飲食店の営業許可を取る方法とは? 流れや費用をわかりやすく解説
飲食店を開業し運営するには、飲食店営業の許可を取得しなくてはなりません。許可を取得しないまま営業してしまうと無許可営業に該当し、ペナルティの対象になってしまいます。本記事では、飲食店営業の許可を取得するための条件や流れ、費用などについて詳しく解説します。
目次
飲食店経営には営業許可が必要
営業許可とは、各都道府県の条例で定められた施設設備の基準をクリアし、保健所からの検査を経て営業を許可されることです。営業許可が必要な業種としては、建設業や化粧品製造販売業、レンタカー業、旅館・ホテル業などが該当します。 飲食店を経営する際にも、営業許可を取得する必要があります。店舗を構える地域を管轄する保健所に申請し、許可を得てからでないと営業ができません。
なお、営業許可を得ないまま飲食店を経営してしまうと、食品衛生法違反となりペナルティの対象になってしまいます。2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられるため、事前に必ず許可を得ましょう。
改正された営業許可制度
改正食品衛生法が令和3年6月1日から施行されました。主な改正ポイントは、営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設です。飲食業界に関わる変更点としては、営業許可を取得しなくてはならない業種の一部が統合、及び追加されました。
この改正にあたって、営業許可の施設基準として、食品衛生責任者の設置が義務づけられています。 業種の変更点としては、喫茶店営業が飲食店業に統合されました。改正前は、ソフトドリンクと茶菓のみを提供する業態の場合、喫茶店営業を取得すれば営業できましたが、改正後は喫茶店営業そのものがなくなったため飲食店営業の許可を得なくてはなりません。 一方で、営業届出制度の創設により、食中毒などのリスクが低いと考えられる一部の業種に関しては、営業許可の施設基準を満たしていなくても、届出を行うことで営業が可能となりました。
飲食店の営業許可に必要な条件
飲食店が営業許可を得るのに必要な条件は、食品衛生責任者の設置と営業許可証の取得です。それぞれの条件について、詳しく紹介します。
食品衛生責任者の設置
法改正によって、営業許可に食品衛生責任者の設置が義務づけられました。1店舗に1人以上を設置しなくてはならず、1人の責任者を複数の店舗へ掛け持ちさせることはできません。
食品衛生責任者として設置できるのは、以下の有資格者です。
- 栄養士
- 調理師
- 製菓衛生師
- 食鳥処理衛生管理者
- と畜場法に規定する衛生管理責任者もしくは作業衛生責任者
- 船舶料理士
- 食品衛生管理者
これらの資格を持っていなくても、食品衛生責任者養成講習を受講すれば資格が得られます。当該講座は各都道府県の食品衛生協会が主催しており、衛生法規などの講座を受けることで修了証を発行してもらえます。 なお、受講する際には費用が発生します。各都道府県によって受講費用が異なるため、事前に確認しておきましょう。 時期などにより、講習のスケジュールがいっぱいになっていることもあるので、余裕を持って受講の申し込みをしておくことをおすすめします。
営業許可証の取得
出店する地域を管轄する保健所へ申請を行い、施設基準を満たすことを確認する所定の検査をクリアすると営業許可証を発行してもらえます。 飲食店の業態や提供するメニューによっては、営業許可ではなく届出で済むケースがあります。この場合、前述の食品衛生責任者の設置も不要です。
なお、飲食店でもスタッフが来店客に接待しつつ飲食するようなスタイルのお店では、「風俗営業許可」を取得しなくてはなりません。この営業方式には、キャバクラやスナックなどが該当します。また、深夜0時以降もアルコールを提供するお店は、「深夜酒類提供飲食営業」開始届を提出する必要があります。 風俗営業許可と深夜酒類提供飲食営業の2つについては、出店する地域が管轄する警察署で手続きを行います。
申請から営業許可を取るまでの流れ
飲食店の営業許可をスムーズに取得するため、大まかな流れを把握しておきましょう。まずは保健所に事前相談をし、そのうえで営業許可の申請→検査→許可証の交付と進みます。
保健所に事前相談をする
