飲食店が赤字から抜け出す6つの秘策! 赤字経営に陥る原因も解説

飲食店が赤字経営に陥るのには、それなりの理由があります。原因を大別すると「売上が足りない」か「経費がかかりすぎている」のどちらかです。さらに原因を細分化していくと、ひとくちに「売上が足りない」といっても客数が少ないのか、単価が低いのか、「経費がかかりすぎている」のはどの部分なのかが見えてきます。赤字経営から脱却するには、そうした自店舗の課題を把握したうえで、適切な対策に取り組まなければなりません。 本記事では、飲食店が赤字経営に陥る主な原因や、具体的な対策について解説します。

目次

赤字経営(決算)が生み出すデメリット

ここでは、まず、なぜ赤字経営が良くないのかを確認しておきます。飲食店に限らず、赤字経営が続くと倒産の危機を招きます。利益が残らない状態であるため、次第に資金が目減りし、原料の仕入れや従業員への給与支払いも難しい状況へと追いやられます。

また赤字経営が続くと、金融機関からの評価が低下し資金調達が困難になってしまいます。利益を生まず損失ばかり生んでいる企業への融資は、金融機関にとってリスクが大きすぎます。銀行などから資金を調達できないとなれば、自転車操業に陥るおそれもあります。

税務調査の対象となるリスクが発生するのもデメリットです。毎年のように赤字決算を出していると「本当に赤字なのか、実際には利益が出ているのではないか」と疑いをかけられ、調査されてしまうケースもあります。

なぜ赤字経営に陥る?飲食店でよくある4つの原因

「国内で営業している飲食店のおよそ6割が赤字経営」とのデータがあります。赤字に陥る原因としては、客単価の低さや販促・宣伝の施策による経営圧迫、集客力の弱さ、無計画な資金計画などが挙げられます。

客単価が低く売上が確保できない

売り上げが足りずに赤字になっているケースでは、客単価の低さが原因の一つとして考えられます。客単価が低いと、一人の顧客から得られる利益が少なくなってしまいます。薄利多売で利益を得なくてはならない状況に陥るため、「集客すればするほど従業員に負担がかかる」といった悪循環も発生しやすくなります。

このようなケースでは、客単価の見直しが必須です。飲食店でもっと必要なのは、お客様ひとり当たりの粗利益額になることを頭に入れておきましょう。 薄利多売を余儀なくされている店舗では、多くの場合、メニューの価格設定に問題があります。店舗経営を続けるうえで必要な利益を得られる価格になっているかどうかをしっかりとチェックしなくてはなりません。

販促や広告の施策が業務や経営を圧迫している

飲食店が売上や利益の拡大を目指すうえで、販促や広告の施策は必須です。素晴らしいメニューを提供している店舗であっても、それを知ってもらわなければ集客に結びつきません。ただし、販促や広告の施策は、費用対効果を意識して実施しないと経営を圧迫するため注意が必要です。経費に対して効果が得られず赤字となるケースです。

飲食店の販促手法と言えば、チラシのポスティングが挙げられます。エリアを絞ってチラシを配布できるポスティングは有効な販促手法です。しかし相応のコストも発生するため、配布エリアや人員などをしっかりと見極めて設定しなくてはなりません。

ほかにも、フリーペーパーへの掲載料やチラシの印刷コスト、SNSや店舗サイトの運用コストなど、飲食店経営にはさまざまな販促コストが発生します。SNS運用に余計なリソースを割きすぎていないか、無計画な割引キャンペーンを頻発していないかなどをチェックする必要があります。

集客力や販促力が弱い

集客力や販促力が弱く売り上げが伸び悩み、赤字となるケースもあります。ポスティングや店舗サイトの運用などが適切に行われていないと、集客に結びつきません。ポスティングを行うにしても、「ターゲットとする顧客層が多く暮らしているエリアに絞ってチラシを配布する」など、工夫をしないとコストがかさむ一方です。

立地条件の悪さが集客力を低下させていることも考えられます。駅やバス停などから遠い、車でアクセスしにくい、駐車場がない、エレベーターがない商業ビルの上階に店舗がある、といったケースです。

