飲食店がランチ営業を行うメリットとは?成功のためのポイントや戦略について

コロナショック以降、人々が深夜帯の行動を控える傾向になり、大きくライフスタイルが変化しました。そこに着目して、ランチ営業の見直しや初めてランチ営業をしようという店舗も多いのではないでしょうか。この記事では、飲食店のランチ営業でのメリットや注意点を把握し、効果のあるランチ営業の戦略を考察します。

目次

ランチタイム営業をするメリットとは

ランチタイムの営業は、メリットとデメリットが表裏一体です。まずはメリットを確認し、ご自身の店舗で実施するに値するのか、また効果を発揮しやすい施策なのかを判断できるようにしましょう。

売上が増える

これまでランチタイムを営業していなかった店舗は、単純に売上金額が増えることになります。これによりスケールメリットが出て、仕入れ値が安くなったり、業者との契約条件が良くなったりすることがあります。

ディナータイムの宣伝ができる

ランチを営業すると、ダイレクトにそのお店の認知が広がりやすくなります。今まで昼なのに店内が真っ暗だったり、シャッターが降りていたりした店舗が、活気をもって営業しているだけで、その店舗の存在感は全く変わります。開店して5年後に初めてランチ営業を開始して、「毎日ここ通っているんだけど、今日初めて気づいた。」と言われることはよくあることです。 ネット上でお店をすぐに探せる時代ではありますが、相変わらず通りがかりで視界に入ることほどの訴求力が強い宣伝方法は他にありません。業態によっては難しい場合もありますが、ランチの来店をきっかけにディナー利用につながるなど、地道な営業は時間をかけて効果を表すでしょう。

食材ロスを減らせる

特に鮮度が重要視される業態の飲食店においてランチ営業の効果が表れやすいのは、食材の回転率が良くなることです。これまで夜の営業で消費されずに1、2日でロスとなっていた食材を、ランチのメニューで使用して減らせるため、原価率の改善に大きく役立ちます。普段からロスがあまり出ていないお店でも、食材の鮮度がさらに良くなるのは大きなメリットとでしょう。

ランチタイム営業をする注意点

ランチタイム営業には多くのメリットもありますが、その反面、どうしても失ってしまうものもあります。この要点を把握しバランスをとっていくのが経営の仕事ですので、注意するべきことをしっかりと捉えて、ランチ営業の戦略を立てていきましょう。

ディナーと比べて客単価が低い

一番わかりやすく予測できることですが、ディナーと比べてランチタイムは、客単価が非常に低くなります。根本的にお酒のオーダーがほとんどないことと滞留時間が短いことから、客単価が伸びる要素がありません。特にオフィス街では「短時間で低予算」がスタンダードとなっているので、この傾向がとても顕著です。

価格競争が厳しい

ランチタイムは特に価格競争が熾烈になります。40分から1時間の滞留時間が多いランチ利用では、他店との差をつけられるような時間をかけた演出や、コミュニケーションをしっかりとる接客は求められていません。 味と提供スピード、そして価格、この3点がクローズアップされます。特に価格に関しては、夜の消費行動とは違って勢いで高価なものを選ぶようなことはないので、よりシビアに他店と比較されていることを認識すべきです。

スタッフに負担がかかる

労務・人材管理には細心の注意が必要です。営業時間が伸びることで、管理者や経営者の目の届かないところが増えてしまいます。また、スタッフを増強して、今まで働いていた人がランチ営業によって勤務時間が増えなかったとしても、精神的な負担は多くなることがあります。 一番留意すべき点は、ファーストフード店など提供するものが1日中あまり変わらない店舗でない限り、ディナーとランチでは仕事のリズムが全く違い、準備の仕方もかなり変わることです。その違いを踏まえて、昼と夜のスタッフにそれぞれ配慮しましょう。

お店のカテゴリー別ランチ営業戦略

ランチ営業する目的により、その戦略は大きく変わってきます。マーケティングにおいて、フロントエンドとバックエンドという考え方があります。フロントエンドとして、ランチタイムで割安な商品を提供して認知を得て、次にバックエンドとして、ディナータイムに利用していただき利益を確保するという手法です。このように、ランチのことだけを考えていては経営戦略になりませんので、多角的に少しい大きい視点で、お店の特性に合ったランチ営業戦略を考えていきましょう。

1. ランチとディナーの商品が変わらないタイプ

この場合は、まず回転率を上げることを目標としましょう。お客様には快適に過ごしていただくために、必要な時間をかけて食事してもらうことは前提条件です。よって無駄な時間をなくすには、お客様の入れ替えの時間と、オーダーを受けてから提供するまでの時間を限りなく縮めるしかありません。

そのためには、営業時間外の準備の時間とその質が重要となってきます。また、ランチとディナーで提供する商品がほとんど変わらないのであれば、オペレーションも変わらないはずですので、ランチが終わってからディナーのための配置換えやセットアップの変更という作業が不要です。したがって、提供スピードを上げるための設備投資や備品の購入は、思い切って進めるべきでしょう。

2. ディナーでお酒をメインに売るタイプ

お酒をメインとした店舗のランチ営業戦略は、1点に限ります。 夜のお酒メインのお店は、優良な店舗であればあるほど、日差しが入らず日中の開放的な雰囲気にはならないことが多くなります。さらに内装も、お酒を飲んでゆったりとするためのものと、ランチを食べてサッと出ていくためのものではまったく違うでしょう。カウンターの椅子が高かったり、ソファー席ばかりで食べづらかったりする店舗が多いのも事実です。

