万2,000円で、コロナ禍前の2019年同期より24.5%増えています。

外国人観光客の消費を項目別にみると、宿泊費が最も高く7万1,349円です。続いて買物代が6万2,565円、飲食費は4万6,223円となっています。東京オリンピックで外国人観光客が増えることを見込んでいたホテルや旅館業界は、新型コロナウイルスの感染拡大によって大打撃を受けました。飲食店も営業自粛や営業時間の短縮で経営が厳しい時期がありましたが、インバウンド需要が高いため積極的に集客に取り組むことで経営の回復を図れます。

今後さらにインバウンド客が増える見込みである

日本では2022年10月から外国人の新規入国制限が見直され、パッケージツアーに限定して個人旅行が解禁されました。また、2023年5月8日から新型コロナウイルスが5類感染症に引き下げられ、日本に入国する際にワクチン接種証明や出国前検査証明書の提示が不要になります。

こうした入国規制の緩和に加え、外国為替市場で円安が加速した影響もあり、今後さらにインバウンド客が増えると見込まれています。円安では外国人観光客が日本でお得に飲食や買い物などをできるため、おのずと消費額の伸びに期待できます。インバウンド客が増え、消費額も伸びれば、飲食店は新型コロナウイルスの影響で厳しかった経営を改善できます。せっかくの商機を逃さないためにも対応が必要です。

海外ビジネスに繋がることも

外国人観光客が日本に滞在している間だけではなく帰国後にもビジネスチャンスがあることも、インバウンド集客が重要な理由のひとつです。日本に旅行で訪れた際に食べたものが気に入れば、帰国後も取り寄せて利用するなど海外の販路拡大につながる可能性があります。旅行先の経験はSNSに画像や感想を投稿するケースも少なくありません。観光に訪れた外国人だけではなく、その外国人が投稿した情報をきっかけに別の人が顧客になる場合もあります。

飲食店が取り組むべきインバウンド集客方法10選

飲食店に焦点を当て、インバウンド集客に有用な方法10選を紹介します。

ポータルサイトに登録する

訪日観光客向けのポータルサイトに登録すると、掲載した店舗情報から集客が見込めます。ポータルサイトは複数の店舗や施設などを比較して閲覧できるため、外国人観光客が旅行先で飲食店や観光地を探す際に有用なツールです。後述する口コミ投稿の機能があるサイトであれば、来店した外国人観光客の心をつかみ良い口コミが広がると、より大きな集客につながる可能性があります。

訪日観光客向けのポータルサイトは多言語に対応しているケースが多く、日本の観光スポットのほかに食文化やマナー、飲食店情報などが掲載されています。さまざまな観光情報が掲載されたポータルサイトのほかに、地域に特化したタイプ、グルメに特化したタイプなどがあります。

中国の「大衆点評」と連携した食べログ

月間利用者数9,487万人以上の「食べログ」は日本最大級のグルメサイトです。2019年に中国のライフサービスオンライン検索プラットフォーム「大衆点評」と提携し、インバウンド集客にも力を入れているため、外国人観光客の集客に取り組む飲食店にとっては有用なツールとなっています。

「食べログ」は店舗会員の登録は無料なので、インバウンド集客にあたり、どのポータルサイトに登録すれば良いのかわからない飲食店におすすめです。


SNSでお店の情報を発信する

現代社会では行動に移す前にインターネットで検索することが当たり前になっており、海外に旅行に行く際にはスマートフォンが必須です。情報収集にInstagramやFacebookなどのSNSを活用するケースが多く、SNSはお店にとって無視できない集客媒体となっています。お店のアカウントを作成して店舗情報を発信すればインバウンド集客に繋がります。

スマートフォンやブラウザのアプリケーションを利用すれば、手間と労力がかからず日本語を外国語に翻訳できるため、インバウンド集客に取り組む際にはSNS上で多言語の情報を発信しましょう。ただし、翻訳アプリによっては不自然な外国語に翻訳されてしまう場合があるため、ネイティブや翻訳会社を利用するなどの工夫も必要です。

