飲食店における接客マニュアルの作り方! これだけは載せておきたい項目

飲食店で効率的な業務遂行や接客品質の向上を目指すためには、接客マニュアルの作成が不可欠です。この記事では飲食店における接客マニュアルの具体的な作り方とそのマニュアルの内容を従業員に徹底させる方法について解説します。

目次

飲食店の接客マニュアルの重要性

接客に関するルールや業務手順などがまとめられた接客マニュアルは、顧客満足度を高めるうえで重要なアイテムです。マニュアルの整備によって全従業員が同一品質の接客を行えるようになれば、サービスのばらつきが少なくなり、顧客満足度の向上につながります。

また、人材育成の費用と時間を削減できるのもメリットです。飲食店での勤務経験がない従業員を採用した場合、一定期間適切な教育を行わないと戦力になりません。しかし、作業の流れや手順、注意点などがまとめられたマニュアルがあれば、人材育成に費やす手間やコストを削減でき、短期間での戦力化も実現しやすいです。

飲食店の接客マニュアルの作り方

飲食店の接客マニュアルを作成する際には、なぜマニュアルを作成するのか、その理由を書き出すことからはじめましょう。そのうえで業務の流れやルールをまとめ、改善を繰り返しながらブラッシュアップを続けることが大切です。

お店のコンセプトを確認する

一般的に接客マニュアルを作る目的はなるべく短期間で従業員の接客のレベルを押し上げて来店してくれた顧客に満足してもらうことです。しかし、人によって接客の仕方がばらついてしまうのでは、お店の雰囲気を固めていくことができません。はじめにお店のコンセプトやビジョンを明確にしていきましょう。

そのコンセプトからどんな接客が必要なのか、言葉遣いはどんなふうにして、どのぐらいかしこまったものにするのかを掘り下げて決めていく必要があります。たとえば、敷居の高い高級フランス料理店と親しみのある居酒屋では、接客方法が異なります。

そのため、従業員には業務の流れやルールを教える前に、大前提としてお店のコンセプトやビジョンを理解してもらうことがとても重要です。お店のビジョンや接客の在り方が明確で分かりやすいほど、従業員が共通認識を持ちやすくなり、お客様にお店の雰囲気やパーソナリティーがしっかりと伝わり、印象に残るお店となります。

業務の流れやルールをまとめる

次に、現状における業務の流れやルールなどをまとめます。お店の準備段階から閉店後に行う業務すべてが対象です。お店によっては独自のルールや暗黙の了解があるかもしれません。そのようなルールに関しても漏れなく書き出し、明確にしましょう。

マニュアルは誰が読んでも分かりやすい内容に仕上げなくてはなりません。新人でもすぐに内容を理解できるように、なるべく専門用語や難しい言い回しを使わないことを心がけましょう。どうしても専門用語を使わなくてはならない場合には、説明書きを加えて記載するとよいでしょう。

マニュアルの改善を繰り返す

マニュアルは改善を繰り返すことで、内容がよりブラッシュアップされます。そのため、月1回や半年ごとなど、定期的に見直しや改善を行いましょう。

マニュアルは紙ベースでの共有だと印刷の手間や扱いが面倒なため、更新がしやすく作業の手間がかからない、マニュアル作成ツールやアプリの利用がおすすめです。ツールやアプリによっては、簡単にマニュアルの作成・更新ができるだけでなく、動画編集や共有も容易に行えます。

【接客前の準備】マニュアルに載せたい4つの項目

お客様をおもてなしするだけが接客ではありません。ここでは接客の前段階としてマニュアルに載せるべき項目を紹介します。

身だしなみ

飲食業界において従業員の身だしなみは非常に重要なポイントです。身だしなみが乱れていると清潔感がない、不快に感じるなど、お客様にネガティブな印象を与えかねません。

特に意識したいのが、お客様からどう見えるかです。飲食店での身だしなみは清潔感を重視し、ファッションのおしゃれさや個性とは切り離して考えなくてはなりません。髪型や髪色、メイク、香水、爪、髭、制服の着こなし方などについて細かいルールをマニュアルに明記しておくことで、誰でも最低限の身だしなみが整えられます。

笑顔や言葉遣いなど基本的な態度

従業員の表情や言葉遣いなども、接客マナーとして身につけておくべきことです。たとえば、接客時は笑顔で対応する、あいさつは聞き取りやすい声ではっきりと言う、猫背にならず正しい姿勢をキープするなど、接客の基本となるルールですのできちんと記載しておきましょう。

また、正しい敬語の使い方を明記しておくのもおすすめです。人によっては誤った敬語を使い続けていることがあります。一度文章に起こしたものを読み上げるなど敬語を確認しておくとよいでしょう。

