飲食店をキレイに保つ! 掃除マニュアルの作成法と押さえておきたいポイント

お客様の口に入り健康を左右する料理を取り扱う飲食店は、徹底した衛生管理が求められます。適切な衛生環境を保つための仕組みづくりや掃除マニュアルの作成は欠かせません。この記事では、掃除マニュアルの重要性や、作成により得られる効果、押さえるべきポイントなどを解説します。

目次

飲食店における掃除マニュアルの重要性

飲食店においては、清潔さが経営を左右するほどの重大な影響力を持ちます。いかに素晴らしい料理が提供されても店内がひどく汚れていては、魅力が半減してしまいます。清潔さを保ち、お客様にとって心地よい環境を整えるためには、適切なタイミングで行う清掃が重要です。

しかし、掃除のやり方をスタッフ任せにしていると、方法が不適切だったり、定期的に行われなかったりして、衛生面に問題が生じる可能性が高まります。効果的かつ効率的に店内の衛生環境を整えるためには、掃除マニュアルの整備が欠かせません。

清潔さは飲食店の評価に直結する

物があふれかえったごみ屋敷のような部屋と、モデルルームのようにすっきりと整理整頓がされた部屋とでは、後者を人が心地よく感じるのは自然なことです。

飲食店を訪れる人の多くは、ただお腹さえ満たされればいいというのではなく、素敵な空間でおいしい料理を楽しむという、普段の生活とは異なる体験を求めている場合も多くあります。雑然と物が置かれ生活感のある店内では、外食という非日常を楽しみたいお客様の期待を裏切ってしまいます。

また、飲食店で提供されるのは、お客様の体に入る料理です。清潔感のない店舗で提供される料理は、体調に悪影響を与えるかもしれないと、食べる人を不安にさせます。飲食店を訪れたお客様は、衛生面の管理が行き届いている店であるか、無意識のうちに評価しています。

衛生面に問題があると判断したお客様が、その店を再訪する可能性は低いでしょう。適切に掃除し清潔さを保つことは、飲食店の評価と業績に大きな影響を与えます。

掃除マニュアルを作る効果

掃除マニュアルとは、清掃に使用する道具や手順、完了時の状態、目的や注意すべきポイントなどを書類にまとめたものです。マニュアルがあれば、スタッフ全員が掃除完了時の状態について共通認識を持ち、そのために必要な動きを知ることができます。

また、マニュアルという文書にまとめることで、口頭で掃除の手法を伝える場合と比べ、指導内容の質が均一化されます。マニュアルに従った掃除をルーティンワークに組み込めば、店内を日々清潔に保つことに役立ちます。業務の効率を上げるとともに、望ましい衛生状態を保てるということが、掃除マニュアルを作成することで得られる効果です。

掃除マニュアルを利用するシーン

掃除マニュアルを作成しても、スタッフがマニュアルに準拠した動きをしないことには意味がありません。掃除マニュアルは作成して終わりではなく、掃除をするたびに確認することが求められます。 ルーティンワークとしての掃除と定期的に行う大規模な掃除を分けるなど、行うべき頻度別にマニュアルに記載し、該当箇所を確認してからに掃除に着手することが大切です。

また、新しいスタッフが入社した際に、掃除マニュアルを研修の資料として使うことも効果的です。研修で掃除マニュアルの内容を身につければ、店舗に採用されたばかりの新人でもスムーズに掃除ができるようになります。

掃除マニュアルを作るメリットは?