いきなり営業許可の申請をするのではなく、まずは管轄の保健所へ相談しましょう。検査を受ける前に、どのような要件を満たすべきなのかを正確に把握しなくてはなりません。保健所へ相談すれば、条例などに定められた地域特有のルールなども併せて教えてもらえます。
基本的に、保健所がチェックするのは施設の設備面です。内装や設備工事がすべて完了したあとで検査に不合格となると、指摘された箇所を工事し直す必要が生じ、オープンに間に合わなくなるかもしれません。 このようなことにならないよう、着工前に図面を携えて保健所へ訪れ、予定している設備で営業に問題がないかを確認しておきましょう。 専門的な話も出てくるので、内装工事業者に依頼予定であれば、同席してもらう。もしくは、代わりに聞いてきてもらうほうが良いでしょう。
営業許可の申請を行う
営業許可の申請は、その地域が管轄する保健所で行います。申請にはさまざまな書類が必要なので漏れなく準備しておきましょう。各申請書類については後述します。
保健所へ相談に訪れたとき、どのような書類が必要なのか確認しておくと安心です。準備ができたら保健所へ申請します。 万が一、検査に合格できなかった場合には、是正措置を行ったうえで、再度保健所へ検査を依頼する必要があります。開業予定日の2~3週間前ほどの余裕をもって申請をしておきましょう。 申請時には手続きの手数料を支払います。自治体によって支払い方法に違いがあるため、保健所への相談時に確認しておきましょう。
オンライン申請も可能に
食品衛生申請等システムを利用すれば、オンラインで営業許可の申請が可能です。わざわざ保健所へ足を運ぶ必要がないため、忙しくて保健所へ行けないといった方におすすめです。
食品衛生申請等システムは、厚生労働省が提供するサービスです。公式ページにアクセスしてアカウントを作成すれば、必要事項の入力や必要書類の登録をWeb上で行えます。申請手数料に関しては保健所へ確認のうえ、指定された方法で支払いましょう。 初めて利用する場合でも、利用方法を詳しく解説した動画コンテンツが用意されているため、迷わず申請手続きを行えます。
保健所の施設検査を受ける
工事を行う前に、保健所での相談時に図面などをチェックしてもらい、問題がないことを確認したうえで着工します。工事の進捗状況を踏まえたうえで、検査を受ける時期を調整して保健所へと申請しましょう。工事が完了したら検査を受けられます。
検査では、衛生面に問題がないことや、十分な設備を整えていることをチェックされます。地方自治体によって多少ルールが違いますので、開業する地域のチェック項目を事前に確認しておきましょう。具体的には以下のような点がよく指摘されます。
- 2層シンクがあるか
- 手洗い専用シンクがあるか
- 石鹸などが固定されているか
- グリストラップがあるか
- ホールと客席の仕切りがされているか
他にも、埃やねずみなどの侵入防止や換気、照明など多数の項目を満たす必要があります。 材料などの保管庫や冷蔵庫についても設置の必要があるため、すべての設備・機器をそろえてから検査を受けましょう。
営業許可証が交付される
検査後、問題がないと判断されれば営業許可証が交付されます。交付の方法は、自治体によって窓口や郵送などの違いがあります。 営業許可証を取得すれば、いよいよ飲食店の開業が可能です。
また、営業許可証があれば、開店準備の期間中からITサービスへの登録ができます。グルメサイトを活用すれば、飲食店の生命線とも言える集客を効率的に行えるでしょう。
食べログでは、多くのユーザーに訴求でき、集客力を高められる「食べログ店舗会員」を提供しています。営業時間やメニューなど正しい店舗情報を発信できるうえ、ネット予約やクーポンの発行も可能で、効率よく集客を行えます。
営業許可証の更新
営業許可証には有効期限が設けられています。許可証の有効期限が切れたまま営業を続けてしまうと、無許可営業として罰則の対象となります。期限をすぎる前に必ず更新手続きを行いましょう。
許可証の有効期限は都道府県によって異なるものの、一般的に5~8年程度です。 有効期限の直前での更新は、何らかのトラブルによって申請や交付が遅れた場合、営業を停止せざるを得ないといったリスクがあります。基本的には、期限の1ヶ月前までには更新手続きを行いましょう。
営業許可の申請に必要な書類
