焼肉屋を開業したい! 必要な準備や手続きとは? 成功のコツも解説
焼肉屋では無煙ロースターや吸煙設備の設置が各テーブルに必要となる分、通常の飲食店よりも多くの開業資金がかかります。本記事では、焼肉屋の開業に必要な初期費用をはじめ、準備や手続きの流れ、繁盛させるポイントなどについて解説します。
目次
焼肉屋の開業にかかる費用の目安
この章では焼肉屋の開業にかかる費用について解説します。焼肉屋の開業に必要な初期費用には、大きく分けて物件の取得費用と設備投資費用の2種類があります。 物件の取得費用とは店を開業する物件を借りるためにかかる費用全般を指し、具体的には物件のオーナーに支払う敷金(保証金)や礼金、前家賃のほか、不動産業者に支払う仲介手数料などがあります。
設備投資費用とは、店舗の内装工事やダクト工事、厨房設備や客席の吸煙設備の設置などにかかる費用のことです。加えて、安定的に経営を続けていくための運転資金も用意しなければなりません。店舗運転資金の例としては、人件費、賃料、原材料費、光熱費、広告宣伝費などが挙げられます。各費用の具体的な内訳は店の立地や坪数によって変動するため、ここで紹介する数字はあくまで目安と考えてください。
小さな店舗の場合
焼肉店の中では比較的小さい15坪~20坪の店舗を開業する場合を想定します。 たとえば入居する物件の坪単価が2万円だとすると、1ヶ月の賃料は2万円×15坪~20坪=30万~40万円となり、保証金300万~400万円(10ヶ月分)、前家賃30万~40万円(1ヶ月分)が必要です。
また、焼肉店の内装工事や設備工事にかかる改装費用の坪単価は40万円程度が相場とされるため、600万〜800万円程度が目安となります。これに厨房設備や食材費、人件費、宣伝広告費などの運転資金を加えると、約1,500万~2,000万円が開業資金として必要になる計算です。
【内訳】
- 敷金(保証金):300万~400万円
- 前家賃:30万~40万円
- 内装工事:600万~800万円
- 厨房設備:300万~500万円
- 食材費:150万円
- 人件費:100万円
- 宣伝広告費:10万~30万円
中規模〜大規模の場合
中規模(30坪程度)から大規模(50坪程度)の焼肉屋を開業する場合を想定します。
上記の例と同じく、入居する物件の坪単価が2万円だとすると、1ヶ月の賃料は2万円×30坪~50坪=60万~100万円となり、保証金600万~1,000万円(10ヶ月分)、前家賃60万~100万円(1ヶ月分)が必要です。改装費用は坪単価が30万円とすると900万~1,500万円程度が目安となります。 ※店舗の規模が大きくなると改装費用の坪単価は減少することが多いです。 これに厨房設備や食材費、人件費、宣伝広告費などを加えると、約2,700万~4,100万円が開業資金として必要になる計算です。
【内訳】
- 敷金(保証金):600万~1,000万円
- 前家賃:60万~100万円
- 内装工事:900万~1,500万円
- 厨房設備:600万~1,000万円
- 食材費:300万円
- 人件費:200万円
- 宣伝広告費:50万円
焼肉屋の開業に必要な準備や手続き
焼肉屋の開業に向けては、資金を調達するところから始まり、事業計画の策定や市場調査、メニュー作り、物件決め、内装工事、仕入れ先の開拓、各種許可の取得まで、さまざまな準備を必要とします。この章では、具体的な準備と手続きの流れを解説します。
資金の調達
開きたい店の規模に応じた開業資金を見積もり、必要な額の資金を調達します。初期費用に加えて毎月の賃料や光熱費といったランニングコストも必要になるため、店舗の規模によっては数千万円の見積もりになることが想定されます。
また、経営が軌道に乗るまでは時間がかかるケースが多く、開店後に赤字が続く可能性もあるため、運転資金は最低でも6ヶ月分以上は確保しておいたほうが安心です。自己資金だけでの調達が難しい場合、金融機関からの融資や公的機関の補助金・助成金を活用しましょう。
事業計画の策定
資金調達に向けて金融機関から融資を受ける際には、事業内容やセールスポイント、販売戦略、競合および市場の状況、仕入れ先、従業員数、資金計画、予測貸借対照表などをまとめた事業計画書の提出が必要です。
競争の激しい飲食業界においては、きちんとした計画に基づいて経営に臨まないとあっという間に閉店に追い込まれる可能性があります。自己資金のみで開業する場合でも、経営に必要なお金を可視化したり、経営戦略を客観視したりする上で役立つため、事業計画は必ず策定しておきましょう。
コンセプトの設計
具体的にどのようなお店にするのかコンセプトを検討しましょう。一口に焼肉屋といっても、黒毛和牛にこだわった高級店もあれば、お金のない学生でもお腹いっぱい食べられる庶民的な店もあり、店ごとに個性が異なります。店舗コンセプトは経営の方向性を決める上での柱となるものです。
