【飲食店】客単価を上げて売上アップ! 計算方法や上げる方法などを解説
飲食店が持続的に発展するためには、新規顧客の獲得を進めるとともに、顧客一人当たりの購買額を増やす仕組みを構築しなくてはなりません。そのためには客単価を把握・分析し、その知見をコスト管理やメニュー開発に応用するプロセスが必要です。本記事では客単価を上げる具体的な方法や基本的な計算方法について解説します。
目次
客単価とは
客単価とは、「ある企業や店舗が一定期間内に売り上げた商品・サービスの総額を、購入に至った顧客数で割った数値」のことです。つまり、ある期間内における顧客一人当たりの平均購買額を意味する概念です。
ビジネスにおいて売上を拡大する方法は、原則として「新規顧客の獲得」「顧客単価の向上」「購買頻度の増加」の3つしかなく、これを飲食業に当てはめると「売上 = 来店客数 × 客単価 × 購買頻度」という数式が成り立ちます。飲食店の経営状況を把握するためには、客単価の定量化が不可欠であり、飲食業の売上に関わる非常に重要な要素です。
客単価の計算方法
客単価は顧客一人当たりが一回の取引で支払った購買額の平均値であり、すべての顧客の購買額を合計し、その総額を顧客数で割ることで計算できます。したがって、飲食業における客単価は「客単価 = 売上 ÷ 客数」という数式で算出されます。 たとえば、あるレストランの一日の総売上高が15万円で、総来店客数が120人だった場合の客単価は1,250円です。顧客一人当たりの平均購買額を算出できれば、席数や回転数と組み合わせることで、より詳細な売上予測や購買分析が可能となります。
基本的に飲食店の一日における売上高は「売上 = 席数 × 回転数 × 客単価」という数式で成り立っています。レストランの席数が50席あり、開店から閉店までの間に120人の来店客があった場合の回転数は「120 ÷ 50 = 2.4」です。
仮に先ほどの例で客単価を100円アップできれば「50×2.4×1,350=162,000」となり、客単価はそのままで回転数を0.2アップできれば「50×2.6×1,250=162,500」となります。 このように客単価を定量化することで、より具体的な売上予測や購買分析が可能となります。これにより「客単価を上げる・回転数を上げる」など、販売促進活動の方向性を定めやすくなります。
飲食店における客単価の重要性
先述したように、客単価は飲食店の経営状況を評価・分析するうえで欠かせない指標です。仮に客単価が下がっている場合、顧客一人当たりの注文数や平均購買価格が低下していると考えられます。
たとえば、ある店舗では、単品980円の「ハンバーグステーキ」と、+250円でライスとスープが付く「Aセット」を備えていたとしましょう。このとき、客単価の向上を目的としてAセットを300円に値上げした結果、売上低下を招いたとします。
このとき客単価に注目することで、Aセットではなく200円の「ライス単品」を注文する顧客が増えたため、客単価が50円下がったのではないか、など具体的な分析を行えます。こうした分析を進め「客単価が低下した原因のひとつはAセットの値上げ」と特定できたなら、その改善策も立てやすくなります。
また、客単価の分析はマーケティング戦略の立案・策定においても非常に重要です。事業を拡大していくためには経営状況を定量的に分析するとともに、見込み客のニーズや商圏内の需要動向を捉え、その知見に基づいてマーケティング戦略を立案・策定しなくてはなりません。
たとえば一年間における客単価の推移を分析し、特定期間のトレンド傾向を定量的に把握できれば、季節に応じたプロモーションやキャンペーンの展開が可能です。それによって見込み客や既存顧客の潜在的な需要を捉えた商品・サービスの設計が可能となり、顧客満足度の向上と既存顧客のロイヤルカスタマー化につながります。
客単価を店舗運営に活かすにはデータの収集が重要
経営状況の分析やマーケティング戦略の立案・策定といった分野で客単価という指標を活用するためには、収集・蓄積する情報の量と質が重要です。たとえば、店舗の経営状況をより詳細に把握するためには、モーニングタイム・ランチタイム・アイドルタイム・ディナータイムを分類し、各時間帯の来店客数や客単価、回転数、客席稼働率などを算出する必要があります。
