小さい飲食店を開業して上手に経営するコツとは? 開業の流れなどを紹介

小さい飲食店を開業するメリットは、大規模な店舗よりも低めのコストで小さく始められることです。しかし、その特徴とデメリットもしっかりと把握した上で、自分に適性があるかどうかを事前に判断することが非常に大事になってきます。本記事ではそんな小さい飲食店を開業するために必要な知識や書類・資格などについて解説しています。開業の準備段階の方はぜひご覧ください。

目次

小さい飲食店の規模とは

小さい飲食店の具体的な規模感、一人で開業する際に必要なスキル、作業、開業資金などについて解説します。規模の大小に関係なく開業する以上はやるべきこと、考えるべきことは多くあります。

一般的には5~10坪以下の店舗のこと

小さい飲食店の明確な定義は特にありません。ですが、基本的には5~10坪以下の店舗、10~15席以下の店舗を指していることが多いです。一坪あたり2~3席程度が目安とされています。この数字はあくまで目安のため、実際にはどんな店舗を開業したいのかによって適切な店の広さや席数、席種は変わってきます。

例えば、カウンター席のみの店舗ならば家族連れで利用してもらうのは難しい可能性があります。テーブル席も用意するのか、回転率の想定はどのぐらいなのか、どんな場を提供するのか、どんなお客さんに利用してほしいのかによって正解が異なるでしょう。

ちなみに、小さい飲食店で多い業態はカフェ、バー、寿司屋、麺類(うどん・そば・ラーメン)店です。店舗の規模が小さいため、一人客でも利用しやすい業態や、ごく少ない席数で非常に客単価の高いジャンルがよくみられます。

1人でも開業できるのか?

飲食店の開業は一人でもできます。自分一人で経営するなら人件費もかかりません。その代わり、自分しかスタッフがいないため開業手続き、会計、調理、洗い物、電話応対などの業務を一人でこなさなければなりません。資金の調達や経営能力、マネジメント、メニューの開発や企画力も問われることになるでしょう。 また、一人で経営するとなると、他に従業員がいる場合と比べて料理の提供にも時間がかかります。そのため、一人でも仕事が回るようにメニュー数を絞る、最終調理工程を短くするなどの工夫も必要です。

小さな飲食店の開業自体は一人でもできますが、当然全ての業務をこなす必要があり、さまざまな能力が必要となってきます。中でも一人で営業しているお店は、人との会話を求める顧客も多く、コミュニケーションに長けている必要があるでしょう。

開業資金の目安

賃貸契約での出店の場合、平均700万円前後が開業資金の目安です。立地や設備の有無、業態によっても必要な資金が変動します。内装にこだわる場合はさらに必要になる可能性があります。

開業資金の内訳を見ると、大まかに初期費用と運転資金の2つに分類できます。

初期費用
物件取得費、内装・外装費、設備費、備品費(食器や道具など)

物件取得費は前払いの家賃や保証金、仲介手数料などが含まれます。大体家賃の10~13ヶ月分ほどで、小さな飲食店ならおよそ150~200万円がまとめて必要になると考えておきましょう。 また、内装や外装は、どのような飲食店にしたいかによって費用が大きく変動します。似たジャンルの店の居抜き物件を選ぶと、内装や設備などの工事費を抑えられることも稀にあります。

運転資金
家賃、食材費、光熱費、人件費、広告費

開店してから経営が安定するまで、半年くらいかかるのが一般的です。不測の事態も考えて、運転資金の1年分ほどを前もって用意しておくことが理想です。

飲食店の開業に必要な資格とは?

小さい飲食店を開業する場合に取得しておくべき資格があります。また、必要な資格は業態によって異なります。

まず、「食品衛生責任者」の資格は必須です。飲食店を経営する全事業者に取得が義務付けられており、1店舗に1名以上の食品衛生責任者を配置する必要があります。複数の店舗を運営する場合は常駐する食品衛生責任者を各店舗に配置しなくてはなりません。 取得するには、各都道府県で開催される食品衛生責任者講習会の受講が求められます。調理師や栄養士の免許保持者であれば受講しなくても取得できます。

次に、業態によって必要になるのが「防火管理者」です。店舗の収容人数が従業員も含めて30名以上になる場合には、取得する必要があります。店舗に常駐するオーナーか従業員の中で1人は資格を持っていなければなりません。 取得するには、防火管理講習の受講が必要ですが、申し込み場所は自治体によって異なります。収容人数30名以下の小さな飲食店を経営する場合は不要です。