最初からディナータイムに来ていただくことをあまり期待せずに、お店の特徴は出しすぎず、お客様の使いやすいように使ってもらうことを考えましょう。ほとんど場所貸しのビジネスにもなってしまうかもしれませんが、これも仕方ありません。Wi-Fiの環境を整え、スマホの充電をできるようにするなどの方向で努力すべきでしょう。

3. ディナーで食事をメインに売るタイプ

前述したように、ランチ営業をフロントエンドと捉えて進めていくべきなのが、このディナータイムの食事をメインとしている店舗です。フレンチやお寿司、各国料理などのお店は、失敗したくない、高そう、冒険するのは怖い、と思われがちです。こうしたファーストトライのしにくい店舗は、お店のブランドは落とさない範囲で敷居を下げて、ランチタイムにお客様を迎え入れてみるべきです。

ただし、ディナーで提供している料理の食材やクオリティーを落としてまで、価格を下げることはおすすめできません。周りに合わせて1000円のランチに固執するなどしては、かえって評判を落とすことになります。ディナーに来店していただくためのフロントエンド、集客・宣伝目的と考えて、満足度の高い商品を実直に提供することが大事です。

飲食店のランチ営業戦略に欠かせない6つのポイント

ここからは、ランチ営業自体でしっかりと利益を出すことを目標とする店舗を主な対象として、取り組むべき施策を6つ挙げます。ランチタイムの一番の特性は、ディナーよりデイリーに利用できることであり、リピーターを確保することは利益の確保に直結します。

DX化を徹底する

ランチタイムの経費の中で最も大きな負担となるのは、人件費です。この経費を最小限にするために採用できる機器やシステム、アプリを確実に導入していきましょう。キャッシュレス決済の飲食店も徐々に増えており、それが常識となるのも遠い未来ではないかもしれません。

限定メニューを作る

ランチで勝負するお店では、重厚さより気軽さが大事です。 もっと言えば、たとえ高級店であっても活気と楽しさがあることが重要です。例えば、「今日の日替わりはオムライスだ」「20食限定のハンバーグだって」といったお祭り感があることが、フットワークのある消費につながります。もちろん、そんな売り出し方をしたランチメニューのクオリティーが低いと話になりませんが、日常であるランチを飽きさせないようにする努力は必要です。

ターゲットを絞る

前述しましたが、ランチタイムの営業では回転率がやはり重要です。そのためには、ターゲットを絞り込み、多少なら待ってでも食べたいと思ってくれる熱烈なファンを増やすための戦略を練る必要があります。そうすることで、薄利多売となっても利益を確保できるようになるでしょう。

どんな方でも入りやすいメニューやサービスは、ファミレスと勝負しても太刀打ちできません。ガツガツかき込んでいく20代のサラリーマンに絞るのか、1500円超えてもいいから健康に配慮した上質なものを食べたい50代を対象とするのか、1点に集中して営業努力を続けるべきでしょう。

価格設定を練る

ターゲットを絞り込んだ魅力的な限定メニューを作ったとしても、価格設定が適切でなければ意味がありません。まずは近隣の競合店舗がどんな価格帯の料理を提供しているのかを知ることが大事です。しかしながら、競合店舗を意識して価格を合わせたことによって、料理やサービスの質が下がっては元も子もありません。

考案したメニューで採算が取れないということであれば、付け合わせやメインの原材料を見直せないか、価格を下げられない分他のサービスで補完できないかと、価格とクオリティーのバランスをよく検討しましょう。

看板やポップを出す

人はディナーのお店選びには多くの時間をかけますが、ランチに関しては直感的に選びます。入りやすさや、活気があることの方が重要です。 リピーターに訴求するならば、いつもと違うことをやっているというアピールは効果があります。限定メニューや季節メニュー、日替わりなど、変化していることを伝えていきましょう。ランチ専用の看板を作成することも、メニューと同様に大切です。

SNSで宣伝をする

現代の広告宣伝としてSNSの効果が高いことは周知の事実ですが、その情報のスピード感は年々増しています。特にランチはディナーとは違い、「あの店美味しかったよ。」と投稿すれば、それを見たフォロワーは、「じゃあ明日行ってみよう」とアクションをすぐに起こせます。またマップ機能としっかり連動したSNSも増えてきていますので、その日のランチの情報を午前中に投稿するだけでも見込み客は増えるでしょう。

まとめ

食材費や人件費の高騰で、ランチ営業はさらに難しくなってきたと考える経営者も少なくないでしょう。しかし、お客様の満足度が高いお店はすぐに反応があり、あっという間に席が埋まるのがランチの面白いところでもあります。飲酒量が減り、大人数の宴会が激減した昨今では、ランチタイムの戦略を大きく見直して成長させていくことが必須となるでしょう。

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参考URL

3つのランチ戦略~飲食店のタイプ別に考える~ - 店サポ - 飲食店 居抜き店舗 専門情報サイト
飲食店がランチ営業で集客するポイントやメリットとは?効果的なランチの宣伝方法も紹介 | 口コミラボ

監修者:太田とよしき

プロフィール

株式会社パディーズの代表。20歳より大手飲食チェーンにて店長職につき、エリアマネージャー、県内の統括責任者を経験。
その後、新規事業開発部への所属となり、外食産業の新業態の開拓、商品開発、人材教育を担当した後に退職。
海外の16都市にて飲食ビジネスを勉強したのち、恵比寿にて独立開業し、2年目に年商6000万を達成する。 多店舗展開しながら兼業で飲食店コンサルタントを開始。
2022年4月に飲食事業を売却し、現在は飲食系のコンサルタント業に専念し、新規開業のサポートを数多く手がけている。

noteにて、ブログと音声メディア『ラジオ開店準備中!』を配信中。

サイトURL

https://toyoshiki-ohta.com 

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