なお、これらはマニュアルを読んだだけではマスターできないため、日ごろから意識したり、習慣づけたりするよう、従業員に伝えましょう。

掃除やテーブルセッティング

掃除方法をマニュアル化しておくと、人によって掃除の仕上がりが異なる、といった事態を回避できます。お客様の視界に入るテーブルや座席、フロア、トイレ、エアコンの送風口はもちろんのこと、厨房などのお客様から見えない場所についても掃除方法を記載し、掃除し忘れがないようにチェックリストを作っておきましょう。

なかでもテーブルはお客様にチェックされやすいところです。テーブルはきれいか、メニュー表は汚れていないか、調味料は不足していないか、テーブルとイスの位置がズレていないかなど、細かくマニュアル化してミスがないようにチェックすべき項目をリスト化しておきましょう。

予約などの電話対応

飲食店ではお客様や業者、営業などさまざまなところから電話がかかってきます。そのため、電話対応における基本的なルールや方法についても記載しましょう。 たとえば、電話は音声のみのやり取りとなるため、従業員の声と話し方ですべてが評価されます。通常のトーンよりも声をワントーン上げる、ゆっくり・はっきり話すや、3コール以内に出るといった基本的なことや要件のメモの取り方についても記載します。

特にお客様からの電話予約は、ミスが許されません。そこで、電話がかかってきたときから予約を取り終えるまでと、予約がキャンセルされたときの対応フローを作成して記載しておくと、スムーズな予約対応が可能になります。具体的には「電話を取ってあいさつをし、店名と自分の名前を名乗る→最初に氏名、電話番号・日時・コース・利用人数・要望などを聞く→復唱する」といった流れを書いておくことで、新たに採用した従業員でも電話対応しやすくなります。

【接客中】マニュアルに載せたい7つの項目

接客時のマニュアルは、入店時の案内、注文の取り方、料理やドリンクの提供など、接客の流れに沿ってルールなどを記載しましょう。ここでは接客時に必要なマニュアルに載せたい7つの項目について解説します。

顧客入店時の案内

お客様が来店したときのファーストコンタクトはお店の印象を大きく左右します。「いらっしゃいませ」の声量やお辞儀の仕方など、お客様に失礼がないうえで、コンセプトに沿った言動になるように注意点やルールを細かく明記しましょう。

また、お客様をテーブルへ案内するまでのフローも記載します。たとえば、「予約しているかを聞く→利用人数を確認→テーブルへ案内→着席後メニュー表を提示→お店の利用方法などを説明する」といった具合です。

ほかにも、お店の業態にもよりますがメニュー表を提示する際の注意点として、お客様がすぐ見られるようにメニュー表は開いた状態で渡す、メニュー表は大人1人につき1冊といったことも書いておくとよいでしょう。

注文の取り方

注文は立ったまま聞くのか、それとも膝をついてお客様と目線を合わせて聞くのかなど、注文の取り方のルールも記載します。特にオーダー内容に間違いがないか確認するための復唱は忘れずに明記しておきましょう。

なお、近年はお客様が店内で自身のスマホから注文するモバイルオーダーシステムを導入している飲食店もあります。「食べログオーダー」は、食べログ同様の見やすい画面で簡単に料理やドリンクの注文ができるモバイルオーダーシステムです。注文を取るというフローがなくなるため、マニュアルの整備が不要になり、オーダーの聞き間違えによるミスも防げ、業務の効率化が期待できます。


料理やドリンクの提供

料理やドリンクを提供するのにもルールがあります。たとえば、温かいものは冷めないうちに、冷たいものはぬるくならないうちに提供する、皿に親指がかからないようにする、食器は音を立てずに置くといった内容をマニュアルに記載しましょう。

また、配膳にはマナーがあります。主役や目上の人が明らかな場合にはその方から提供する、和食では主食は左手前、汁ものは右手前といった具合です。ほかにも料理を提供する際に、料理に関する簡単な説明を行う、料理に合うお酒を提案するといった内容も盛り込んでおくとよいでしょう。

バッシングの方法

バッシングとは空いた食器やグラスなどを片づける業務のことです。お店の回転率や顧客満足度に関わるため、バッシングの方法やルールは細かく記載しましょう。

バッシングはタイミングが重要です。食べ終わった直後や会話の途中でバッシングを行うと、お客様を不快にさせてしまう可能性があります。ですので、お客様の会話が途切れたタイミングで食器を下げる、追加注文のタイミングを狙うなど、バッシングのタイミングを忘れずに明記し、タイミングが分からないときはお客様にひと声かけてから下げるなどのルールも決めておくとよいでしょう。