掃除マニュアルを作ることで得られるメリットについて、より詳しく解説します。

効率のよい掃除ができるようになる

掃除マニュアルには、効率的な掃除の方法が載せられています。そのため、もともと持っている掃除スキルが未熟なスタッフであっても、掃除マニュアルに従えば、他のスタッフに劣らない動きができるようになります。

誰でも同じように店内をきれいにできるので、日々安定した衛生状態を保てます。マニュアルを作成する場合には、ひとつの作業ごとに標準作業時間を設定し、目標となる時間を決めておくことも大切です。

店舗によっては、ふきんやブラシなど、掃除する場所によって道具を使い分けていることがあります。掃除箇所によって使用すべき道具を明記したり、その道具の使い方や掃除する際に気をつけるべきポイントを記載したりすると、よりスムーズに作業にあたれるようになるでしょう。

常にキレイな状態を保て、顧客満足度が上がる

マニュアルにそった掃除がルーティンワークとして行われていれば、店内の衛生環境は安定して良好な状態に保たれます。 いつ来ても掃除が行き届いている清潔な飲食店は、来店したお客様に好印象を与えます。フロア内やトイレなど目に見える部分が清潔感にあふれていると、衛生状態に配慮した店舗だと感じられ、お客様は安心して料理を楽しめるでしょう。

不衛生な環境では生ごみやトイレなどから悪臭が発生することがありますが、日々きちんと掃除がなされている店舗では、料理の邪魔になるような異臭が漂うことはありません。掃除マニュアルを活用すれば、心地よい環境でおいしい料理を堪能できる飲食店となり、顧客満足度のアップにつながります。

目的やルールを共有でき、人材育成もしやすくなる

「店内をきれいにするためにしっかり掃除をしましょう」と言葉で伝えるだけでは、「きれい」の認識についてスタッフ間でばらつきが生じ、掃除の結果が求めているレベルに達しない可能性があります。

掃除マニュアルを作成すれば目的やルールを共有できるので、あるべき掃除後の状態をスタッフへ明確に把握させられます。また、新人へ業務を教える際に掃除マニュアルを活用すれば、指導内容の均一化と指導時間の短縮が図れます。

適切な衛生管理が実現する

飲食店で毎日のように発生する生ごみは、放置すると悪臭を発したり害虫を呼び寄せたりと、店に悪影響を与えます。処理の仕方や廃棄のタイミングを掃除マニュアルで指定しておけば、悪臭や害虫などの問題発生防止につながります。

また、汚れは時間が経つと落ちにくくなるものですが、掃除マニュアルの整備によりこまめな掃除が行われていれば、清潔な環境を維持しやすくなります。

掃除マニュアルに記載すべき内容とは?

飲食店の掃除に必要な知識は、一般家庭の掃除に必要な知識とは異なります。掃除マニュアルには、掃除が必要な場所ごとに注意すべきポイントなどを記載しましょう。

厨房における掃除のポイント

厨房は、油がはねたり野菜くずが出たりと、日々汚れが溜まりやすい場所です。こまめに掃除をしないと、こびりついた汚れに雑菌が繁殖したり、害虫や悪臭が発生したりと、衛生面で問題が生じます。

厨房が不衛生なまま営業を続け、食中毒を発生させてしまうと、営業停止命令や営業禁止処分を受けることになります。お客様の信頼を裏切らず安全な料理を提供するために、厨房は特に徹底した衛生管理が必要です。

グリストラップ

グリストラップは、大量の料理を作る飲食店ならではの装置で、油や生ごみなどが直接下水に流れていかないようにする役割を果たします。内部に油や生ごみをためる構造となっているので、適切に掃除をしないとごみが詰まって逆流したり、悪臭や害虫が発生したりといったトラブルが起こります。

グリストラップの掃除におけるポイントは、毎日行うべき作業と、定期的に行うべき作業を明確にすることです。毎日行うべき掃除は、内部にたまったごみの廃棄です。そして、2~3日に1度の頻度で水面に浮かぶ油分や、汚泥などの沈殿物を除去します。油分や沈殿物の溜まり具合は店舗により異なるため、様子を見て適切な頻度を設定する必要があります。さらに、2~3か月に1度トラップ管内の清掃をします。

排水溝

排水溝は、適切な掃除をしないと悪臭や害虫の発生源になります。毎日ごみを取り除いて、ぬめりがなくなるまでブラシなどで擦ります。油汚れが付着しがちな場所なので、掃除の際は油汚れに対応した洗剤を使うのも効果的です。洗剤が残らないよう、しっかりと水で流しましょう。