店舗のコンセプトが、メインターゲット層のニーズにマッチしておらず、経営が苦しくなることも考えられます。たとえば、メインターゲット層が10~20代の若い女性なのにもかかわらず、店舗のコンセプトが「ラグジュアリーな空間で味わう高級フレンチ」では、集客は難しいと考えられます。

無計画な資金計画となっている

資金計画とは、資金の運用方法や調達先、返済スケジュールなどのことであり、事業計画書に記載されます。資金計画をきちんと練らないと、資金繰りがスムーズにいかず、経営が立ち行かなくなるおそれがあります。

店舗設備にどれくらいの資金を投入するのか、月間にどの程度の売上が見込めるのか、売上のうち利益はどれくらいなのか、調達した資金をどう返済していくのか、などが資金計画に盛り込むべき内容です。希望的観測ではなく、客観的かつ俯瞰的に計画を練ることで健全な資金繰りが実現します。

赤字経営から抜け出す6つの秘策

赤字経営から抜け出さなければ、いずれ待っているのは倒産です。まずは、飲食店が赤字経営に陥る原因を把握し、そのうえで適切な対策に取り組まなければなりません。

1. メニュー価格やオーダーの工夫で客単価を上げる

まずは、価格設定を見直してみましょう。メニューの価格が、きちんと利益を得られるような設定となっているかどうか、確認と改善を行います。

また、客単価を上げるには、追加オーダーをしてもらえるような工夫も必要です。たとえば、料理にマッチしたお酒を用意し、オーダーを受けるときに勧める、といった施策が考えられます。ほかにも、セットメニューやオプションを充実させるのも、客単価アップに有効です。

客単価が20%アップ! 「食べログオーダー」の導入事例

「食べログオーダー」は、顧客のスマートフォンからメニューの注文ができるシステムです。導入によって、飲食店はオーダーに時間をとられないためオペレーション効率を改善でき、顧客は店員を待つことなく好きなタイミングで注文できるメリットがあります。

隠れ家カフェとして人気の「Spice & Cafe FamFam」は、食べログオーダーを活用して客単価20%アップを実現しました。導入までは、顧客がこれまで通り来店してくれるのか不安があったそうですが、導入直後からほとんどの顧客が食べログオーダーを利用しているとのことです。

システムの導入によってオペレーションが改善したほか、紙メニューのときに比べてトッピング注文が増加し、客単価20%アップを実現しました。

導入事例 - Spice & Cafe FamFam|食べログオーダー


2. 販促ツールを見直す

販促や集客のツールを利用しているのなら、費用対効果をチェックしましょう。効果がほとんど出ていないのに、毎月高額な費用が発生している、といった状況では赤字経営から抜け出せません。

現状で利用しているツールやサービスを洗い出し、費用に見合った効果が出ているかどうか確認しましょう。発生している費用に効果が見合わないのであれば、利用を中止することをおすすめします。

3. ニーズに沿ったコンセプトを立て直す

店舗のコンセプトに問題があると、集客や利益アップを阻害します。そのため、まずは店舗のターゲットを明確にしましょう。メインのターゲットが明確になれば、コンセプトを打ち出しやすくなります。結果、どのようなメニューをそろえればよいか・どう集客すればよいのかなども見えてくるはずです。

たとえば、子連れで訪れるファミリー層がターゲットなら、「子どもとゆっくりくつろぎながら食事を楽しめる空間」といったコンセプトが考えられます。座席をパーティションなどで区切って半個室にする、ゆったりとくつろげるような大型のソファを用意するなど、ターゲットのニーズにマッチした店舗づくりを目指しましょう。

4. 人件費やFLコストを見直す

従業員が必要以上に多いと、経営を圧迫する原因となりかねません。本当にそれだけの人数が必要なのかどうか見直してみましょう。動線の見直しやオペレーションの改善によって、従業員を減らせる可能性もあります。