また、優先的に下げる食器やグラスを決めておきましょう。アルコール類のグラスや人気料理の食器は、こまめに片づけることで追加注文が入りやすくなります。

会計やレジでの対応

お客様においしい料理で満足してもらえても、会計やレジで誤りがあってはせっかくの幸せな気分も台無しになってしまいます。会計では伝票に記載された金額の確認、受け取った現金・お釣りの確認と復唱など、金額や釣り銭に間違いがないようにルールを徹底しましょう。

お金を受け取るときは両手で受け取るまたはトレーに載せてもらうなど、お金の受け取り方をはじめ、お釣りやレシートをどのように渡すか、領収書の書き方などもマニュアルに明記しておくのが望ましいです。また、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済サービスを利用している場合には、その対応方法についてもそれぞれ明記しましょう。

お見送りの方法

きちんとしたお見送りができれば、顧客満足度向上につながります。また、このお見送りのシーンはお客様がお店を訪れた余韻として後まで残るものでもあります。そこで、会計後どこまでお見送りするか、どのような言葉をかけ、どのタイミングでお礼のお辞儀をするのかなどを、マニュアルに明記しましょう。 また、忘れ物がないかの声かけや、店舗の紹介カードを渡すタイミングなども記載しておくとよいでしょう。

クレームやトラブル対応

クレームやトラブルが発生したときに、お客様にどんな対応をすればよいのかを、マニュアルに明記しておくことで、いざというときにスムーズに対応できます。 たとえば、感情的に対応しない、お客様の言い分を聞く、しっかりとお詫びをする、といった基本的な対応をはじめ、どのタイミングで上司に引き継ぐべきかなどを記載しておきましょう。

また、ミスやクレームにつながりやすい作業もマニュアルに記載しておくことで、従業員は注意して業務に取り組めます。それでも飲食店では、想定していないクレームやトラブルが発生します。そのようなクレームやトラブルが発生した場合には、対応後にその対応が正しかったかを検証し、ベストな対応策をマニュアルに明記しましょう。これを従業員全員で共有し、再発防止に努めます。 ほかにも災害が起きたときの対応もマニュアルに記載し、普段から有事を想定した避難訓練などを定期的に行うことが大切です。

接客マニュアルを定着させるには

接客マニュアルを作成しても、従業員に定着しなくては意味がありません。以下のような取り組みによってマニュアルを定着させましょう。

定期的に全体に周知する

マニュアルが完成したら、従業員全員にマニュアルが完成したことを伝えましょう。このとき、マニュアルを作成した理由やマニュアルに従うことで得られるメリットなどを伝えるとよいでしょう。 なお、一度伝えただけではまず浸透しません。朝礼やミーティングなどで繰り返しマニュアルの存在をアピールすることで、マニュアルの存在が周知され、マニュアルへの理解度も深まります。

人事考課制度に組み込む

マニュアルをきちんと業務に活用し、記載された内容に従って行動している従業員にはよい評価を与える、反対にマニュアルを使用していない従業員にはペナルティを与えるといった具合に、人事考課制度に組み込むのもひとつの手段です。無理難題なマニュアルでない限り、従う人は多いでしょう。

マニュアルを運用しやすくする

マニュアルは長期的に運用し、定期的に更新し続けることで成果が現れてくるものです。運用しやすく共有が容易でなければ定着しません。そのため、フォーマットは統一し、更新のルールを決めましょう。また、マニュアルの運用担当者や保存場所を決めておくことで、更新漏れや紛失などのトラブルが防げます。

まとめ

飲食店において接客マニュアルを作成することは、人材育成の時間と費用の削減が見込めるだけでなく、接客スキルの均一化が図れて顧客満足度向上に役立ちます。マニュアルを作成する際には、お店のコンセプトを十分確認したうえで業務の流れやルールをまとめ、完成後も改善を繰り返してブラッシュアップすることが大切です。 そしてマニュアルを従業員に定着させるためには、定期的にマニュアルの存在を全体に伝えたり、人事考課制度に組み込んだりするなど、体制を整えることが必要です。

参考URL

なぜ接客マニュアルが必要なのか。飲食店や接客業全般に通じるお店づくり、スタッフ教育のヒントに。|二橋税理士事務所ー横浜市鶴見区の税理士 - 決算・確定申告・会社設立のご相談は二橋税理士事務所へ
飲食店の接客マニュアルは絶対に作っておくこと!マニュアル作成方法解説!|ucc
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新人教育に必要な飲食店の「人材育成マニュアル」の作り方|開店ポータルBiz
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監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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