また、自店舗の経営状況を分析するだけでなく、商圏内における競合店の客単価や回転数などを分析するプロセスも重要です。自店舗の事業領域に関わる情報を多角的に収集・蓄積することで、勘や経験などの曖昧な要素に依存しないデータドリブンな戦略の立案・策定が可能となります。
飲食店で客単価を上げるためのポイント
飲食業のビジネスモデルで客単価を高めるためには、いくつかの押さえるべきポイントがあります。とくに重要な要素となるのが以下に挙げる2点です。
注文数を増やす
飲食店の客単価を高めるためには、いかにして顧客一人当たりの注文数を増やすかが大切です。たとえば、お得なセットメニューを用意する、季節限定商品を提供する、あるいは食後のドリンクは割引にするなど、顧客の購買意欲を醸成する仕組みを考える必要があります。
また、おすすめの商品やオプションなどを訴求する「食べログオーダー」のようなサービスを活用するのも有効です。このような関連商品のセット購入を促すセールス手法を「クロスセル」と呼びます。
金額が高くなる注文をしてもらう
客単価の向上を目指すうえでクロスセルとともに重要となるのが、より高額な上位商品の購入を促す「アップセル」です。たとえば、焼肉屋の商品には「ロース」「上ロース」「特選ロース」といったランクがあり、基本的に価格帯と商品の品質が大きく異なります。
これは「上位商品の選定によって結果的に得をする」「コストが若干上昇するものの満足度が大きく向上する」、または「上位商品の購入によって欲求を満たせる」といった心理作用に働きかけることで客単価の向上を促すセールス手法です。
飲食店で客単価を上げる方法
飲食業において客単価を上げる方法に絶対的な正解はありませんが、代表的なものとしては以下の6つが挙げられます。
特別メニューを開発する
顧客が飲食店を選ぶ理由のひとつは、そのお店でしか味わえない付加価値を体験するためです。したがって、消費者の来店動機を促すには、商圏内の競合店にはない特別なメニューを開発し、独自の顧客体験を提供しなくてはなりません。
その代表的な事例として挙げられるのが、期間限定メニューの実施です。たとえば特定の季節ごとに限定メニューを変更することで、来店動機を醸成できます。これにより、店側が利益率を高めに設定しても、消費者は割高に感じにくくなるなどのメリットが期待されます。
コースを取り入れる
単品の商品だけではなく、食べ放題や飲み放題などのコースメニューを導入することで客単価の向上が見込めます。さらにコースやプランを複数作成し、価格帯を幅広く設定するといった工夫によって客単価の向上につなげる方法も有効です。
人間は条件の異なる3つの選択肢からひとつを選ぶ際は中間の選択肢を選びやすい傾向にあります。この傾向は「ゴルディロックスの原理」などの用語で知られ、ビジネスに活かされています。飲食業の店舗では、たとえば中位コースは利益率の高い料理で構成するとともに、やや強気な価格設定にすることで効率的に客単価の向上が見込めます。
オプションを用意する
特定の商品に対してオプションメニューを用意するという方法も有効です。たとえば、ドリンクを単品で提供するだけでなく、ホイップクリームやチョコレートソース、ココアパウダーなど、料金の上乗せによって追加できるトッピングメニューやサイドメニューを提供することで客単価の向上が期待できます。
「食べログオーダー」のようなソリューションを活用し、トッピングメニューやサイドメニューなどを訴求するという方法も非常に有効な施策です。
メニュー表を見直す
既存のメニュー表を見直し、クロスセルやアップセルにつながる導線を再設計するというのも重要な施策です。販売機会の増大を目的として多くのメニューを掲載している飲食店は少なくありません。しかし「選択のパラドクス」と呼ばれるように、人間には選択肢が増えると決断が困難になるという心理作用も備わっています。 この心理を考慮して、たとえば「1ページ当たりの商品掲載数を絞りつつ、デザインや写真を工夫しながら人気商品やセットメニューへ視線を誘導する」などの対策が有効です。これにより、顧客側の心理的負担を抑えながら、客単価の向上につながります。
