飲食店にできるSDGs施策! 取り組む必要性や事例も紹介

昨今、企業に対してSDGsへの貢献を求める社会的な傾向が強まっています。飲食店もそれは例外ではありません。実際、飲食店についても、環境保護や食品ロスの削減、社会貢献など、SDGsに関連する課題は数多く存在します。そこで本記事では、飲食店にできるSDGs施策や具体的な取り組み事例などについて解説します。

目次

SDGsとは

SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年に国際連合が採択した17の目標です。SDGsでは、この17の目標達成を通して、2030年までに世界の課題の解決と持続可能な発展を実現することを目指しています。17の目標の内容は以下の通りです。

  1. 貧困をなくそう
  2. 飢餓をゼロに
  3. すべての人に健康と福祉を
  4. 質の高い教育をみんなに
  5. ジェンダー平等を実現しよう
  6. 安全な水とトイレを世界中に
  7. エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
  8. 働きがいも経済成長も
  9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
  10. 人や国の不平等をなくそう
  11. 住み続けられるまちづくりを
  12. つくる責任、つかう責任
  13. 気候変動に具体的な対策を
  14. 海の豊かさを守ろう
  15. 陸の豊かさも守ろう
  16. 平和と公正をすべての人に
  17. パートナーシップで目標を達成しよう

引用元:外務省「持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組」

SDGsに取り組む必要性

日本の人口は減少傾向にありますが、世界の人口は爆発的に増え続けています。国連の推計によると2015年に73億人だった世界の人口は2030年には85億人に達する見込みです。

こうした中、SDGsに取り組むことは、環境破壊、エネルギー問題、貧困や飢餓など、世界中で起こっているさまざまな課題を解決するために必要です。これらを解決して持続可能な社会を構築するためには、国境を越えて取り組むことが必要なため、SDGsでは国・企業・個人など、さまざまな単位の人々の協力が求められます。社会の重要な構成員である企業にも、社会的責任としてSDGsへの協力が要求されるようになりました。SDGsに取り組むことは、自社の イメージアップにもつながるため、昨今では多くの企業がWebサイトなどでその活動や貢献を公開しています。

SDGsのために飲食店ができること

飲食店はSDGsを達成するためにさまざまな方法で貢献できます。個人経営など小規模なお店でも可能な内容もあるので、お店の規模にかかわらずできることに取り組みましょう。

食品ロス削減

飲食店は食品ロスを減らすことを通してSDGsの達成に貢献できます。これは目標12、「つくる責任 つかう責任」などに関係する取り組みです。農林水産省によれば、日本の事業系食品ロスは年間275万トン、そのうち外食産業では81万トンもの食品ロスが発生しています。

食品ロスを減らすための方法としては、食材の仕入れや調理方法、メニュー構成を見直すことなどが挙げられます。具体的には、飾りつけのためだけに食材を使うのをやめたり、データ分析を通して来店者数や各メニューの需要などを予測して、食材の仕入れを最適化したりといった取り組みです。食品ロスを減らすことは無駄な経費を節減して利益率を向上させるためにも欠かせません。

プラスチックごみ削減

大量のプラスチックごみは、海洋汚染や土壌汚染、大気汚染などの環境破壊につながります。また、鳥や魚、ウミガメなどがプラスチックごみを食べてしまうことで、海洋生態系へ影響が出ることも懸念される点です。プラスチックごみの削減に取り組むことは、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標14「海の豊かさを守ろう」、目標15「陸の豊かさも守ろう」などへの貢献につながります。飲食店としては、プラスチック製のストローの提供を止めたり、テイクアウトで使用する容器や袋を再利用可能な素材にしたりすることでプラスチックごみの削減が可能です。

FAXなどの資源削減

飲食店は、FAXなどで使用する紙の量を減らすことで、資源の無駄遣いの削減に貢献できます。こうした取り組みは、目標12「つくる責任 つかう責任」、目標13「気候変動に具体的な対策を」などに関わるものです。

例えば、食べログが店舗会員向けに無料で提供する仕入れ発注サービス「食べログ仕入発注」を利用すれば、スマートフォンから発注業務が利用できるようになるので、FAXを使う必要がなくなり、紙の使用を抑制できます。FAXに比べて発注業務にかかる時間を短縮したり、発注履歴をデータで確認したりすることも可能になるのでおすすめです。


フェアトレード商品の利用

飲食店が消費するコーヒー豆やチョコレート、バナナなどの食材の中には、不当に安い価格で取引されているものが多く存在します。こうした不公正な取引は、発展途上国の生産者や労働者の賃金、労働環境の改善を阻害する要因のひとつです。積極的にフェアトレード商品を利用することで、目標1「貧困をなくそう」に貢献し、世界の貧困問題を解決するための一助になれます。

ジェンダー平等な雇用

日本国内においても、女性やLGBTQ+などのマイノリティの人々に対する偏見や不平等は依然として残っているのが現状です。こうした不平等は、女性の貧困などの問題へとさらにつながっていきます。飲食店としては、ジェンダーにかかわらず雇用の機会を広く提供することで、目標5「ジェンダー平等を実現しよう」をはじめ、目標1「貧困をなくそう」、目標8「働きがいも経済成長も」など幅広い社会問題の解決に貢献可能です。また、お手洗いなど、性別関係なく使用できるものを用意することなども有効な対策として挙げられます。

