飲食店におけるDXとは? 取り組むメリットや注意点を解説

デジタル技術を活用しビジネスを変革するDX。近年厳しい市場環境を生き抜くために飲食業界でもDXの重要性が叫ばれており、大規模チェーンだけでなく中小規模の店舗でも取り組みが進んでいます。

この記事では、需要予測やオーダーシステムなどの手法を取り上げながら、飲食店におけるDXのメリットや注意点を簡潔に解説します。

目次

飲食業界でも注目を集めるDXとは

デジタルトランスフォーメーション(以下DX)とは、クラウド、AI、ビッグデータ、IoTといったデジタル技術を活用し、社会や顧客の変化にあわせてビジネスモデルや組織を変革して市場競争力を強化する取り組みです。 飲食店の場合には、手作業で行っていた接客や会計などの作業をデジタル化することで、業務効率化を行ったり顧客に新たな価値を提供し顧客満足度を向上させたりする取り組みを指します。配膳ロボットの導入やLINEでの店舗予約、AIによる需要予測などが該当します。

飲食店でDX化が進む理由

製造業、小売業、サービス業など、さまざまな業界でDXが推進されていますが、飲食業界でも同じようにDXの取り組みが進んでいます。ここでは飲食店でDXに積極的に取り組む理由を3つ紹介します。

新型コロナウイルスの感染流行によってデジタル化が進んだため

2020年に急拡大した新型コロナウイルス感染症は、飲食店に大きな変革の波をもたらしました。ロボットによる作業の自動化や高度なAI分析による需要・来店予測、さまざまな業務のデジタル化が進んだほか、非接触のニーズからキャッシュレス決済とモバイルオーダーが一気に広がりました。 飲食店は家族・個人経営の小規模店舗も多く、そのすべてがデジタル化に積極的なわけではありません。しかし外出自粛、非接触へのニーズなど、社会が大きく変化するなか、生き残るためにはデジタル技術の導入が不可欠になっています。

ブランド価値の向上を目指す店が増えているため

DXに取り組むことで顧客満足度が向上し、ブランド価値を高めることができます。従来型の経営では集客が難しいと感じた店舗が、他店と差別化を図る手段としてDXに取り組んでいます。 たとえばあるコーヒーショップでは、アプリで自分好みにカスタマイズしたコーヒーを注文できるサービスを開始しました。

顧客はロッカーで商品を受け取るため人と接せずに済み、さらに「自分好み」にフレーバーや甘さを変えたコーヒー+好きな文字を印字したラベル付きのボトルを手に入れられるという満足度を得られます。コーヒーショップ側は、「ひとりひとりに合わせた味+ラベルのコーヒーを提供する」という価値を顧客にアピールできます。

特に近年はテイクアウトやデリバリー業態が伸びていることから、店舗への集客がより重要になっています。そのため顧客の注目を集め付加価値を高めるためにデジタル技術を活用して他社との差別化を図ろうとしています。

人手不足や長時間労働など労働環境の改善につながるため

飲食業界は慢性的な人手不足に加えて離職率が高く、スタッフの負担軽減や労働環境の改善が喫緊の課題となっています。 そのような中で、AIなどを駆使して自動化・効率化を行うことで課題解決を目指す取り組みが増加しています。従来手作業で行っていたことを機械化することによりスタッフの負担を軽減できます。

たとえば今まで電話で予約を受けていた店舗がオンラインの予約受付システムを導入することで、スタッフが行っていた業務を効率化できます。これは顧客にとっても、時間の制限なく好きなタイミングで予約できるという価値につながるため、双方にメリットがある取り組みです。

飲食店がDXに取り組むメリット

AIを活用した需要・来店予測や、手作業で行っていた作業をデジタル化できる各種システムなどを導入し、飲食店がDXに取り組むことで、さまざまなメリットを得られます。ここでは代表的なものとして以下の4点を紹介します。

人員配置を最適化できる

過去の来店状況、天候、イベント、気温、曜日などのデータを蓄積し、AIで将来的な来店見込み数を予測できるのが来店予測システムです。想定される来店客数にあわせてスタッフを手配できるので人員の余剰・不足を防げます。人員配置の適正化はコスト削減になるほか、スタッフの労働環境改善にもつながります。 働きやすい職場環境を提供することは、長期的にスタッフの満足度向上、離職率の低減にも影響します。