シンク

シンクは生ごみや油で汚れがちな上、掃除を怠ると取り扱う食器に汚れが付着し料理の汚染につながる恐れがあるので注意が必要です。毎日ていねいに掃除し、清潔さを保たなくてはいけません。シンク内部だけでなく、取っ手の掃除も忘れずに行います。特に取っ手は不特定多数の人が触れるので、定期的に消毒と殺菌をすることが重要です。

床が汚れていると、料理にほこりやごみが入る恐れがあるだけでなく、滑りやすくなって転倒の危険が高まります。床掃除は、ごみを除去してから汚れを落とすことがポイントです。

まず、ごみやほこりや砂利などを、掃き掃除で取り除きます。次に、油汚れ用の洗剤を撒いてデッキブラシで擦ります。最後に水で洗剤や汚れを洗い流した後、モップなどで水分を拭き取ります。

冷蔵庫

冷蔵庫は、食材のかすや泥やほこりなどで汚れます。汚れを放置すると雑菌やカビが繁殖したり、食材に悪いにおいがついたりといった問題が生じます。毎日外部の水拭きを行い、取っ手はこまめに除菌します。同様にゴムパッキンも毎日の掃除が必要です。中性洗剤を使って拭いた後、水拭きと乾拭きをし、アルコールで除菌します。庫内は定期的に拭き掃除をして、清潔さを保ちましょう。

換気扇

換気扇は、調理中に気化した油が付着して汚れが蓄積していきます。毎日汚れが溜まるのに掃除は後回しにされがちな箇所なので、掃除マニュアルに手順や頻度を明記することが大切です。掃除のタイミングは半年に1度が目安ですが、油を使った料理の多い店舗などは頻繁に掃除をした方がいいケースがあります。

逆に、ドリンクの提供がメインで換気扇をあまり使わない店舗などは掃除のペースを落としていい場合もあります。掃除を怠りすぎると、溜まった油が換気扇から垂れてきて料理を汚染したり、火災の原因になったりすることがあります。そのような事故が起こらないよう、店舗に合った適切なタイミングを設定することが大切です。

客室・フロアにおける掃除のポイント

お客様の目につく客席やフロアは、店舗の印象を決める重要な場所です。ほんのわずかな時間放置していた汚れをお客様に見られ、常に汚れている店と思われてしまうこともありえます。 徹底した掃除で、常に清潔さを保たなくてはいけません。クオリティ・サービス・クレンリネスの頭文字をとったQSCは、飲食店を経営する上で必ず押さえておくべき大原則です。

トイレ

トイレは汚れやすい上に、衛生状況が店舗の印象を左右するので、重点的に掃除すべきポイントです。営業時間内でも定期的に掃除し、常に清潔な状態に保つことが重要です。

窓は、店に入る前からお客様の目につく場所です。窓が汚れていては、衛生面の不安を感じ店に入る気が失せてしまうかもしれません。水拭きで汚れを落とした後、拭き筋が残らないよう乾拭きで磨き上げましょう。

店内の床は、砂や食べこぼしなどで日々汚れます。四隅はほこりなどのごみが溜まりがちなので、営業前後にていねいに掃除をしましょう。床の材質により掃除に適した道具や方法が異なるので、マニュアルに明記することが大切です。

テーブルや座席シート

テーブルや座席シートは、開店前後だけでなく、お客様が入れ替わるタイミングできれいにすることが重要です。掃除の頻度は多くなりますが、おざなりにせずマニュアルに沿った掃除を徹底することが重要です。

エアコンの吹き出し口

エアコンの吹き出し口は、適切な掃除を怠ると悪臭を発し、お客様に不快な思いをさせてしまいます。水拭きの後に乾拭きをするのが基本の手入れ方法ですが、年に1度は専門業者のクリーニングを受けることをおすすめします。

