飲食店の席数はどれくらい? 目安や決め方とは

飲食店の開業にあたり、席数が決まらずに困っていませんか?飲食店における適切な席数は業態や客席坪、さらには目標とする売上により異なります。本記事では、飲食店の席数を決める計算方法や席数から売上を試算する方法、レイアウトやニューノーマルに関する注意点を解説します。

目次

飲食店における座席数はなぜ重要?

飲食店の経営において、席数をどのくらい設けるかは重要なポイントです。なぜなら、席数によって確保しなければならないスタッフの数が変わり、見込める売上にも影響するためです。加えて近年では、新型コロナウイルス感染防止対策として、ソーシャルディスタンスの確保や空調設備の規模なども考慮する必要があります。

また、席数により管理コストも大きく変わります。これらのことから、座席数は適切な方法を用いて決める必要があり、むやみやたらに多すぎても少なすぎても経営に良い影響を与えません。質の良い空間を作るだけでなく、売上向上にも効果的な席数の決定は、自店に合った適切な計算方法を用いて行いましょう。

飲食店の座席数を決める3つの計算方法

飲食店の席数を決めるには、一般的に3つの計算方法があります。ここではそれぞれの計算方法を詳しく解説します。

1坪あたりの座席数から計算する

ここでは、まず厨房面積比から客席坪を求め、その客席坪から席数を求めます。以下の手順で計算してみましょう。

厨房面積比から客席坪を求める

飲食店における席数を決める際にポイントとなるのが、客席の坪数です。なぜなら、飲食店はその業態によって厨房面積比が大きく違い、店舗全体の面積に占める客席坪も変わってくるからです。厨房面積比の一般的な目安は、主に以下の通りです。

  • 調理スペースが必要になる幅広いメニューが豊富なレストラン
  •   厨房30%~40%:ホール70%~60%
  • ある程度の調理スペースで補える居酒屋やイタリアン・フレンチ・和食レストランなど
  •   厨房20%~30%:ホール80%~70%
  • メニューが絞られているバー、カフェ、うどん・そば店など
  •   厨房10%~20%:ホール90%~80%

上記はあくまで目安であり、導線や提供スピード、ホールの演出、メニューにより広さのバランスを考えます。

「坪数×1坪あたりの席数」で席数を求める

上記の客席坪数(ホールの坪数)をもとに、実際の席数を求めます。この際、「坪数×1坪あたりの席数」で算出します。1坪あたりの席数はレイアウトにより異なりますが、主に以下を目安とします。

  • 高級店など、ゆったりとしたレイアウトの店舗:1坪あたり1席
  • 一般的なレイアウトの店舗:1坪あたり1.5~2席
  • 回転率を重視した店舗:1坪あたり2.5席~2.7席

これらの目安を用いて算出すると、例えば客席坪数55坪のゆったりとしたレイアウトのレストランでは、席数は55席が望ましいです。一方、客席坪数が30坪ある大衆型店舗の一般的な居酒屋の例では、客席は45~60席という数字が算出されます。

スタッフの人数から計算する

席数に対するスタッフの人数はスムーズな営業を行うために重要なポイントですが、一般的には席数10席に対して、スタッフ1人が理想的な人数です。このことを踏まえ「スタッフの人数×10席」で、席数を計算します。例えばスタッフの人数が5人と決定している場合は50席を目安に設け、反対に席数が客席坪数から50席と算出されたらスタッフを5人確保するなどの対策ができます。※あくまでも目安であり業態によって大きく前後します。

スタッフの人数と席数は密接な関係にあり、スタッフに対して席数が多すぎるとサービスの質低下につながります。反対の場合では、スタッフが手持ち無沙汰になり無駄な人件費が発生する原因となることも考えられます。適切な割合で席数やスタッフの人数を決めましょう。

目標売上から計算する

記事冒頭で席数によって見込める売上が変わることを解説しましたが、目標とする売上から席数を計算する方法もあります。この場合の計算式は「目標売上÷客単価÷回転数」です。

具体的な数字を用いて計算してみましょう。例えば、客単価が1,000円のラーメン屋において回転数が10回転だと想定します。目標売上が1日10万円の場合は「100,000÷1,000÷10」という計算式になり、席数は10席が目安になります。

