食べ放題で利益が出る仕組みとは? 価格の設定方法や原価率の計算方法

定額で焼肉や寿司、しゃぶしゃぶなどの料理が、おなかいっぱい食べられる食べ放題。利用客からは人気ですが、飲食店側からすると利益が出るのか気になりますよね。 売上改善や集客力強化をしたいと考えている飲食店経営者に向けて、食べ放題で利益を出せる仕組みや価格の設定方法、食べ放題をやるメリット・デメリットについて紹介します。

目次

食べ放題で利益が出る仕組み

食べ放題は、お客様に満足感を与えられる一方で、飲食店が儲かる仕組みになっています。食べ放題では、時間内にどれだけ食べてもお客様が支払う金額は一定です。そのため、お客様はいっぱい食べれば元が取れると考えて、単品で注文する場合よりお得に感じます。さらに、多くの選択肢の中から好きな食べ物を好きなだけ選べるため、満足度も高くなります。

最近では食の好みが細分化され、複数人で食事をしようとなると、みんなの好きなメニューが一致しない場合も多くなりました。そういった背景から、食べ放題は好みに合わせてさまざまな料理が選べるうえ、1人あたりの料金も固定されているため、人気が高まっています。

一方、店側の立場で考えると、同じメニューを注文されるなら単品で多く注文された方が客単価の上昇に寄与し、利益につながるのではという見方もあります。また、お客様が支払うのは常に一定の金額のため、大食いのお客様が集まることで原価割れが発生し、結果としてお店が経営困難に陥るのではという懸念の声もあります。

ですが実際は、食べ放題ではお客様が元を取れないようになっており、飲食店側にちゃんと利益の出る仕組みが整っています。まず、飲食店では客単価を上げることが重要です。食べ放題にすることで、お客様は、60分や120分などの設定された時間内に好きなだけ食べられますが、料金設定は単品注文よりも高い金額で固定されています。その結果、客単価が上がり、お店の売上も向上します。

大食いのお客様しか来ない店であれば赤字になるかもしれませんが、食べ放題に来るお客様は、性別、年齢、食欲の強さのバラツキがあることが店のメリットであり、全員が大食いであるという可能性は低いでしょう。普通の大人であれば、多くても2~3人分食べたら満腹になるため、お客様が元を取るまで食べるのはなかなか難しくなっています。

常に高単価の価格帯で提供できるうえ、経費が抑えられるのも利益を出しやすい理由のひとつです。飲食店の2大経費は、食材の仕入原価と人件費です。食材の仕入れは、少量を頻繁に仕入れるより同じ食材を大量に仕入れた方が安く購入できるため、原価も抑えやすいというのが食べ放題の特徴です。

食べ放題の場合、単品で提供するよりも、調理や提供する際の効率がよいため、人件費も抑えられます。このように、食べ放題は客単価を上げながら経費を抑えられるため、店側に利益が出る仕組みになっています。

食べ放題の価格設定と原価率の計算方法

食べ放題において価格設定は重要なポイントです。原価や原価率などももちろん計算しますが、価格を設定するうえで、お客様に「お得感」を感じてもらえる価格かどうか、という点を一番に考慮する必要があります。

お得感があると感じてもらえれば、多くのお客様に来店してもらえて、結果的に店側の利益が増えます。お得感を感じてもらえるかどうかは、その地域の相場や、競合店の価格帯も意識したうえで決定します。飲食店の原価率は一般的に30%が目安と言われますが、原価率から計算して食べ放題の価格を決めると、お得感を無視した価格設定になりおすすめできません。

例えば、ホテルにあるレストランのランチビュッフェであれば、3,000〜5,000円くらいの価格帯に設定されていることが一般的です。食べ放題で提供されるドリンクやデザートなどは、意外と原価が安いので、原価率から考えるともっと安く設定しても利益は出ます。ですが、あまり安く設定しすぎると、ホテルの格が落ちてしまいます。また、ホテルのレストランではコーヒー1杯1,000円くらいするところもあるので、食べ放題で3,000円であれば、お客様からするととても安いように思えて、お得だと感じてもらえます。

なお、飲食店の原価率の計算方法については、以下の通りです。

  1. 提供する全ての食材の仕入原価を合計する
  2. 提供する全ての飲み物の仕入原価を合計する
  3. 食材と飲み物の仕入原価を合計する
  4. 合計した仕入原価を売上高で割り、100をかける

例えば、食材の仕入原価が8,000円、飲み物の仕入原価が2,000円、売上高が30,000円の場合、原価率は以下のように計算されます。 ( 8,000円 + 2,000円 ) ÷ 30,000円 × 100 = 33.33%

また、もうひとつの方法として、お店の食べ放題を一番利用して欲しいメインターゲット(例えば25歳男性)を決めて、肉料理、サラダ、デザート、ドリンクなどをどれくらい食べると満足するか、およその量とその原価を計算します。もしわかりにくい場合は、数人の実験データで割り出して決めます。その原価合計をお店が決めた想定原価率で割った金額と、お客様から見て魅力的な金額の双方を見比べて価格決定します。さらに最終的な微調整をする時は、使用する食材を一部変更する、食べ放題の時間を調整する、オーダーストップ時間の長さを調整するなどします。

