飲食店の経営を成功させるための勉強とは?繁盛店の分析方法も紹介

衣食住に関わるビジネスは需要が消滅する可能性が低いものの、市場の競争が非常に激しい分野です。飲食業界で成功を目指すのであれば、財務・会計やマーケティング、マネジメントなどに関する知見を深めなくてはなりません。本記事では、飲食業界が抱える課題について解説するとともに、飲食店の経営者が勉強すべきポイントを紹介します。

目次

飲食店経営における課題

新型コロナウイルスの感染拡大や生産年齢人口の減少による人材不足、少子高齢化に伴う就業者の高齢化、ウクライナ情勢の悪化による物価上昇と円安など、国内ではさまざまな社会問題が顕在化しています。このような社会的背景から多くの産業が苦境に立たされており、なかでも深刻な客離れに悩まされているのが飲食業界です。

帝国データバンクが2021年1月に公表した調査によると、2020年における飲食店の倒産件数は780件と過去最多の水準となりました。2022年の倒産件数は行政支援の効果等もあり低水準で推移しましたが、厳しい状況に立たされている飲食店はまだまだ少なくありません。

また、現代はインターネットの普及によって購買行動に「Web上での情報検索と口コミの共有」が加わり、市場の成熟化と相まって競合店との差別化が困難となっているのが飲食業界の実情です。このような時代のなかで飲食店が持続的に発展していくためには、新しい時代に即した集客方法や競合店にはない魅力的なメニュー開発、資金調達手段の確立などに取り組まなくてはなりません。そして、これらの課題を解決するためには、以下に挙げるポイントを継続的に学ぶ必要があります。

飲食店経営を安定させるために最低限勉強するべきこと

経営基盤を安定させるためには、「財務・会計」と「マーケティング」に関する知識が不可欠です。これら2つは飲食業に限らず、どのような事業領域においても学ぶべき必須の知識といっても過言ではありません。

財務・会計の知識

経営戦略と財務・会計は表裏一体の関係にあり、事業活動には必ず利益と損失の両方が伴います。経営者が財務・会計の知識に乏しければお金の流れを理解できず、キャッシュフローの悪化や過剰在庫、黒字倒産などを招く要因となりかねません。

とくに貸借対照表と損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書は事業の成績表であり、経営者は最低でもこれら3つの財務諸表を読む知識が求められます。たとえ個人事業規模の飲食店であっても、簿記の勉強を通じて借方と貸方の仕訳や勘定科目を学び、財務や会計領域の知識を深めるプロセスが必要です。勉強方法は日商簿記検定を受験する、簿記のテキストやWebサイトを見て学ぶといった方法があります。

マーケティングの知識

飲食店で売上を拡大する方法は「新規顧客の獲得」「顧客単価の上昇」「購買頻度の向上」の3つです。これを実現するためはマーケティング戦略の仕組化が欠かせません。マーケティングとは、商品を販売する構造やサービスの認知度向上、集客の仕組みづくりなどの総合的な販売促進戦略を指します。

こうした施策を通じて消費者の潜在ニーズを捉え、競合店にはない付加価値を創出することがマーケティングの目的です。マーケティングの知識を得る主な方法としては書籍やWebサイト、セミナー、競合店の分析などが挙げられます。また、食べログの店舗会員になれば、PRやネット予約による効率的な集客が可能となります。



飲食店の経営において勉強しておいた方が良いもの

飲食の経営者が学ぶべき要素は、財務・会計とマーケティングの領域だけではありません。その他にも勉強しておきたい分野として「マネジメントの知識」と「商品開発の知識」が挙げられます。

マネジメントの知識

事業領域におけるマネジメントとは、人的資源・物的資源・資金・情報といった経営資源を効率的に活用し、企業理念や経営ビジョンの実現を推進することです。飲食店が発展していくためにはオペレーションの最適化や適切な人員配置、人材教育の仕組み化、労働環境の改善といったさまざまな施策が求められます。

組織や店舗の経営管理を最適化し、事業の拡大や集客の効率化を図ることがマネジメントの本質的な目的です。マーケティングと同様に書籍やWebサイト、セミナーなどを通じて組織管理の知識を深めるのが基本的な学び方となります。

商品開発の知識

飲食店が売上を伸ばすには、新規顧客の獲得と既存顧客を飽きさせないための施策が必要です。そのためには、競合店にはない顧客体験価値を提供しなくてはならず、他店との差別化につながる商品開発が求められます。新商品を開発する際はコンセプトを明確化し、原価率や季節性などを考慮しながら設計を進め、スタッフや常連客などからフィードバックを得て商品化するというプロセスを辿るのが一般的です。

