飲食店での労働時間の決まりは? 長時間労働や法令違反を防ぐ方法とは

飲食店では、長時間労働による法令違反など、労働時間に関するトラブルが少なくありません。そこでこの記事では、飲食店での労働時間に関する法律やルールをまとめました。さらに飲食店の労働時間が長くなりやすい理由や長時間労働を防ぐための方法についても解説します。

目次

飲食店の平均労働時間が長い原因

飲食店は平均労働時間がほかの業種と比べると長いと言われています。では、なぜ飲食店では労働時間が長くなってしまうのでしょうか。主な原因として以下の2点が考えられます。

慢性的な人手不足である

国内最大級の企業情報データベースである帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員が「不足」と感じている企業が51.4%に対して業種別にみると飲食店は61.3%と高く、非正社員にいたっては全体の人手不足割合が30.7%に対し、飲食店は85.2%と高水準でした。これは飲食店がほかの業種に比べてパートやアルバイトなどの非正社員を多く雇う特徴があり、飲食店の人手不足が深刻であることがわかります。

また、厚生労働省が公表した「令和2年度 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書」によると、外食産業の店舗従業員の長時間労働・所定外労働が必要となる理由として「仕事の繁閑の差が大きいため」の割合が 26.1%で最も高く、次いで「人員が不足しているため」が 18.6%でした。

このようなデータからわかるように飲食業界では慢性的な人手不足が続いており、店舗従業員1人あたりの労働時間が長くなってしまうことが考えられます。
参考:株式会社帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」
参考:厚生労働省「令和2年度 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業 報告書」p170

営業時間が長い

飲食店では、集客をできるだけ増やすために営業時間が長い傾向にあります。また、従業員はお店を開けている時間(営業時間)だけ働くわけではなく、開店前の準備や閉店後の片付けなどもあるため、稼働時間はさらに長くなります。このように飲食店は実質の労働時間が長く、とくに正社員は開店前や閉店後にシフト調整や売上管理などの仕事をすることが多いため、長時間労働につながりやすいです。さらに、アルバイトやパートといった非正規雇用の従業員が急に休んでしまった場合、正社員が対応しなければならないことも多いため、労働が長時間になる傾向にあります。

しかし、日本では労働基準法によって適正な労働時間が明確に定められています。そのため、経営者は従業員の労働時間が労働基準法違反にならないよう注意しなければなりません。

覚えておくべき飲食店での労働時間の決まり

経営する飲食店で労働時間にまつわるトラブルが発生しないためにも、経営者は法定労働時間や休憩時間など、労働時間に関する法律や決まりごとについて理解しておく必要があります。

法定労働時間は1日8時間・週40時間

労働時間の上限は労働基準法によって定められており、原則1日8時間・週40時間と決まっています。ただし、特例として「特例措置対象事業場」とされる一部の事業場については、1日8時間・週44時間の労働が認められており、常時10人未満の労働者(アルバイトなども含む)を使用する飲食店では、この特例が適用されるため、週44時間まで働かせたとしても法的に問題ありません。しかし、この特例は18歳未満の従業員には適用されないため注意が必要です。

飲食店での休憩時間と休日の決まり

休憩時間も労働基準法によって、労働時間が6時間以上を超える場合は45分以上、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を与えなければならない、と定められています。 また、休日についても週1日もしくは4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない、と労働基準法で定められています。 たとえば、休憩時間の電話対応や来客対応などは業務にみなされ、労働基準法に違反する可能性があるため、十分な留意が必要です。

変形労働時間制なら労働時間の調整が可能

飲食店はその立地や天候などによって集客にばらつきがあります。そこで飲食店を含む一部の業種では「変形労働時間制」という働き方が認められています。この制度をうまく使えば、労働時間を年単位、月単位、週単位の3パターンで調整でき、混雑するコアタイムに対応しやすくなります。

たとえば、1カ月単位の変形労働時間制の場合、1週目30時間、2週目50時間、3週目30時間、4週目50時間と40時間を超える週があったとしても、1週間の平均労働時間が法定労働時間(原則40時間)を超えていなければ問題ありません。ただし、変形労働時間制を採用する場合には、労使協定もしくは就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署に労使協定を届け出なければなりません。

法定労働時間を超過すると残業代の支給が必要

労働時間が1日8時間または週40時間(もしくは44時間)を超えた場合は、その従業員に対し、残業代を支給する必要があります。時間外労働に対する割増賃金は、通常賃金の25%以上です。 なお、ここでの「残業」は法律上の時間外労働であり、一般的な会社が定めている「所定労働時間」、いわゆる定時以降の残業ではありません。つまり、所定労働時間の残業を超えたとしても法定労働時間を超えていなければ残業代は発生しません。