また別のより簡易的な方法は、食べ放題メニューに使う料理やドリンクの原価率計算が適正であれば、料理は0.5皿単位の売価、ドリンクは0.5杯単位の売価を基に、どの料理やドリンクを1人が決められた時間内にどれくらいの量を食べ飲みするかシミュレーションして、食べ放題売価とすり合わせをして、食べ放題商品の内容決定と売価の決定をします。ターゲットイメージを平均より少し多めに食べる25歳男性にすることで、推計値を上回らないようにセーブできます。

このように、食べ放題の価格設定は原価率、お店のイメージ、その地域にある競合店の状況を加味したうえで、お客様にお得だと感じてもらえる価格にします。

食べ放題における店側のメリット

食べ放題はお客様にも満足してもらえて、店側にも利益が出るwin-winのビジネスモデルであるということを解説しました。利益が出るならやってみたいと思う飲食店経営者もいるかもしれません。ここからは、食べ放題をやるうえでの店側のメリットについて紹介していきます。

収益を得やすい

食べ放題は儲かりやすいビジネスモデルであるということが、最大のメリットです。飲食店に限らず、安く仕入れて高く売るというのが商売の基本です。

飲食店は一般的に薄利多売と言われますが、食べ放題では仕入れなどの経費を抑えつつ、客単価は高く設定できるため、1人のお客様から得られる利益が大きくなります。お客様が来れば来るほど、多くの収益が得られるのが食べ放題のメリットです。

人件費を削減できる

お客様が自分で料理を取りに行くビュッフェスタイルでの食べ放題にすれば、人件費を削減できるのもメリットのひとつです。 通常の飲食店は注文を受けてから作り始めるので、ピークの時間帯にはより多くのスタッフがいないと店が回らないため、ピーク時に合わせて多くのスタッフを手配する必要があります。一方、ビュッフェスタイルでの食べ放題の場合は、お客様のオーダー前から料理を準備しておけるため、ピーク時に向けて多くのスタッフを用意しておく必要がありません。

また、単品の注文よりも一度に作る量は増えますが、回数が増えるわけではありません。例えば、1種類のメニューを10人分まとめて作った場合、調理にかかる時間が1人分作る場合の10倍になるわけではありません。逆に、10人が全員違うメニューを頼んだ場合、それぞれ1品ずつ別の作業をすることになるため、単品で注文を受ける方が食べ放題に比べて手間がかかります。さらに、注文を取りに行ったり提供したりするホールスタッフも最低限の配置で済みます。

さらに人件費の節減を行う場合、ドリンク類の提供はドリンクディスペンサーを複数設置してセルフサービスで行い、ホールスタッフが提供や補充をしなくても良いように負担軽減するとよいです。

ただしビュッフェスタイルは、店内がある程度広く客席数を大きく犠牲にしなくてもよいスペースの余裕があるお店に向いている方式です。客席数のゆとりがないお店の場合は、ビュッフェコーナーを設置せずに、オーダーした商品を客席に届ける「オーダーバイキング方式」が向いています。

他にも、ビュッフェスタイル以外で人件費を削減できるジャンルとしては、焼肉やしゃぶしゃぶ、鍋料理が一例として挙げられます。これらは、材料を切って提供するだけで、お客様が自分で焼いたりゆでたりしてくれます。そのため、調理に必要な人件費がほとんどかかりません。

在庫管理がしやすい

食材の管理においても、食べ放題にはメリットがあります。食品には賞味期限があるので、せっかく仕入れた食材も、想定していた通りに注文が入らないと、余らせて廃棄することがあります。逆に、人気メニューは仕入れが足りなくて品切れになってしまい、機会損失につながる可能性もあります。

食べ放題の場合は仕入れる量が多くなりますが、その分大量に提供でき、余った食材を使ってアレンジした料理を自由に提供することも可能なため、食材が余りにくく在庫の回転率が高くなります。また、季節によって変動はあるものの、提供する料理は基本的に同じなので、過去のデータからいつどれくらい仕入れればよいかが把握しやすく、在庫管理がしやすいのもメリットです。

客席稼働率が高い

店の客席の稼働率においても、食べ放題にはメリットがあります。食べ放題に1人で来るお客様はあまり多くありません。家族連れや友達同士など複数人での利用を想定しているため、1組あたりの人数が多くなります。

食べ放題では時間制限を設けることが一般的なため、時間が来たら「終了なので帰ってください」と伝えられます。また、終了時間が決まっているため、次のお客様の予約が取りやすい点もメリットです。

単品でしか注文しない1人のお客様が長居すると回転率が悪くなりますが、食べ放題の場合、複数人での利用と時間制限によって、店の客席稼働率が高くなります。

さらに稼働率を高めるなら食べログノートがおすすめ!