なお、飲食店を開業するには調理師免許が必ず必要だと考えている方が多いのですが、これは誤解です。飲食店を営むうえであったほうがなお良い資格ではありますが、免許取得のためには受験資格の条件がありますので、相対的に考えて取得するか判断するべきでしょう。

飲食店の開業に必要な書類を準備

飲食店の開業には書類もそろえる必要があります。 以下は、業態問わず開業時に提出義務があるものです。

「開業届」(正式には「個人の事業主の開業・廃業等届出書」)
開業後1ヶ月以内に管轄税務署に提出する必要があり、提出すると個人事業主になれます。
「法人設立届出書」
法人の場合は税務署、市区町村役場への提出が必要です。
「青色申告承認申請書」
提出すると最大65万円の所得控除や赤字の繰り越しなどのメリットがあります。
「給与支払事務所等の開設届出書」
従業員を雇う場合、税務署に提出します。開業と同時ではなくても、雇用してから1ヶ月以内に提出すれば大丈夫です。
「食品営業許可」
開店前に保健所に申請して審査を受け、合格すると許可証が交付されます。条例で定められた施設基準に沿っているか細かいチェックが入るため、工事のやり直しなどが必要となり許可がおりるまで2週間以上かかる場合もあります。
「防火対象設備使用開始届」「火を使用する設備等の設置届」
消防署に提出します。

以下は、業態によって提出義務があるものです。

「消防管理者選任届」
店舗の収容人数が30人を超える場合は消防署に提出する必要があります。
「深夜酒類提供飲食店営業開始届」
午前0時~6時の時間帯に酒類を提供する場合、営業許可をもらったあとに警察署に提出します。
「風俗営業許可申請」
必要に応じて警察署に提出します。

小さい飲食店を開業するメリット

規模の小さい飲食店を開業する場合のメリットについて解説します。主にコストや接客の面でメリットがあります。

初期費用を抑えられる

店舗が大きいと物件取得費が高くなり、より多くの設備も必要になります。 それに比べて規模が小さい店舗は、内装・外装工事費用、機器などにかかる費用が安く済みます。初期費用が下がれば、採算が取れるまでの金銭的なリスクも減ります。特に個人で開業する場合、費用を最小限に抑えられるのは魅力的です。

ランニングコストを抑えられる

小さい飲食店だと、毎月のランニングコストを抑えやすいのもメリットです。面積が小さいと家賃が安くなることはもちろん、光熱費もあまりかかりません。また、一人または家族で経営できれば、人件費がかなり削れるというメリットもあります。 開業したばかりのうちは売上が不安定なことが多いため、削れる固定費は削ったほうが赤字リスクを回避しやすくなるでしょう。

顧客との距離が近く常連が生まれやすい

小さい飲食店は配置できる席数が少ないため、一度に入れる顧客の数も限られます。デメリットのように感じますが、見方を変えれば、規模が小さいおかげで顧客との距離が縮まるのはメリットです。顧客とのコミュニケーションがとれ、きめ細やかで質の高いサービスを提供しやすくなります。

店舗での体験が素晴らしければ、リピーターの増加や良い口コミが増える可能性も高まります。良い評判が広まれば、結果的に広告費の削減にもなるでしょう。

ストレスなく働きやすい

小さい飲食店はチェーン店と違って詳細なマニュアルがありません。オーナーが店舗のコンセプトにあった内装やメニュー、マニュアルなどを考えて経営します。飲食店をゼロから作っていくのは大変な作業ですが、自分の個性を出せて、やりがいも感じやすいでしょう。 詳細なマニュアルがないことも多いため、従業員にもお店のために自主的に考えて動いてもらうことになります。すべての従業員がそういう自覚を持つわけではありませんが、自主的に働く従業員にとっては、他とは違うやりがいのある職場になるでしょう。

店の全体を見渡しやすい

店舗の規模が小さいと、お店全体を見渡しやすくなります。顧客の様子を見て、きめ細かくお客様の気持ちを汲み取れるメリットがあります。例えば、箸やスプーンを落とした顧客がいたときにすぐに交換しにいく、顧客の様子を見て空調を調節する、といったことです。 小さい店舗のほうが、顧客の欲していることやお店に足りないものに気づきやすくなります。また、従業員を雇う場合でも、接客の様子をその都度確認できるため、店のコンセプトや経営者の想いに沿って育成しやすくなるでしょう。