飲食店での長時間労働・法令違反を防ぐ方法

経営する飲食店で法律に違反するような働き方があっては、社会的な信頼を失いかねません。ここでは、長時間労度・法令違反を防ぐための5つの方法を紹介します。

方法1. 労働時間のルールを知る

前述のように法定労働時間は労働基準法で定められています。しかし、その法律やルールを経営者が熟知していないと、知らず知らずのうちに従業員を苦しめ、法令違反などのトラブルに発展する可能性があります。 したがって、経営者は正しいルールの中で従業員の労働管理ができるように、労働時間に関する法律やルールの理解が必要です。また、従業員も同様に労働に関する法律やルールを知っておくことで、長時間労働による離職や経営者とのトラブルを回避できます。

方法2. 人員を補充する

飲食店では人手不足が原因で残業が慢性化している店舗も多いため、人員を補充することで長時間労働が防げます。また。必要な人員が確保できれば、人手不足による業務過多が原因での離職率低下にも貢献します。必要な人員は、お店の客席やテーブル数、営業時間などを考慮し、長時間労働なしで営業できる人数を算出しましょう。

方法3. 従業員教育や評価制度を変える

飲食店の仕事は覚えることが多く大変です。それにもかかわらず、仕事を教えてもらえない、研修制度が整っておらず放置されるなど、職場が働きやすい環境でないと正社員、非正社員に関係なく、すぐに辞めてしまうおそれがあります。そのため、従来の従業員教育や評価制度を変え、働きやすい環境に整えることも離職率を抑え、人手不足による長時間労働の解消につながります。

たとえば、未経験者でもわかるような業務マニュアルを用意し、自分の仕事に対して深く理解してもらえるような環境を整えましょう。このとき、長時間労働をしないために労働に関する決まりごとやルールについても教育しましょう。また、評価制度も明確にし、期待以上の成果を上げた従業員には、それに応じた高評価を与え、報酬に反映させるのも効果的です。

このような教育制度・評価制度の充実は、人材の流出防止に貢献でき、仕事の質も高めてくれます。

方法4. 営業時間を見直す

長時間労働や法令違反を防ぐ方法としては、営業時間を見直すことも有効です。飲食店はレストランならランチとディナー、カフェや喫茶店ならランチからディナーの合間、居酒屋やバーなら夜がピークタイムと言われています。しかし、必ずしも他店舗と足並みをそろえて営業する必要はありません。営業時間を見直し、効果的に集客できる時間を狙って営業すれば、長時間労働を防ぎつつ、利益を最大化させることも可能です。

方法としては現在の営業時間を1時間ごとに区切ってまず来客数を調べましょう。そして赤字になっている曜日と時間帯、利益の多い曜日と時間帯を可視化し、営業時間を見直します。

方法5. 業務の見直しを行う

飲食店で長時間労働をなくしたいなら、従来のやり方から脱却することも大切です。とくに業務を見直し改善することは、人手不足による長時間労働の解消につながり、生産性向上も期待できます。

飲食店の業務で見直しするべきポイントは以下の4つです。

まず、提供しているメニューの調理工程や提供方法を見直し、効率化に取り組むことが重要です。とくにランチタイムなどの来店者が集中する時間帯のメニューは、調理工程が少なく、調理時間が短いメニューに変更するとよいでしょう。また、メニュー数が多すぎると仕込みに時間がかかり、長時間労働の原因になります。そこで人気のないメニューを減らし、仕込みの量を抑えましょう。このとき、キッチンの作業動線も見直し、食材や調理道具の置き場所や調理スペースなどを使いやすいように改善します。

次に、フロアオペレーションを見直し、接客マニュアルを整備しましょう。未経験者でもわかりやすい接客マニュアルを作成するのはもちろんのこと、新メニューの情報やマニュアル変更があった場合に従業員全員がすぐに共有できるシステムを構築することが大切です。

さらに設備を見直すことも有効です。たとえば、食洗機や乾燥機、ロボット掃除機など、業務負担を減らすのに効果的な電化製品の導入を検討してみましょう。導入によって業務負担が減り、現状の従業員数だけでも業務をこなせる可能性があります。