一方で実際には後述する「客席稼働率」を考慮しなければ、目標売上に対する正確な席数は算出できません。この計算式で算出された席数は、あくまでも目標売上に対する目安として参考にしてください。

席数から売上を試算する方法とは

これまで解説してきたのは適切な席数を求める方法ですが、反対に席数から売上を試算する方法があります。 そのためにはまず客席稼働率を考える必要があり、そこから計算式を用いて売上を求めます。

客席稼働率を考える

客席稼働率とは、店内の客席中で何%埋まっているかという考えです。例えば店内に50席設けていても、4人テーブルに3人で座っていたりカウンターでは1席分空けて座っていたりと、すべての席が埋まることは稀でしょう。そのことから、売上試算に用いる客席稼働率は一般的に60%~70%程を設定します。

一方、空席を出さない工夫も必要です。ネット予約が可能なグルメサイト「食べログ」を活用すれば、お店の認知向上や予約数アップを見込め、客席稼働率の改善を期待できます。



席数から売上を求める計算式

客席稼働率を踏まえ、席数から売上を試算します。その際の計算式は「客単価×席数×回転数×稼働率」です。 例えば、客単価が1,500円のカフェにおいて回転数が2回、席数が30席、客席稼働率70%を想定した場合、「1,500×30×2×70%」の計算式となり、1日の売上は63,000円となります。この計算において稼働率が100%の場合、売上が90,000円でありその差は27,000円にもなります。このことから、稼働率が高いほど売上が上がり、なおかつ客単価や回転数を上げることで、さらなる売上アップが期待できることがわかります。

席数を考えるときの注意点

席数を考える際、店内のレイアウトやコロナ禍で生じたニューノーマルを意識する必要があります。これらの注意点について解説します。

レイアウトを考える

例えば、坪数の少ない店舗ではすべてを4人用テーブル席にしてしまうと、配置できる席数が減ってしまいます。また、4人用テーブルに対して2人の客数では、客席稼働率も低下します。会社員などが立ち寄る店舗でのランチでは1人で来店する人が多くなるため、ランチ営業に力を入れたいときは、カウンター席を設けたほうが席数も多くなり稼働率も上がるでしょう。テーブル席、カウンター席の配分により席数が変わるため、お店の特徴や目的に合わせたレイアウトを考える必要があります。 また、レイアウトによってはお店の雰囲気も大きく変わります。理想とする店舗や競合店・繁盛店などを参考にして考えましょう。

ニューノーマルの基準を意識する

飲食店では新型コロナウイルス感染防止対策として、パーテーションの導入やソーシャルディスタンスの確保などが求められています。こうした対策は、収束後にもニューノーマルとしてある程度定着する可能性が高く、これから開業する場合にもこの点を意識して店舗設計するべきでしょう。一般的な施策の例は以下のようなものが挙げられます。

  • テーブル間はパーテーションで区切る、もしくは1メートル以上間隔を空ける
  • テーブル席では、真正面の着席を避けるかアクリル板を設置する
  • カウンター席では、密着を避けるため適度なスペースを空けるかアクリル板を設置する

飲食店における席数は、これまでと同様に基本的な考え方を参考にしながら、ニューノーマルにも対応できるようにしましょう。

まとめ

飲食店における席数は、目標売上やスタッフの人数によって異なり、業態や店舗の広さによっても変わります。1坪あたりの席数から算出する場合、店舗全体の面積ではなく厨房面積を省いた客席坪をもとにすることが重要です。また、客席稼働率を踏まえた席数から売上の試算もできます。席数を考えるときには、店舗の特徴・目的に応じたレイアウトやコロナ禍で求められたニューノーマルな施策も意識することが大切です。

参考URL

飲食店の席数、設置する目安はどれくらい? ニューノーマルの基準もチェック|飲食店ドットコム
飲食店開業講座:席数はどれくらいで見ておけば良いの? |ご贔屓ナビ
飲食店の事業計画に欠かせない、座席数の計算方法を知っておこう| - ナシエル - 飲食企業の経営とM&Aを考えるメディア
【飲食店開業】座席数の計算方法とは?厨房面積比やレイアウトについても解説|飲食店なんでもスクエア
飲食店向けモバイルオーダーで売上向上・人手不足解消を実現|食べログオーダー
ニューノーマル時代の飲食店における席数は?売上や回転率の計算式も解説。|canaeru(カナエル)

監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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