小さい飲食店を開業する際の注意点

規模の小さい飲食店を開業する前に注意しておきたいことを紹介します。小規模ゆえのメリットもありますが、限界や弱点もあるのでおさえておきましょう。

大きな売上は期待できない

小さい飲食店はビジネスの規模も小さく収まりがちなため、大きな売上は期待できません。また客席をゆったりととることが難しく客単価をあまり高く出来なかったり、そもそもの席数が少ないので1日の客数にも限界があります。 そのため売上を伸ばすには、営業時間を長くする、席の回転数を上げる、テイクアウトなどで販路を広げるといった工夫が必要になります。サービスの付加価値をつけることで、価格を上げるのも一案です。

仕入れ値が高くなる傾向にある

大規模な店舗の場合、大量の食材を一気に仕入れられるため、仕入れ値を抑えやすくなります。しかし、小さな飲食店の場合は必要な仕入れ量も少なくなるため、なかなか安く仕入れられません。 仮に大量に安く仕入れたとしても在庫リスクが高くなり、使いきれずに食品ロスになる可能性もあります。

無駄にしてしまうぐらいなら、小ロットで必要最低限だけ仕入れた方が適度なコストに収まります。また、一度に多く仕入れることで、なんとか使い切りたいという心理が働くことから、品質維持の判断基準が甘くなるのは最悪のパターンです。コストダウンさせるには、固定費の削減や料理の付加価値を上げるなど、ほかの手段を探ってみてください。

体調管理が経営を大きく左右する

小さい飲食店は自分で経営することで人件費をカットできるメリットがあります。しかし、ケガや病気をしてしまうと、代わりに営業する人がいなくなるため休業するしかなく、収入が大きく減少してしまいます。

体調不良のリスクを軽減するために、少人数でも人を雇い、自分がいなくても店が回るようにするなど対策を考えておくことが大切です。 とはいえ、人を雇っていれば安心できるとも限らず、従業員が急に休んだり辞めたりする可能性もあります。スタッフが少ないと一人あたりの役割が大きくなるため、誰かが体調を崩して長く休むと、店の経営を左右しかねません。

小さい飲食店の経営を成功させるためのコツ

経営を成功させるために考えておきたいこと、工夫について紹介します。

コンセプトの設定は必須

多くの人は、お店の外観や内装から感じた印象、サービス、メニューを参考にして来店するかどうかを判断します。それらの軸となるのが、お店のコンセプトです。コンセプトが曖昧だったり、その地域の人にとって興味をひかないものだったりすると、経営が行き詰まる可能性が高くなります。

コンセプトは、魅力的かつ実現可能なものを設定する必要があります。経営を左右する重要な要素のため、予定している立地や営業時間、スタッフの人数なども考慮しつつ、検討しましょう。 5W1Hの要素に沿って考えると設計しやすくなります。「どのようなターゲット」に「どんな料理を」「どういう方法で」提供するのか、時間帯、そのコンセプトにする理由などを練っていき、ほかの飲食店との差別化を図ります。

そして、決まったコンセプトを軸にして、店の内装、メニュー、宣伝文句、接客方法などを決めていきます。事業計画書もコンセプトをもとに作成することになるため、コンセプト設計はとても重要です。

集客のための工夫を怠らない

飲食店経営を成功させるには集客が重要です。集客を怠ると、すでに認知されている有名店や多くの競合店の中に埋もれてしまいます。開業する飲食店の料理やサービスがどれだけ素晴らしかったとしても、認知されなければ上手くいきません。開業時はメディアや口コミで注目されやすいため、機会を逃さないように開店前から集客の準備をしておきましょう。

集客方法として、SNSやウェブサイト、グルメサイト、動画などオンラインの手段を活用するのがおすすめです。チラシや折り込み、フリーペーパー、違うお店にショップカードを置いてもらうなど、アナログな手段もあります。想定している客層に応じた集客を行いましょう。 リピート客を増やすためには、ポイントカードやDMを利用するなど、新規客の集客とは違った方法を用いることをおすすめします。SNSのQRコードを店内に掲示するのも有効でしょう。

まとめ

小さい飲食店とは一般的に5~10坪以下の店舗のことです。大規模な飲食店ほどの大きな売上を上げるのは難しいですが、初期費用や固定費などを抑えやすいメリットがあります。人を雇わずに一人または家族で店を切り盛りするオーナーも少なくありません。

開業には事業資金の準備のほか、必要な資格の取得や書類の提出、メニュー開発、集客など、やるべきことは多くあります。スケジュールに余裕を持たせて準備しましょう。 もし小さい飲食店を開業する予定で効果的な集客方法を探しているなら、ネット予約や店舗紹介ページなどのサービスが利用できる「食べログ店舗会員」への無料登録がおすすめです。ぜひ検討してみてください。


参考URL

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監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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