飲食店の掃除マニュアルを作るポイント

マニュアルの作成には、コストも時間もかかります。せっかく手間をかけて作った掃除マニュアルでも、分かりにくかったり使いにくかったりしては、スタッフに活用してもらいにくくなります。掃除マニュアルの効果を最大限に発揮させるために、押さえておくべきポイントを確認しましょう。

マニュアルは持ち運びサイズの大きさも準備する

掃除マニュアルは、掃除をする都度確認することが求められます。そのため、掃除マニュアルはすぐに確認できるように、持ち運べる大きさの物をすべてのスタッフに配布することが望ましいです。

ユニフォームのポケットに入れられるサイズであれば、業務中常に携帯できます。スタッフがいつでもすぐに掃除マニュアルを確認できる体制を整えておけば、マニュアルの効果を発揮しやすくなる上に、確認にかかる時間が短縮できるので効率面でもメリットがあります。

写真や絵を入れる

掃除マニュアルは、誰が見てもわかりやすく、同じ認識を持てるものであることが求められます。そのためには、文章だけではなく写真や絵を用いて説明すると効果的です。

使う道具や、掃除後の状態など、言葉で説明を受けるよりも写真を見た方が分かりやすい事柄は多数あります。手順も、写真やイラストを用いると、文章のみの説明よりも直感的に理解しやすくなります。また、マニュアルに記載された掃除後の写真を目標とすることで、どのスタッフでも一定の衛生環境を保てるようになります。

まとめ

掃除マニュアルを整備することで適切な掃除が行き届いた店舗は、お客様に心地よいサービスを提供でき、集客力の向上が期待できます。そのためにも、分かりやすく確認しやすい掃除マニュアルを作ることが大切です。

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参考URL

店舗のレンジフードクリーニングはどれくらいの頻度で行うのがベストですか? | 美建社 | 岐阜 大垣にある清掃会社
飲食店の清潔さは経営指標!衛生管理の重要項目4点をおさえる|USENの開業支援サイト|canaeru(カナエル)
飲食店の清掃マニュアルの作り方と活用するポイント | クックビズ総研
飲食店のクレンリネスとは?徹底した衛生管理の3つの実施手順 | クックビズ総研
厨房のグリストラップからフロアまで。飲食店の清掃ポイントを一挙ご紹介 求人飲食店ドットコム
クレンリネスを習慣化!飲食店に必要なマニュアルとチェックリスト|開店ポータルBiz
飲食店の「クレンリネス」NGあるある!衛生面に配慮した店舗運営について考えよう|開店ポータルBiz
【店主に聞きました】飲食店の清潔感はマニュアル作成と効率清掃法で決まる! - 店サポ - 飲食店 居抜き店舗 専門情報サイト
繁盛する飲食店は掃除を重要視している!その理由と清掃のポイントとは? | 飲食店経営PRO
飲食店が食中毒を発生させないための7つのチェックポイント | 花王プロフェッショナル 飲食店経営と衛生管理を応援する【ご贔屓ナビ】
飲食店お掃除マニュアル!クレンリネスを徹底する重要性と繁盛店が重視しているポイント|飲食店なんでもスクエア
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グリストラップの仕組み・構造について|知っておくべき部品名と役割や清掃についても紹介 |アイエスジー株式会社
厨房掃除のやり方と見落としやすいポイント|アイエスジー株式会社
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衛生の基礎知識「洗浄・除菌」 | Youki Style Magazine(容器スタイルマガジン)
清潔さは大切ですか?アカデミーリサーチ vol.6 「飲食店」あれこれ徹底調査 | 調査 | 一般財団法人サニクリーンアカデミー
店舗の清掃フローどう決める?スタッフ全員で徹底するためのポイント|YOURMYSTAR STYLE by ユアマイスター

監修者:原島純一

プロフィール

株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。
また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。
2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。
また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。

サイトURL

https://c-staydream.com/

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