接客時に提案する
接客時にクロスセルやアップセルを提案するのも飲食店の客単価向上に欠かせない施策です。顧客が求めているものを見極め、お得な商品を勧めることで客単価アップを狙えます。
食後の食器を下げる際にアフターコーヒーの提案をする、注文時に本日のおすすめ商品を併せて紹介するなど、押し売りにならない適切なタイミングでの提案が大切です。したがって、接客対応に携わるオペレーションスタッフのスキルに、成功・失敗が大きく依存する方法でもあります。
長居してもらう工夫をする
飲食店では回転数の向上を重視する傾向にありますが、長く滞在している顧客の追加注文によって客単価が上昇するケースも少なくありません。そのため、店舗の居心地を良くする演出を工夫することで、客単価の向上につながる可能性があります。
ただし、追加注文につながらなければ逆効果となります。そのため、居心地の良い空間を提供するとともに、追加注文を促す接客対応マニュアルを作成したり、ポイント制を導入して追加注文がお得になる仕組みを整備したりといった施策が必要です。
飲食店で客単価アップを狙う際の注意点
客単価アップを目指すうえで忘れてはならないのが、「飲食店の持続的な発展は、顧客満足度の向上によってのみもたらされる」という点です。商品の値上げや強引なセールスによって一時的に客単価が向上してもリピーターの獲得にはつながりません。
飲食店の経営を安定化させるためにはリピーター戦略の推進が必須であり、いかにして新規客や既存顧客のロイヤルカスタマー化を促進するかが重要です。つまり飲食店の経営において顧客満足度の最大化は大きな使命です。顧客から末永く愛される店舗となるよう、時間をかけて努力することが、結果として事業の着実な成長と発展につながります。
まとめ
客単価とは、顧客一人当たりが購入した商品やサービスの平均購買額を意味する指標です。顧客一人当たりが一回の取引で支払った購買額の平均値であり、飲食点であれば「客単価 = 売上 ÷ 客数」という数式で算出されます。たとえば、あるレストランの一日の総売上高が15万円で、総来店客数が120人だった場合の客単価は1,250円です。
中長期的な客単価の動向を分析することで経営状況の変化を俯瞰的に分析できるとともに、勘や経験などの曖昧な要素に依存しない戦略の立案・策定が可能となります。客単価の向上による利益の拡大を目指す場合は、いかにして競合店にはない独自の付加価値を創出し、既存顧客のロイヤルカスタマー化を促進するかが重要です。
参考URL
客単価ってどうやれば上がるの?飲食店の客単価の上げ方とその方法|TENPOS food media
飲食店 客単価を上げる方法|Asuka Food Consulting 戦う飲食店
客単価とは?売上アップにつながるポイント解説〜飲食店経営&マーケティング基礎知識|Lnote(エルノート) Presented by 東急リバブル
飲食店の客単価アップの秘策とは?売上を上げるメニュー改善・値上げ・サービス品質改善を徹底解剖|note【公式】パーソルイノベーション株式会社
客単価とは?計算方法や上げる方法を解説 活用する方法も紹介|KitchenBASE
客単価を上げる方法を大公開~飲食店経営|CASIO HANJO TOWN
ビジネスを大きくする3つの方法| 日本マーケティングライター協会【JMWA】
売上アップ 3つの方法|IROHA
店内での客単価をあげる方法を教えてください。|J-Net21
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監修者:太田とよしき
プロフィール | 株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。 |
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