フードロスや仕入れコストを削減できる

来店予測システムの活用は、仕入れ数の最適化も実現できます。在庫管理システムと連携して適正な仕入れを行うことで、食材の無駄を減らしてコストを削減できるほか、フードロスの削減につながります。 また従来はベテランスタッフが経験とカンで食材の仕入れ数を決定していました。この工程をAIに任せることで、経験が浅いスタッフでもベテランと同じような精度で仕入れでき、作業の属人化を防ぎます。

フロア業務や予約業務を効率化できる

接触を避ける、という観点から、対面での注文をオンライン化する動きが進んでいます。居酒屋やカフェなどで導入が増えているタブレットオーダーシステムは、席に設置されたタブレット端末で顧客自身が注文するため、スタッフの呼び出しが不要になります。POSレジと連動して会計まで自動化も可能です。

スマホを利用したオーダーシステムも多くの店舗で利用されています。QRコードを利用するタイプは、店内席やWebサイトにQRコードを設置し、顧客が自身のスマホでコードを読み込んで注文できます。アプリを利用するタイプは、事前に注文用のアプリを顧客がスマホにインストールし、商品を注文できます。どちらも店内注文だけでなく、テイクアウトや店頭受取にも対応できます。スマホ決済まで可能なものであれば会計もスムーズです。

タブレットやスマホを注文に活用することで、店舗側にとっては非接触と注文業務効率化、顧客側にとっては待ち時間の軽減やスムーズな商品受け取り・決済による顧客満足度向上が実現できます。

顧客データを収集・分析して活用できる

デジタル化の最大のメリットは、さまざまな情報をデジタルデータとして蓄積できることです。たとえば従来から利用しているPOSシステムで注文履歴は蓄積できますが、スマホのオーダーシステムを導入すれば会員情報と紐づけて、「この商品はどの属性での注文が多く、どの曜日・時間帯によく注文されるか」「リピート率が高い顧客は注文にどのような傾向があるか」といった詳しい情報まで取得可能です。

さらにAIの画像分析システムを導入することで、店舗内カメラで撮影した映像から来店客の年齢層や性別、人数が取得できます。これによりPOSやオーダーシステムでは取得が難しかった注文者以外の来店者情報が取得できるようになります。 これらのデータを分析することで、マーケティングや新商品開発にも利用可能です。

オウンドメディアの活用で幅広く宣伝できる

飲食店にとって、顧客の獲得は非常に重要です。近年はSNSが情報発受のハブとなっていることから、SNSを活用したプロモーションや顧客とのコミュニケーションが効果的です。

オウンドメディアを活用しきれなかった小規模店舗などでもSNSと組み合わせることで幅広いターゲットに対して情報発信を行えます。長期的に行うことで、広告費をかけなくても集客できるようになります。

飲食店でDXを導入する際の注意点

飲食店がDXを推進するにあたり、特に注意しておきたい点を3つ紹介します。

導入する目的・理由を明確にする

DXで実現したい目的は、店舗ごとにさまざまです。そのためDXを推進する際には、現状の課題からゴールを設定し、そこに至るための手段としてどの業務をデジタル化したいのかを明確にすることが必要です。

たとえば顧客の利便性を高めて店舗のブランド価値を向上させたいという目的と、人手不足が深刻でできるだけ省人化したいという目的では、同じDXでも取り組む施策が異なります。目的が漠然としていると目指す目的からずれてしまい結果的に失敗に陥りがちなため、初めに導入する目的・理由を明確にするようにします。

DX化には十分な資金が必要になる

DXを推進する際には、当然ですがある程度の資金が必要です。飲食店は資金繰りが厳しいところも少なくないため、いざDXといっても予算的に厳しい可能性があります。

SaaS(Software as a Service:インターネットを通じてクラウド上のソフトウェアを利用できる仕組み)型で導入・運用コストを抑えるという選択肢のほか、政府が支援するIT導入補助金などを上手に活用し、費用負担を軽減するという選択肢もあります。システム導入費用のほか保守費用など、運用に毎月いくらかかるのかを計算し、費用対効果を考えて取り組みましょう。

