飲食店はキャッシュレス決済を導入すべき? メリットやデメリット、導入のポイントを解説
現金を使わずに代金を支払うキャッシュレス決済。利便性が高いことから、飲食店でも利用したいという消費者は多くいます。 そこで、飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリット・デメリット及び、導入する際に考慮するべきポイントなどを詳しく解説します。
目次
キャッシュレス決済とは
商品代や飲食代などを現金以外の方法で支払うのが、キャッシュレス決済です。 以前から馴染みのあるクレジットカード払いに加え、現在はQRコードや電子マネーなど、ほかにもさまざまな決済方法があります。
日本では現金による決済が一般的でした。しかし、世界的にキャッシュレス化が進んでいることから、経済産業省は2025年までに、日本のキャッシュレス決済比率を4割程度まで上昇させることを目標に掲げました。 2019年10月1日の消費税増税の際には、2020年6月30日までの9か月間、「キャッシュレス・ポイント還元事業」が実施されました。同事業に加盟した中小・小規模事業者の店舗でキャッシュレス決済した際に、消費者にはポイントが還元され、事業者は決済手数料が軽減される事業です。経済産業省によるとこの施策は「キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便性向上の観点」を加味して行われました。
(引用元:キャッシュレス・ポイント還元事業に関する消費者及び店舗向けアンケートの調査結果を公表しました|経済産業省)
このような国の後押しやスマートフォンの普及により、キャッシュレス決済を導入する店舗や消費者は増加傾向にあります。 キャッシュレス決済の比率は順調に増しており、2021年には32.5%と発表されています。
キャッシュレスの種類
現在利用されているキャッシュレス決済には、主に4種類あります。
クレジットカード:従来広く利用され、最も普及しているキャッシュレス方法です。お店への支払いは、カード会社が立て替えて行います。専用端末でカードを読み取って決済します。必要となる端末のコストがかかることもありますが、クレジットカードの利用者は多いので、導入によってお店の利便性は高まるでしょう。
デビットカード:支払いの際、カード保有者の銀行口座から利用額を直接引き落とされるカードです。そのため、カード保有者の銀行口座が残高不足だと、支払えないこともあります。クレジットカードのような審査が基本的に不要なため、幅広い人が使えるのが特徴です。クレジットカードと同様に、カードを読み取る端末が必要です。
QRコード:スマートフォンを利用した決済方法で、「スマホ決済」とも呼ばれています。お店側でQRコードを用意し、それを顧客がスマホで読み取る方法と、顧客がスマホで提示するQRコードを、お店側が読み取る方法があります。 クレジットカードやデビットカードと違い、読み取り専用端末が不要なサービスもあるので、初期導入費用が少なくて済みます。
電子マネー:現金をデジタル化したデータを使って決済する方法です。お店が専用端末で読み取り、カードやスマートフォンにチャージ(入金)されたお金のデータから支払いが行われます。 電子マネーには、JRなどの交通系、流通系、クレジットカード系など、発行する会社によって多くの種類があります。
飲食店の8割以上がキャッシュレス決済を導入済み
ここでは、近年の日本におけるキャッシュレス決済に関する、ふたつの調査結果を紹介します。
ひとつは、2019年3月に日本政策金融公庫が実施した、「飲食店でのキャッシュレス決済の意向・利用状況」についてのインターネット・アンケートです。 その結果、飲食店での支払いに、「キャッシュレス決済をできるだけ利用したい」と答えた消費者の割合は51.9%でした。 また、飲食店でキャッシュレス決済を利用することがあると回答した割合は、「ふだんの食事」で60.5%、「友人・知人等との飲み会や食事会」で46.9%でした。
もうひとつは、経済産業省が2021年3月に中小事業者を対象に行った「キャッシュレス決済 実態調査アンケート」です。 回答した事業者の中で、キャッシュレス決済を導入している飲食店は85.4%に上ります。 キャッシュレス決済の種類別では、クレジットカードが58.3%、交通系電子マネーが33.2%、非交通系電子マネーが32.8%、コード(QRやバーコード)が68.4%でした。
このように、飲食店でキャッシュレス決済を利用したいと考える消費者は過半数に達しています。一方の飲食店は、消費者の要望に応じる意味もあって、8割以上で何らかのキャッシュレス決済を導入しています。
キャッシュレス決済を導入するメリット
では、キャッシュレス決済を導入して、お店が得られるメリットを具体的に見てみましょう。