FLコストの比率も重要です。FLコストとは、食材原価と人件費を足した数値です。一般に「売上に占めるFL比率が60%以上だと赤字になりやすい」と考えられているので、60%以下を目指しましょう。

また、生産性向上への取り組みによって、人件費削減が可能です。たとえば、顧客が自らの端末で注文できるモバイルオーダーシステムを導入すれば、店舗の生産性が高まり、少ない人員でも店舗運営を行いやすくなります。

スタッフの生産性向上で人件費削減へ! 「食べログオーダー」の導入事例

本格中華が楽しめる「芝蘭 豊洲店」は、食べログオーダーの導入によって店舗の生産性向上を実現しました。スタッフが注文を取りに行く必要がなくなったため、ほかの作業へ注力できるようになり、作業効率が大幅に向上したとのことです。

効率よく業務を遂行できるようになった結果、従来は3人で担っていたホール業務を、2人で行えるようになりました。人手不足が叫ばれる飲食業界においては特に、生産性の向上によって人件費を削減できる点は、大きな魅力です。

導入事例 - 芝蘭 豊洲店|食べログオーダー


5. 営業方法を再検討する

営業方法の転換によって、赤字経営から脱却できる可能性があります。たとえば、特定のメニューが売上の多くを占めているのなら、そのメニューに特化した営業に切り替えるといった施策が考えられます。

また、デリバリーやテイクアウト事業を開始するのもひとつの手です。新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの飲食店がデリバリーやテイクアウトにのり出しました。自宅で本格的なお店の味を楽しみたい・お店に足を運べないといった方のニーズを満たせるため、売上や利益向上が期待できます。

デリバリーやテイクアウト事業を開始するのは、それほど難しいことではありません。料理やドリンクの容器を用意する必要はありますが、新たに許可の申請や届出をすることもなく、すぐにでも始められます。

6. 資金計画を見直す

赤字経営を脱却するために、資金計画も見直してみましょう。無理のある資金計画では、経営が圧迫されてしまいます。資金の調達先は本当にそこでよいのか、月々の返済金額はこれで問題ないのかなどを見直してみましょう。

資金計画を練る際には、根拠のあるデータを用いることが重要です。希望的観測の基に計画を立てるなどすると、失敗の可能性が高まります。売上の計画を立てる際も、さまざまなデータを持ち寄ったうえで現実的かつ無理のない計画を立てましょう。

まとめ

飲食店が赤字経営に陥ると、金融機関からの評価が低下し融資を受けにくくなるほか、倒産のリスクも高まります。赤字経営に陥る原因としては、客単価の低さや集客力の弱さ、費用対効果の悪い施策を実施しているなどが挙げられます。 赤字を脱却するため、まずはメニューや現状におけるオペレーションなどを見直してみましょう。効果が低い販促ツールやサービスの利用を中止するのも有効です。当初の資金計画も見直し、必要に応じて修正しましょう。

参考URL

赤字経営でも倒産しない4つのケース!赤字経営のメリット・デメリット|株式会社ビートレーディング
赤字経営とは?会社が潰れない理由と黒字化する方法をわかりやすく解説|Factoring Journal Powered by PMG
多店舗展開を狙っている飲食店では絶対に赤字を出さない|CASIO HANJYO TOWN
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飲食店経営は難しくて地獄なのか?|CASIO HANJYO TOWN
赤字経営の飲食店を再建させる方法について|コロンブスのたまご
飲食店が赤字になる3つの原因とは?【潰れる前にできる対策も紹介】|株式会社Te-UP(ティーアップ)
飲食店が赤字になる原因とは? 7つの予防策と黒字化のポイントを解説|Foodist Media 飲食店.COM
飲食店が赤字になる原因と対策について解説|飲食開業のミカタ
赤字店舗を立て直せ!200店もの飲食店を見てきたコンサルタントが語る売上アップのコツ|NEC
飲食店は7割が赤字!? 赤字に陥る飲食店の共通点と脱却法|USENの開業支援サイト|canaeru(カナエル)
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資金計画とは|アグリウェブ
資金計画とは?|飲食店ドットコム
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監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com

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