たとえばスマホオーダーシステムの「食べログオーダー」は、導入が手軽で顧客満足度向上、注文業務の効率化を実現できるシステムとして導入店舗が増えています。興味がある方は公式サイトで導入事例や料金などを確認し、自店舗での利用イメージを確認してみるとよいでしょう。



スタッフに対して研修やフォローを行う

デジタル技術を活用したシステムを導入するにあたり、今までの業務フローや既存システムの運用が変更になる可能性があります。現在のスタッフに理解してもらえるよう操作研修などを行うほか、実運用を開始した後も、きめ細やかなフォロー体制を用意しておくと安心です。また短期間にスタッフが入れ替わる可能性が高い場合には、わかりやすいマニュアルを用意することも重要です。

まとめ

新型コロナウイルス感染症の影響などにより、飲食業界は大幅に市場規模を縮小しています。このような中で生き残りを図るためには、DXにより効率化や新ビジネス創出を実現し競争力を獲得することが重要です。 取り組みやすいDXの第一歩としておすすめなのが、SaaS型のサービスです。導入コストが低く、必要な機能をすぐに利用できるメリットがあります。ぜひこの機会に検討してみてはいかがでしょうか。

参考URL

飲食DXの成功事例8選!飲食店がDXに取り組むメリットも解説 |- FOOD-IN(フーディン)〜未来のレストランをつくる〜
飲食店におけるDX成功事例7選!取り組むメリットとお役立ちツール|コボットLAB
飲食業界のDXとは?コロナ禍で注目された理由と未来の展望|CASIOのレジスターとキャッシュレス決済サービス
コロナ禍が促進したキャッシュレス化 ~根強い現金志向、決済インフラコスト負担がネック~|三井住友信託銀行
モバイルオーダー、コロナ影響で3年早く浸透。新しく加わった”非接触”というメリット| -株式会社Showcase Gig(ショーケースギグ)
タブレットオーダー&タッチパネル注文システム比較22選|iPadアプリ・POS連携端末・飲食店メリット|OREND(オレンド)
自分好みのボトルをスマホでカスタマイズ。「TOUCH-AND-GO COFFEE」|-株式会社Showcase Gig(ショーケースギグ)
飲食店を辞めたい人が多い理由とは?業界が抱える労働環境問題|日本労働調査組合
飲食店がオウンドメディアでマーケティングして集客・ブランディング・ビジネスにつなげる方法|Wonders Marketing
失敗しない飲食店のDX~どんな業務を、どんなツールで、どんな流れで進めればよい?~|ぐるなび通信
今後の飲食業に欠かせないDX(デジタルトランスフォーメーション)について|株式会社ランドスキップ
DX化の推進における課題とは?成功させるポイントなどを解説 |Engineer Labo エンジニアラボ
IT導入補助金×飲食店|補助金の対象や補助内容、飲食業の経営をサポートするおすすめITツールを紹介|SmartMatCloud
【業界研究】飲食業界のトレンド情報 〜2022年調査版〜|販促の大学で広告・マーケティング・経営を学ぶ
食べログオーダー|飲食店向けモバイルオーダーで売上向上・人手不足解消を実現|食べログ

監修者:原島 純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

前の記事へ

飲食店のオペレーションを改善するべき理由とは? その方法も解説

次の記事へ

【飲食店】タブレット注文を導入するメリットとは? セルフオーダーで効率化

関連記事

  • 風営法とは?対象になる飲食店と、違反を防ぐ5つのポイント

    風営法とは?対象になる飲食店と、違反を防ぐ5つのポイント

    経営
  • インボイス制度、飲食店は関係ない?経営への影響と必要な対応

    インボイス制度、飲食店は関係ない?経営への影響と必要な対応

    経営
  • 飲食店経営によくある悩み6選!成功のポイントは?向いている人の特徴も

    飲食店経営によくある悩み6選!成功のポイントは?向いている人の特徴も

    経営