そして予約管理システムの見直しも欠かせません。従来の電話予約の場合、従業員が予約内容を聞き取り、予約台帳へ記帳しますが、この際、聞き間違えや記帳ミスなどが発生すると予約漏れやダブルブッキングなどのトラブルに発展することが多く、実は電話予約は従業員にとって負担の大きい業務です。そこでグルメサイトなどと連携している飲食店向け予約管理システムを導入することにより、従業員の作業負担を軽減でき、人件費削減にも貢献できます。

業務改善を行うなら「食べログネット予約」&「食べログオーダー」

飲食店向け予約管理システムを導入して業務改善を行うなら「食べログネット予約」と「食べログオーダー」がおすすめです。

「食べログ」は多くのユーザーが利用している日本最大級の規模を誇るグルメサイトで、「食べログネット予約」は食べログの店舗情報からダイレクトにオンライン予約できるサービスです。そのため、従業員の負担軽減に貢献でき、さらに食べログユーザーの目にとまりやすく、いつでもどこからでも予約ができるサービスのため、機会損失を最小限に抑えられます。

食べログネット予約

一方の「食べログオーダー」は、お客様のスマホでメニューの閲覧や注文ができるモバイルオーダーシステムです。従業員は注文受付に手間がかからず、注文ミスも防げます。 また、「食べログオーダー」はPOSレジやスマレジと簡単に連携でき、セルフ会計にも対応しているため、会計時のレジ負担を省け、円滑な店舗経営が期待できます。
食べログオーダー

まとめ

飲食店は慢性的な人手不足と営業時間が長いことから、従業員が長時間労働になりがちです。そのため、経営者は法律で定められた労働時間などを正しく理解し、無理な労働で従業員から訴えられることのないよう注意しなければなりません。 また、長時間労働や法令違反を防ぐために、人員を補充する、教育制度や評価制度を整える、営業時間を見直すなどの取り組みも必要です。とくに調理工程の工夫や接客マニュアルの作成、設備やツールの導入など、従来の業務を見直し改善することは、長時間労働や法令違反を防ぐだけでなく、生産性を上げる効果が期待でき、売上拡大につながります。

参考URL

飲食業界の勤務時間ってどうなの?|フードサービス成功の教科書
働き方改革関連法について|厚生労働省
労働時間制度について|厚生労働省
労働時間・休日・休暇について|連合
飲食店の労働時間について解説|FoodsRoute
飲食店における労働時間の管理方法について|freee ヘルプセンター
飲食店での休憩時間は何分?法律で定められている?|アディーレ法律事務所
労働時間の割増賃金(残業代)について|連合
労働時間・休日・休暇について|厚生労働省
人手不足で変わる飲食業界の働き方|フーズチャネル
労働時間制度の基本と飲食店での実務対応|ナレビ by マイナビ
飲食店での残業時間の扱いと法律|弁護士ドットコム
飲食店における労働時間管理のポイントとは?|労働問題のプロ解決コラム
飲食店における労務管理の重要性|さくら中央総研
飲食店の人手不足はなぜ起こる?対策を解説|ジョブメドレー
残業時間の上限と罰則について解説|ベリーベスト法律事務所
Q&A:労働時間関係|厚生労働省
飲食店の労働時間管理と注意点|SHIFOP(シフォップ)
労働基準法における残業時間の限度とは?|アディーレ法律事務所
飲食業界の人手不足を乗り越えるには?|FoodsRoute
飲食業界のアルバイト人手不足の現状と解決法|ネオキャリア
飲食業界の採用難と離職率対策|HR NOTE
飲食店の新人スタッフ研修のポイント|なんでも酒やカクヤス
アルバイトの退職理由ランキングと防止策|飲食店.COM
飲食店の労務管理とは?人手不足解消のポイント|カシオ店舗ソリューション
飲食店の営業時間と労働時間の関係とは?|開店ポータル
飲食店のスタッフが辞める理由と対策|飲食店.COM
人手不足時代に飲食店が取るべき対応とは?|iPad Solution Lab
飲食業界における人手不足の現状と対策|日清オイリオ フードサービス業務用サイト
人材定着率を高める飲食店の取り組みとは?|飲食店.COM Kitchenマガジン
飲食店のユニフォームが離職率に与える影響とは?|THS-白衣NET
飲食店の働き方改革|スタッフ満足度向上の工夫|HataLuck
飲食店の洗い場・食器洗浄業務の効率化とは?|開店ポータル
飲食店の業務効率化アイデア集|Foodist Media
飲食店の店舗運営を効率よく行うために|HataLuck
飲食店の予約管理システム比較と導入ポイント|iPad Solution Lab

監修者:太田 とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL https://toyoshiki-ohta.com

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