海外旅行客向けにHPを作る

ポータルサイトやSNSの情報から飲食店のHPにアクセスし、HPの情報をもとに来店してくれるケースも少なくありません。飲食店ではお店のHPがすでにあるケースは多いですが、大抵が日本人向けにつくられているため、外国人にはお店の魅力が伝わりきらない可能性があります。外国人が利用しやすいデザインやサイト設計を意識した、海外旅行客向けのHPを用意しましょう。特にアクセス情報は、土地勘もなく、看板が読めないことを想定して丁寧に作り込む必要があります。

Googleマップに投稿する

Googleマップには、「近くの居酒屋」や「近くのカフェ」と検索すると、周辺の店舗情報を表示する機能があります。地図アプリを開いたまま店舗情報が収集でき、そのままルートの表示ができるためインバウンド集客に有用なツールです。メニューやコロナ対策状況は最新の情報に更新しましょう。

口コミを書いてもらう

口コミは世界共通の有用な集客ツールです。ただ口コミが広まるのを待つのは効果が出にくいので、Googleマップに簡単にアクセスできるようにQRコードを店内に掲示するなど、口コミが広まるのをサポートする施策が必要です。

良い口コミが多いほど、検索サイトに上位表示されるなどして利用者の目に留まりやすくなります。そのため外国人観光客に限らず、日本人の来店客にも口コミの投稿を促す仕組みをつくり、ポータルサイトやGoogleマップに多くの口コミが寄せられるようにしましょう。

また、口コミには良い内容ばかりではなく、悪い内容もあります。すべての口コミが高評価だとステルスマーケティングだと判断されかねないので、神経質になる必要はありません。改善点を提示してもらえたと捉え、経営に活用しましょう。

日本ならではの体験を提供する

訪日外国人観光客にとって、買い物やレジャーだけでなく日本の食文化や日本でしか味わえない体験も楽しみのひとつです。日本ならではの食といえば、和食やてんぷら、寿司が代表格ですが、うどんや日本食として定着したラーメンなども外国人観光客に人気があります。世界で評価される日本の接客に和装を加えたり、和のテイストを強調したメニューを開発したりするなど、「日本に旅行に来た」と実感できるような仕掛けを用意しましょう。忘れられない思い出になり、リピーターの獲得にも繋がります。

メニューや看板を多言語対応にする

店舗の外から見て日本語の情報しかない場合は、外国人観光客にとってハードルが高く、利用を断念する可能性があります。外国人観光客が利用しやすいと感じるように、入店前に見る看板や入り口近くに掲示するメニューは多言語で表記しましょう。特に世界共通語の英語や使用人口が多い中国語の表示は必須です。

パンフレットなどの印刷物で差し替えが難しいケースでは、読み取ると多言語メニューが表示されるQRコードを席に設置すると外国人観光客もスムーズにメニューを選べます。

食べ方の解説が必要な場合は、イラストや写真を使うと理解しやすくなります。トイレや車いす対応などの意味をシンプルな形状で伝えるピクトグラムは外国人観光客にも分かりやすく情報を伝えられるツールです。アレルギーや宗教上の禁忌などで食べられない食材があるかを伝えるための食品ピクトグラムもあるため、メニュー作成などに役立てましょう。

無料Wi-Fiを設置する

海外の先進国では無料のWi-Fiエリアが充実していますが、日本はWi-Fiエリアが限られていたり、登録が必要だったりすることが課題となっています。そのため、看板や店頭に「FREE Wi-Fi」と掲示すると外国人観光客の集客が見込めます。

外国人観光客の通信手段としてプリペイドSIMカードやモバイルWi-Fiルーターがありますが、データ量の制限がある場合や、通信料が高額になる場合があるため、インバウンド集客に取り組むなら無料Wi-Fiの設置は有用です。