子ども食堂の開催

子ども食堂とは、経済的に困窮している家庭の子どもたちに対して、無料または低料金で食事を提供する場所です。先進国である日本でも、困窮して満足においしい食事を取れない子どもは多いため、子ども食堂の活動は全国的に広がっています。子ども食堂を開催することで、目標1「貧困をなくそう」、目標2「飢餓をゼロに」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標11「住み続けられるまちづくりを」などに貢献可能です。必ずしも常時開催する必要はないので、1ヶ月に1回など負担の少ない範囲で始めてみてはいかがでしょうか。

飲食店が実際に取り組んでいるSDGsの事例

続いては、自店舗で取り組む際の参考にするために、SDGsの達成に向けた取り組みについて具体的に紹介します。

【カフェ】紙製ストロー・容器の工夫

昨今ではプラスチックごみを削減するために、紙製ストローを活用するカフェが増加傾向です。あるいは、容器のフタをストロー不要のタイプにしたり、テイクアウトの利用客にステンレス製のタンブラーを貸し出したりして、そもそもストローがいらないように工夫しているカフェも存在します。クッキー生地などで食べられる容器やカトラリーを提供するなど、ユニークな取り組みをしているお店もあるようです。

【カフェ】生活困窮者への余剰食材の寄付

どれだけ需要予測に取り組んでも、完全に余剰食材を0にするのは難しいのが現実です。そこである企業では、グループ店舗や卸事業で発生した余剰食材を、NPO団体を通して生活困窮者へ寄付しています。また、まだ食べられるのに廃棄してしまいそうな商品を出品し、それを購入したい消費者を募集するフードシェアリングサービスも並行して活用中です。このような取り組みを通して、同社はサプライチェーン全体の食品ロス対策をしています。

【ファミレス】バイオプラスチックの利用

あるファミレスでは、脱プラスチックのために、カトラリーや容器包材にバイオプラスチックを利用しています。バイオプラスチックとは、植物を原料とした再生可能な素材で作られたプラスチックのことです。バイオプラスチックは自然分解性があるため、従来の石油由来のプラスチックに比べて環境にやさしく、現在、注目されています。

【ファミレス】コーヒーの豆かすを使用した食品リサイクル

あるファミレスでは、各店舗で発生するコーヒーの豆かすを乳牛の飼料として活用しています。しかも、この乳牛から生産された生乳は、ホワイトソースとして加工され、同店のドリアに使われているそうです。コーヒーの豆かすという、一見廃棄するしかないと思えるものにも意外な再利用の方法があることは、資源の有効活用について深い示唆を与えてくれます。

【ファミレス】販売予測による廃棄ロスの削減

あるファミレスでは、デマンドチェーンマネジメントの仕組みを導入することで、販売予測精度を高め、食材の廃棄ロスの削減に取り組んでいます。デマンドチェーンマネジメントとは、最終的な消費者の需要から遡って、商品の生産、供給、販売などの計画や管理を行う方法です。仕入れの最適化による食品ロスの削減は、SDGsと店舗経営の両方にとってメリットのあることなので、優先的に取り組むことをおすすめします。

【ファーストフード】サステナブル・シーフードの活用

ファーストフード店の中には、MSC認証マークがついたサステナブル・シーフードを導入しているお店もあります。MSC認証マークとは、海洋資源の持続可能性に配慮した漁業で穫られた天然の水産物に付与される認証マークです。MSC認証マークがついたシーフードを購入することは、そうした漁業に取り組む事業者を支援することにつながり、海の生態系の保護などを推進するSDGsに貢献できます。

【回転ずし】未成魚の養殖プロジェクト

ある回転ずしチェーンでは、未成魚の養殖プロジェクトを通してSDGsに関連する取り組みを行っています。定置網にかかった未成魚の有効活用は、漁業における長年の課題です。未成魚はすり身にするくらいしか用途がないため、無料同然で市場に売買されたり、海に戻しても他の魚や鳥に食べられたりしてしまいます。そこで同社は、定置網にかかった未成魚を人工の生け簀で1年から1年半ほど育成した後で寿司ネタとして出荷することを目指すプロジェクトを立ち上げ、その実現に向けて取り組んでいます。

まとめ

紹介したように、飲食店がSDGsに貢献する方法は数多くあります。SDGsに取り組むことは自店のブランド戦略にも役立ちますし、フードロスの削減などは経営効率の向上にもつながることです。大企業のように大掛かりな取り組みをすることは無理でも、できる範囲で皆が地道に努力することでSDGsの達成は近づきます。本記事を参考に、ぜひSDGsに取り組んでみてください。

参考URL

SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
SDGs(持続可能な開発目標)とは? 17の目標などわかりやすく解説|セーブ・ザ・チルドレン
2030アジェンダ | 国連広報センター
SDGsって何だろう?飲食店におけるSDGsへの取り組み事例と具体的アクション | 飲食店の知恵袋 | メニウくん | セルフオーダーシステム、テーブルオーダータッチパネル業界シェアNo.1
SDGsはなぜ必要?SDGsの必要性と企業にもたらすメリット | ビジネスチャットならChatwork
#44 飲食店のSDGs!取り組み事例を紹介 – ORIMAX.JPのショップブログ&お役立ちコラム
飲食店ができるSDGsとは?いち早い取り組みでお客の支持をとりつけよう | 飲食店経営PRO
やめよう、プラスチック汚染 | 国連広報センター
海のプラごみ、2050年までに世界中の魚の重量を超える恐れも | 朝日新聞 2030 SDGs
国連環境計画、農業用プラスチックによる土壌汚染の問題を指摘|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア
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海洋汚染だけじゃないプラスチックの影響 気候変動、有害物質、人権問題も… - 国際環境NGOグリーンピース
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監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com

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