食べ放題では収益が出やすく、人件費も抑えられ、席の稼働率も高くなるなど、さまざまなメリットがあることを解説しました。店の稼働率をさらに高く維持したいなら、食べログノートの利用がおすすめです。

食べログノートは、食べログネット予約を利用している店舗向けのサービスで、食べログネット予約を利用中の店舗は無料で使えます。

電話予約や各グルメメディアからのネット予約を、一元管理することが可能です。予約管理だけでなく、お客様の好みや記念日などを登録してサービスに活かせる顧客管理機能や、食べログページを経由せず、自社の公式サイトや公式SNSなどからネット予約を受け付けることも可能です。

早い時間に予約が入った場合も、2回転目、3回転目を予約することが可能です。紙の台帳よりも手間なく予約管理ができるため、より多くの予約を取れて、お店の稼働率をアップさせることができ、結果的に売上アップにつながります。


食べ放題における店側の注意点

食べ放題は店にとってメリットが多い一方、注意する点もあります。次項で解説していきますので、事前に確認しておきましょう。

食品ロスが多い

ビュッフェ形式の食べ放題では、なるべく品切れを起こさないように、想定される来店人数分の量よりも少し余分に作るようにします。そのため、お客様が多い土日祝日はあまり心配ありませんが、平日は土日に比べて客数が少なくなりやすいため、作った料理が消費されず余ってしまうケースがあります。また気温の上昇、室温の上昇の影響で、使用食材の劣化が進みやすくなり、廃棄が増える場合もあるので注意しましょう。

また、お客様がなるべく元を取ろうと欲張って、食べきれない量を自分のお皿に載せることが多くなりがちです。そのため、お客様が残した料理はどうしても廃棄せざるを得ない状況になり、食品ロスが多いというのもデメリットのひとつです。

テイクアウトの対応が難しい

コロナ禍で外食の機会が減り、テイクアウト需要が増えてきました。デリバリーを利用して自宅でお店の料理を楽しむ人も多くなってきています。食べ放題の場合は基本的に店内利用のみで、テイクアウトはできません。そのため、ビュッフェスタイルのままでは、お客様のテイクアウト需要に応えられないというのもデメリットです。

しかし店舗では食べ放題をやりつつ、別にテイクアウトメニューを作ることは可能です。例えば、食べ放題で人気のある料理を盛り込んだビュッフェ風オードブルや、メインのおかず2種盛り弁当、サラダ単品などをメニュー化することです。食べ放題を利用したお客様がテイクアウトをオーダーすることは比較的良くあります。

品質のイメージがよくない

食べ放題は料理が大量に提供されるので、単品メニューに比べて味の質が落ちるというイメージを持っているお客様も少なくありません。実際、飲み放題コースでは高いお酒やビールは含まれなかったり、料理も単品で頼む場合よりバリエーションが少なかったりというケースもあります。

そのため、食べ放題の場合、おなかいっぱい食べられればよくて、味にはそんなに期待していないというお客様もいます。ただ、何度もリピートしてもらうためには、一定の品質を保ち、お客様に満足して帰ってもらうように工夫することが大切です。

まとめ

食べ放題はお客様にとっても、飲食店側にとってもメリットがあるビジネスモデルです。仕入原価チェックを定期的に行い、商品構成を都度調整するとともに経費を抑えながら、客単価を維持し引き上げることで常に一定の金額でサービスを提供できます。また、食材の在庫管理もしやすく、収益を上げやすいのが特徴です。飲食店の売上改善のため、食べ放題コースを始めてみるのもおすすめです。

ただし、食べ放題は品質がよくないというイメージを持つお客様もいますので、一定の品質、特に鮮度を保って満足感を与えることを意識してください。そうすれば、リピーターになってもらえる可能性が高まります。

参考URL

食べ放題のお店はなぜ儲かる?利益率や仕組みについて解説 | とうさいブログ
大食い大歓迎!食べ放題が儲かるワケは?|USENの開業支援サイト|canaeru(カナエル)
「食べ放題でお店は潰れないのはなぜ?」と子供に聞かれたら?お金の学びになる答え方 | Mocha(モカ)
飲食店の適切な原価率は?計算方法とコントロールのコツ | みんなの飲食店開業
ドリンクバーや食べ放題、どれだけ食べれば元がとれる?気になる「原価率」と「利益率」 | 店舗BGMアプリ モンスター・チャンネル
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食べ放題の店が儲かる理由を考える | 株予報コラム
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監修者:宇津宮 正博

プロフィール

飲食店研究者、食業専門経営コンサルタント、飲食店の困ったを解決相談所大分代表者。29歳~40歳まで飲食店への食器販売を通じて飲食業界のあり方を独学で学ぶ 1989年に独立し、1989年~2023年の間に飲食店の開業店90店舗以上、経営改善支援 延べ3000店舗以上を33年間に渡り行なう。 2023年には「成功する飲食店の値上げ戦略2023」を出版した。

サイトURL

https://note.com/39168154

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