ベジタリアン向けメニューを用意する

海外にはベジタリアンが多いため、野菜のみを使ったメニュー展開もインバウンド集客には効果的です。ただしベジタリアンと一口に言っても、完全菜食主義者の「ビーガン」、卵や乳製品は食べる「ラクト・オボ・ベジタリアン」、乳製品は食べない一方で卵は食べる「オボ・ベジタリアン」などさまざまな種類があります。メニュー開発に取り組むなら違いを正確に把握しておく必要があります。

また、戒律によって食べられる食材を細かく定められているイスラム教徒に「ハラルフード」を提供する場合には「ハラル認証」の取得が推奨されます。取得の難易度は高いですが、世界で2番目に人口の多い宗教なので、インバウンドにより配慮するなら理解しておきたい食文化です。

音声翻訳ツールを使う

来店した外国人観光客が日本語を話せず、従業員も外国語に不安がある場合には、コミュニケーションをとれて注文ミスも防止できる音声翻訳ツールが有用です。スマートフォンにインストールするだけで簡単に利用できる音声翻訳や、多言語対応のモバイルオーダーシステムがあるため、インバウンド集客に取り組む際には導入を推奨します。

特にモバイルオーダーシステムは多言語対応に加え、後述するキャッシュレス決済機能を搭載したタイプもあり、飲食店経営をサポートするツールです。

キャッシュレス決済サービスを導入する

海外は日本よりキャッシュレス決済の普及率が高くなっています。経済産業省によると、日本のキャッシュレス決済比率は2020年時点で29.7%です。最もキャッシュレス決済比率の高い韓国の94.7%や、続く中国の77.3%とは大きな開きがあります。

外国人観光客は現金支払いだけではなく多様な決済手段を希望することが多いため、店側も幅広いキャッシュレス決済に対応することが望ましくあります。

インバウンド集客をする際のポイント

「ファン化」と「コンセプト」が、インバウンド集客のポイントです。

施策を組み合わせてファンになってもらう

紹介したインバウンド集客の方法10選のうち、ひとつだけで完結する万能な方法はありません。そのため、店舗の特徴やターゲットの属性に適した複数の施策を組み合わせましょう。日本の「おもてなし」にも通じ、飲食店のファンになってもらえる可能性があります。

たとえば出汁や素材本来の味を重視する和食の技法でベジタリアン向けのメニューを開発したり、日本の伝統的な食文化である豆腐を作る段階から体験してもらったりと、さまざまな施策の組み合わせが考えられます。

「どんな客に来て欲しいか」をしっかりイメージする

外国人観光客といっても国や宗教、年代などによって食の好みや期待する体験は異なります。店舗のコンセプトが定まらず、「どんな客に来て欲しいのか」がイメージできていなければ、やみくもにインバウンド集客に取り組んでも手間と時間がかかるだけで結果が出ません。

どの国からの観光客を対象にするのか、性別や年齢層、グループの構成など、できるだけ具体的にターゲットを定めることが大切です。

まとめ

日本の人口減少が止まらないなか、海外からの観光客の消費は経済成長に欠かせません。円安が続き、入国条件が緩和されたことも、インバウンド集客の重要性を高めました。インバウンド集客に取り組む際には紹介した10の方法が有用ですが、ひとつだけで完結する万能な施策はありません。飲食店のコンセプトや業態に適した施策を複数組み合わせて、ライバル店との差別化を図ったインバウンド集客方法を講じましょう。

参考URL

インバウンド集客とは?|外国人観光客の集客方法7選をご紹介 | マネケル
飲食店が実施すべきインバウンド対策は?成功のポイントと施策を解説|TableCheckブログ
水際対策|厚生労働省|日本政府
外国為替相場チャート表 | 三菱UFJ銀行
「インバウンド集客」成功のための3つのポイントとは? | 海外進出ノウハウ | Digima〜出島〜
近年注目のインバウンド集客とは?成功させるための12のポイントを解説|aumo
飲食店のインバウンド集客法5選と成功事例のご紹介 | レストランスター
【飲食店のインバウンドにおすすめ!】外国人が利用するポータルサイト6選 | 飲食店集客情報メディア「リライト マガジン」
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監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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