ここをしっかり固めておくことでライバル店舗との差別化が可能になり、経営をしていく中で判断に迷う場面があったとしてもコンセプトに立ち返ることでブレのない意思決定を下せるようになります。コンセプトの設計は、以下の5W2Hの視点で考えると明確化しやすいでしょう。
- When:いつ
- Where:どこで
- Who:誰に
- What:何を
- Why:なぜ
- How:どのように
- How much:いくらで
市場の調査
出店するエリアについての市場調査を実施します。住んでいる人の年代や人通り、競合店の有無などを調べ、どこのエリアであればより多くの来客が見込めるのかを見極める必要があります。競合店は少なければよいというわけではなく、そのエリアでどれだけ自店の存在価値を発揮できるかどうかが肝心です。たとえば周辺に競合店があったとしても、リーズナブルな価格帯の店が多いのであれば、高級志向の店にすることで他店との差別化が図ることも可能です。市場を調査することは店舗の業態や内装を決める際の判断材料にもなるため、時間をかけて入念に調べておくことをおすすめします。
メニューの決定
事前に策定した店舗コンセプトをもとに来店見込み客のニーズに合わせてメニューの構成を考えていきます。メニューは基本的にお店の売りとなる看板メニューと、焼肉屋であればどこでも取り扱いがあり安心感のある定番メニューで構成されることが多いです。そのほか、日替わりや週替わりのメニューを取り入れたり、サイドメニューやドリンクメニューの検討を重ねたりと、他店との差別化が図れるように決定していきましょう。
ただし、どんなに美味しいメニュー(料理)であっても採算が合わなければ立ち行かなくなるため、メニューを決める際には客単価や原価率といったコストへの意識も欠かせません。これらのことを相対的に判断してメインとなる食材にどのようなランクのものを使用するのか、どのぐらい希少なものを使うのか、どのカテゴリーを強化すべきかなどを考えるとよいでしょう。
店舗の選定
物件や立地選びは売上を左右する重要な要素です。店舗周辺に十分な人通りがあるか、客層は想定するターゲットと合致しているか、店の広さは適切かなど、多角的に検討して選びましょう。
駅前の一等地や路面店などは多くの集客が期待でき、宣伝にかける費用が少なくて済むといったメリットがありますが、その分賃料が高くなり、固定費の比率が大きくなります。赤字が続くと経営の継続が困難になるリスクもはらんでいるため、居抜き物件を活用するなどして物件取得コストを節約する工夫も必要です。
内装の工事
設備の設置を含めて内装の工事を行います。焼肉店では、電気や水道、ガス、厨房といった通常の飲食店の設備に加え、無煙ロースターやダクト、吸煙・排煙など特殊な設備の設置が必要です。
どのような内装にすべきかは店舗コンセプトによって変わってきます。たとえば高級志向の店であれば席数を少なめにして家具や照明にもこだわり、落ち着いた雰囲気にするのが望ましいでしょう。反対に安さ重視の店であれば、少し色使いが多く賑やかで活気のある雰囲気作りが必要になってきます。
什器・備品の用意
店舗が決まったら調理や飲食に使う什器や備品を調達しましょう。テーブルや椅子といった家具のほか、鍋、網、ボウル、トングなどの調理器具、食器、グラスなど、そろえるものは多岐にわたります。什器や備品をすべて新品で統一する必要はなく、お客様の目に見えない厨房で使うものは中古にするなどすれば予算を抑えることが可能です。
仕入れ先の開拓
仕入れ先は卸業者が主な候補となりますが、そのほかに生産者から直接仕入れる、あるいは食肉加工センターから仕入れる方法もあります。過去に飲食店や精肉店で働いていた経験があればコネクションを頼ったり、インターネットで食肉の卸売業者を検索したりして探すとよいでしょう。 仕入れに際しては、自分の目でも品質をしっかり判断できるよう、発注者としても肉に関する知識を一定程度身につけておくことが重要です。
資格の取得
焼肉店を開業する上で必要な資格としては、主に食品衛生責任者や防火管理者(30名以上店舗の場合)の2種類が挙げられます。食品衛生責任者は、各店舗に必ず1人の配置が義務づけられており、開業時にエリアを管轄する保健所に届出をしなければなりません。
食品衛生責任者資格の取得には講習会を受講する必要がありますが、栄養士や調理師など特定の資格を有していれば講習会の受講は不要です。防火管理者の資格には甲種と乙種の2種類があり、甲種は2日間、乙種は1日間の講習を受けることで取得できます。
許可・届出の手続き