スムーズな会計で業務効率化が向上する
会計で顧客との現金の受け渡しに、手間取ることは少なくありません。 財布から現金を取り出すまで待たされたり、小銭を追加で支払われたりして余計な時間がかかると、レジ前に会計待ちの列ができるかもしれません。 さらに、支払われた現金を数え、お釣りがあれば釣り銭を確認する必要があります。どんなに注意していても、数え間違えてしまうこともありますし、お客様と認識の相違が生じてトラブルになることもあるでしょう。
キャッシュレス決済では、現金の受け渡しの回数が減り、会計にかかる時間も短縮できます。現金の数え間違いも少なくなります。会計がスムーズになることで、業務の効率化が向上するでしょう。 また、釣り銭に使う小銭が少なくて済むので、銀行などで用意する手間が減り、両替にかかる手数料も節約できます。
顧客ニーズをとらえることで集客につながる
先に紹介した日本政策金融公庫のアンケートでも明らかなように、飲食店でのキャッシュレス決済は多くの消費者からニーズがあります。キャッシュレス決済を導入すれば、現金しか使えないことを理由に敬遠していた消費者を取り込むことにつながるでしょう。
また、外国人観光客の多い立地にあるお店は、キャッシュレス決済を導入していないと、顧客を逃してしまっている可能性があります。なぜなら、多くの外国人観光客にとっては、現金よりもキャッシュレス決済を利用するのが一般的だからです。
客単価アップが期待できる
キャッシュレス決済は、消費者の購買意欲を上げる傾向があると言われます。現金払いでは、持っている現金で買える金額のものを選ぼうとしますが、キャッシュレスなら手持ちの現金を気にせず支払いができるからです。
そのため、キャッシュレス決済は、衝動買いを促したり客単価を上げたりする結果につながる可能性があります。飲食店でも同様に、予算オーバーの料理を頼んだり、注文する量が増えたりして、客単価アップが期待できます。
非接触なので感染対策になる
不特定多数の人が触れる紙幣や硬貨が、不衛生であるとは以前から指摘されていました。細菌やウィルスが付着している可能性があるからです。昨今のコロナ禍以降は、より衛生面に厳しくなり、現金の受け渡しを手から手ではなく、トレーなどを介して行う店舗なども見受けられます。 特に飲食店では、コロナに限らずあらゆる感染症や食中毒を防ぐために、衛生面に細心の注意を払わなければなりません。
その点においても、キャッシュレス決済は現金を扱わず、会計時に非接触でのやりとりが可能になり、感染症対策として大いに役立ちます。 カードを店員が受け取って操作する形式の場合は、若干の接触が発生する場合はありますが、QRコード決済や顧客が専用端末にカードを入れたり近づけたりして行う決済であれば、非接触が可能になるでしょう。
保管する現金が減るため防犯対策になる
大切な売上金を、お店に保管するにせよ、自宅に持ち帰るにせよ、盗難や強盗の対象となる可能性はあります。場合によっては、従業員などが横領するリスクもあります。
しかし、キャッシュレス決済を導入すれば、お店からは現金が少なくなります。その結果、空き巣に対する盗難対策、現金を銀行などに移動させる際の強盗対策になります。現金管理に要していた人件費や手間も削減できるでしょう。
キャッシュレス決済を導入するデメリット
キャッシュレス決済の導入には、メリットだけでなくデメリットもありますので、主なものを解説します。
導入に手間やコストがかかる
キャッシュレス決済を導入するには、手続きに必要な書類をそろえることに始まり、端末などの設置や、取り扱い方を覚え実際に使いこなせるようになるまで、時間や手間がかかります。
また、導入する端末費用や登録料などのコストがかかります。端末費用は導入するサービスによって差が大きく、およそ3~5万円のものが多いですが、なかには無料から10万円ほどのものもあります。ほかにも、お店に新たにインターネット回線を設置しなければならないことがあったり、追加費用がかかったりすることもあるでしょう。
加盟店手数料が発生する
キャッシュレス決済のサービスを利用すると、決済代金(売上)に対して手数料が発生します。手数料は、サービスを提供する業者や決済の種類によって異なります。 クレジットカードは3~5%、電子マネー(交通系・非交通系とも)で3%台、コード決済は0~3%台前半が多くなっています。
売上の現金化に時間がかかる
キャッシュレス決済で支払われた代金は、一旦、決済業者(クレジットカード決済ならクレジット会社)が受け取ります。その後、手数料を差し引いた売上が、お店側に振り込まれます。ですから、顧客が支払ってから、実際に売上を現金化するまでにタイムラグが生じます。
仕入れ先への支払い時期などを考慮して、そのタイムラグ中で必要となる資金を手元に用意しておくようにしましょう。