飲食店経営の勉強は繁盛店の分析から始まる

現代はあらゆる業種においてデジタル化が加速しており、オンライン上のチャネルを戦略的に活用する飲食店も少なくありません。しかし、飲食店は依然としてイートインを中心とする地域密着型のビジネスモデルであるため、同じ商圏の競合店調査が非常に重要度の高い経営課題となります。

競合店調査の重要性とは

競合店調査とは、商圏内にあるライバル店の動向や特徴などを調査・分析するプロセスを指します。飲食店が商圏内の消費者に選ばれる店舗であるためには、競合店にはない独自の付加価値を提供しなくてはなりません。 そのためには競合店のジャンルやターゲット層、営業時間、立地条件などを分析し、どのようにして差別化を図るのかを具体化するプロセスが必要です。その調査結果に基づいて戦略や施策に落し込めれば、商圏内の競争優位性を確立する一助となります。

競合店調査で見るべきポイント

競合店調査の目的は競合他社の強みと弱みを把握し、自店舗の差別化戦略に活用することです。そのため、店舗の外観や内観、メニューや価格帯、接客対応、サービスの品質、駐車場の広さ、商圏全体から見た立地といったポイントを分析し、長所・短所を明確な言語と数値に落とし込む必要があります。 具体的な分析手法としては、重要度の高い指標をランク付けする「ABC分析」や、「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」の各要素を分析する「SWOT分析」などが挙げられます。

どのように自店舗の経営に活かすか

競合店調査の目的は分析結果を自店舗に応用することであり、ライバルの長所と短所を分析して、それをどう経営体制に活かすかが重要な課題です。長所からは学びを得て自店舗に適した形式にアレンジし、短所については同じような欠点を抱えていないか省みるとともに、そのポイントを差別化できないか考えるといった姿勢が求められます。

そして、実行するべき施策に応じた勉強をすると同時に、「計画(Plan)」→「実行(Do)」→「評価(Check)」→「改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続ける継続的な改善に取り組まなくてはなりません。

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大や人材不足、就業者の高齢化、ウクライナ情勢の悪化に伴うインフレなど、さまざまな社会的背景から多くの飲食点が苦境に立たされています。このような時代のなかで飲食店が生き残るためには、独自の顧客体験価値を創出しなくてはなりません。そのためには、経営者が財務・会計やマーケティング分野の知識を深め、マネジメントの最適化を図るとともに他店にはない商品を開発するプロセスが必要です。そして、競合店調査によって得た知見を自店舗に応用することで、ニューノーマル時代を勝ち抜く店舗をつくり上げる一助となるでしょう。

参考URL

飲食店の倒産動向調査(2020 年)|TDB
【飲食店経営者の勉強法】お店の課題に合った勉強で売上アップする方法 ||Airレジ マガジン
アフターコロナの飲食店が抱える3つの課題とその解決策。キーワードは“効率化”?|株式会社Showcase Gig(ショーケースギグ)
人口減少社会を考える ~希望の実現と安心して暮らせる社会を目指して~|厚生労働省
統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-|総務省
TSRデータインサイト| 東京商工リサーチ
「経営」を知っているかどうかに掛かっている飲食店の開業…どんな勉強をすればいいの?|canaeru(カナエル)
「飲食店を経営するために勉強しておいた方がいいことは何ですか?」|みやじま税理士事務所
初心者が経営の勉強【何から手をつけるべきか?】始める方法を解説|セーシンBLOG
飲食店で集客を成功させるために不可欠な基礎知識とアイデア20選|ucc
伝説のマーケターが提唱する「売上を増やすためのたった3つの方法」を解説!|マイスピーブログ
ビジネスを大きくする3つの方法 |日本マーケティングライター協会【JMWA】
マネジメントとは? 【意味を簡単に】経営、具体例、役割、スキル、種類|カオナビ人事用語集
繁盛店の看板メニューの特徴は?押さえておきたい作り方のポイント|クックビズ総研
飲食店のメニュー開発はこの法則で行う!メニュー開発の役立ちコラム|ucc
飲食店の水道光熱費の比率はどれくらい?削減方法とあわせて解説!|Food's Route Magazine
飲食店の売上アップのアイデア11選!【方程式を利用しよう】|CAROT(キャロット)
飲食店の売上アップにつながる11のアイデアをご紹介!アイデアを実施する手順も解説 |アプリの学校
飲食・小売店の「競合分析」に必要なデータは、たったの2種類|Airレジ マガジン
課題を見える化する店舗分析とは?流れと具体的な手法3つを紹介|LISKUL
競合店の調査方法 | 評価すべき項目は何?【飲食店分析チェックシート付き】|店舗経営レシピブック
競合店調査の具体的な方法を教えてください。 | ビジネスQ&A |J-Net21
マンガでわかる「SWOT分析」|経済産業省 中小企業庁

監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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