焼肉店を開業するにあたっては、店舗完成予定日の10日前を目安に飲食店営業許可申請書を管轄の保健所に提出する必要があります。ただし店舗の着工前に、設計図などを持参の上、店舗を管轄する保健所へ事前相談しておいてください。
飲食店営業許可は、必要書類を用意して所管の保健所に提出したのち、申請内容と実際の店舗に相違がないかを保健所の担当者と一緒に確認し、きちんと基準を満たしていれば許可が下りる仕組みです。
集客の宣伝
開業前には店舗への集客のために宣伝を行います。宣伝の方法としては、WebサイトやSNSなどインターネットを活用した方法のほか、チラシやダイレクトメールといったオフラインの宣伝方法もあります。ターゲットと親和性の高い媒体を活用し、来店者に割引などの特典を付けるなど工夫することがポイントです。
また、効果的に認知を拡大するには食べログなどの大手のグルメサイトへの登録もおすすめです。
スタッフの採用
開業後の店舗運営に欠かせないのがスタッフの確保です。採用活動には時間がかかるため、遅くとも開業1ヶ月前には応募を始めましょう。主な採用方法としては、ハローワークのほか、求人サイトや求人検索エンジンへの掲載、人材紹介会社の活用などが挙げられます。
また、採用してから実際に働いてもらうまでには教育も必要です。1人1人に手取り足取り教えている余裕がないことも考えられるため、あらかじめ業務の流れや要点をまとめたマニュアルを準備しておくとスタッフもスムーズに仕事を覚えやすいでしょう。飲食店では衛生管理が非常に重要なため、食中毒対策や感染症対策に関する教育も忘れずに行ってください。可能であれば店長の不在時にも店舗運営を任せられるような飲食店経験者も採用しておくと心強いでしょう。
焼肉屋の開業を成功させるコツ
飲食店は初期投資額が高い割には参入者が多い業態ですが、開業から数年で廃業する店も多く、安定的に経営を続けるのが難しいビジネスでもあります。そこで最後に、焼肉屋の開業を成功させるコツを紹介します。
ターゲットは明確にする
開店後すぐに潰れてしまう焼肉店に多い特徴のひとつとして、ターゲット設定が曖昧である点が挙げられます。ターゲットは店舗の方向性を決めたり、物件および立地を選んだりする上で重要なポイントとなります。そのため顧客の属性を細分化し、「会社帰りに1人で気楽に焼肉を食べたい20代~30代の独身男性」など顧客像はなるべく具体的に設定しましょう。
差別化を意識する
ターゲットの明確化にも通じますが、競合との差別化を意識して独自性のある店舗を目指しましょう。準備段階での市場調査において競合店を研究し、繁盛している店があればなぜ繁盛しているのかをしっかりと分析して自店に生かす必要があります。また、設定したターゲットのニーズを可能な限り深掘りし、ターゲットに刺さるような特徴を打ち出せるかどうかも成功への鍵となります。上記を例に挙げるなら、単に「会社帰りのサラリーマン」ではなく、「1人で気軽に食べたい」というニーズや「独身」という属性が差別化のポイントです。
費用のかけ方に気を付ける
焼肉屋の開業には少なくない費用がかかりますが、コストの削減に意識が向きすぎるとかえって経営に悪影響が出る恐れもあります。特に料理の食材やその品質の管理レベルを下げてしまうことは店の評判や、ひいては安全性の低下にもつながりかねません。
食材の品質維持のために必要な設備にはしっかりと費用をかけ、居抜き物件を活用したり備品の一部を中古でそろえたりすることでその他の費用を減らすなど、コストをかけるものの優先順位を考慮して予算を効果的に使う工夫が必要です。
まとめ
焼肉屋の開業にかかる資金は、小規模店舗であれば1,500万〜2,000万円、中規模から大規模の店舗であれば2,700万~4,100万円程度が必要とされています。開業前には店舗のコンセプトやターゲットを明確に設定し、競合との差別化を意識した事業計画の策定が不可欠です。多額の資金を要する中でもお金をかけるべきところと節約すべきところを見極め、うまく予算を配分して無理のない焼肉屋経営を目指しましょう。
参考URL
焼肉屋の開業のための8つの準備|店舗内装工事見積り比較.com
焼肉店の開業時にそろえるべき設備と内装費用のしくみ |店舗経営レシピブック
飲食店の物件の広さはどれくらいが理想? 必要な面積や1坪あたりの座席数を解説|店舗物件探し 飲食店ドットコム
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監修者:太田とよしき
プロフィール | 株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。 |
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