キャッシュレス決済導入のポイント
続いては、キャッシュレス決済のメリットとデメリットを踏まえた上で、実際に導入する決済方法を選ぶ際のポイントを紹介します。
利用者の多い決済方法を選ぶ
キャッシュレス決済の主な4種類は、すでに紹介したとおりです。 ご自身のお店に、どの方法を導入したらいいのか決めかねているようなら、利用者が多いクレジットカードを選んではいかがでしょうか。 経済産業省が発表した2021年のキャッシュレス決済比率32.5%のうち、クレジットカードが27.7%と大半を占め、1〜2%程度しかないほかの方法を圧倒しています。
さらに、JCBが2021年9月に行った調査によると、キャッシュレス決済に利用するかどうかにかかわらず、クレジットカードの保有率は85.9%に上っています。飲食店でキャッシュレス決済する際、クレジットカードが利用される可能性は高いと言えます。
お店の客層に合った決済方法を選ぶ
決済方法を選ぶには、お店の客層も判断材料のひとつです。 全体的な決済比率は低いQRコードですが、スマートフォンひとつで決済ができる手軽さもあり、若い世代で多く利用されています。お店の客層がその世代であれば、QRコード決済を導入する選択肢もあります。逆に高年齢世代が多いなら、QRコード決済の導入効果は薄いかもしれません。 また、外国人利用客が多いのであれば、各国でよく利用されている決済サービスの導入を検討しましょう。
初期費用やランニングコストを考慮する
キャッシュレス決済を導入すると、初期費用のほかにも、月々のインターネットの通信費用や決済手数料などのランニングコストがかかります。 キャッシュレス決済による売り上げの増加を見込みつつも、お店にとって負担にならない金額を考えて決済サービスを選びましょう。初期費用が比較的抑えられるQRコード決済をまず取り入れてみてから、他の決済方法の導入を検討するのも一案です。
まとめ
キャッシュレス決済には主に、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、QR/バーコードがあります。 キャッシュレスにすることで、会計がスムーズに処理できる、感染対策になるなど、さまざまなメリットがあります。一方、導入のための初期費用やランニングコスト、売上の現金化に時間がかかるといったデメリットもあるので注意が必要です。導入の際には、お店の客層や予算に合った決済方法を選びましょう。
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参考URL
2021年のキャッシュレス決済比率を算出しました|経済産業省
飲食店でキャッシュレス決済を積極的に利用したい消費者が5割|日本政策金融公庫
キャッシュレス決済 実態調査アンケート 集計結果|経済産業省
【クレジットカードに関する総合調査】|株式会社ジェーシービー
キャッシュレス決済のメリットとは?決済の方法やデメリット、導入方法を解説!|NECソリューションイノベータ
キャッシュレス決済の導入費用はいくらかかる?店舗導入にかかるコストを徹底比較|ワイマガ
キャッシュレス調査の結果について|経済産業省
飲食店でキャッシュレス決済を導入し売り上げUP!導入のメリットを解説|auPAY
飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリットとデメリットを解説|PayPay
飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリット・デメリットは?|株式会社ユビレジ
キャッシュレス決済の“いろは”|経済産業省
キャッシュレス化が飲食店で進展中!導入メリットを詳しく解説|TableCheck
キャッシュレス決済とは?種類と仕組み、導入メリットを解説|SB Payment Servic
新型コロナウイルスが飲食店に与える影響とキャッシュレス決済が衛生対策になる理由|auPAY
飲食店が導入できるキャッシュレス決済の種類と導入するメリット・デメリット|株式会社インパクトブルー
キャッシュレス決済を導入するメリット・デメリットとは?種類・しくみ・導入費用まで徹底解説|ペイサポ
キャッシュレス決済を導入するには?|Alpha Note
キャッシュレス決済のメリット・デメリット(お店編)|習志野市
2021年度消費者インサイト調査 報告書|PAYMENTSJAPAN
キャッシュレス決済の導入でかかる費用や手数料とは?節約方法も紹介|マネケル
監修者:太田とよしき
プロフィール | 株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。 |
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