営業許可の申請に必要な書類は5つあります。「営業許可申請書」と「営業施設及び設備の図面」、「食品衛生責任者の資格を証明するもの」、「水質検査成績書」、法人であれば「登記事項証明書」が必要です。
営業許可申請書
営業許可申請書は、営業の許可を取得するにあたり申請に用いる書類です。管轄の保健所の窓口や、各自治体のWebサイトでダウンロードして入手できます。
申請書に記入する内容は、氏名や営業所の所在地、営業の種類、食品衛生責任者氏名、資格などです。不明点については、保健所へ提出する際に窓口で記入しても問題ありません。
営業施設及び設備の図面
店内設備の概要や配置をリスト化した営業設備の大要・配置図が必要です。書式は保健所の窓口や自治体のWebサイトからダウンロードできます。
内装の配置の平面図も用意しましょう。厨房とホールの位置関係などを示した図面です。自作が難しいのなら内装工事に携わった業者へ依頼するのも良いでしょう。 保健所への事前相談なども含めて、内装業者が取り組んでくれることも多いです。内装工事を事業者へ依頼する場合は、依頼する前に営業許可申請までフォローしてくれるのかを確認しておくと良いでしょう。
店舗の所在地を示す場所の見取り図も必要です。詳細に記載する必要はなく、ネット上の地図をプリントアウトし、場所がわかるよう示せれば問題ありません。
食品衛生責任者の資格を証明するもの
食品衛生責任者について、氏名を申請書許可に記載するだけでなく、その資格を証明できる書類が求められます。 調理師や栄養士であれば、その資格証を証明書として用意します。食品衛生責任者の養成講座を受講し修了したのなら、発行された修了証書で証明できます。
なお、食品衛生責任者養成講習会をすぐに受講できないといったケースでは、のちに養成講習会を受講する誓約書で代用できます。誓約書を提出したあとは、所定の日数以内に講習を受講し、改めて修了証書を提示しなくてはなりません。
水質検査成績書
貯水槽の水や井戸水などを店内で使用する際には、水質検査成績書の提出が必要です。商業ビルでは、共用の貯水槽を利用していることがあり、該当する水道を使う場合には書類を用意しましょう。 水質検査を自分で行う必要はなく、基本的には建物を管理している会社やオーナーなどが検査結果を所持しているため、問い合わせすれば入手可能です。
登記事項証明書
登記事項証明書とは、法務局へ登記された情報を証明する書類です。法人として飲食店を経営する場合には、登記事項証明書を取得しなくてはなりません。 法務局の窓口や、オンライン申請、郵送申請で取得できます。郵送の場合、1週間程度かかるため、できるだけ早めに申請しましょう。
営業許可の申請にかかる費用
営業許可の申請には、手数料が発生します。具体的な費用については、開業しようとしている地域や、店舗の形態によって変わります。
例として、東京都新宿区での申請費用は以下の通りです。
- 飲食店営業:18,300円
- 飲食店営業(移動・臨時):5,600円
- 食肉販売業:11,500円
- 菓子製造業:16,800円
また、福岡県福岡市では以下の通りです。
- 飲食店:16,600円
- 食肉販売業:9,800円
- 菓子製造業14,400円
出店する地域での申請費用については、管轄の保健所へ問い合わせてみましょう。相談で足を運んだときに併せて質問しておくとスムーズです。
なお、営業許可申請の手続きを行政書士などの専門家へ依頼することもできます。専門家へ依頼すると許可の取得までスムーズに進み、手間も省けるものの、当然費用が発生するため注意しましょう。代行費用については依頼する範囲や行政書士によって異なります。
まとめ
飲食店営業の許可を取得するには、食品衛生責任者を1店舗に1人以上配置し、営業許可証を交付してもらわなくてはなりません。申請にはさまざまな書類が必要であるため、手続きをスムーズに進めるため必要書類は事前にしっかりと準備しておきましょう。 また、申請に要する費用は自治体によって異なるため、事前の確認が必須です。保健所へ相談した際に併せて確認しておくと良いでしょう。
参考URL
食品衛生責任者について|一般社団法人東京都食品衛生協会
風俗営業許可・深夜酒類提供飲食店届出|高原社会保険労務士・行政書士事務所
食品衛生申請等システム|厚生労働省
営業許可業種と申請手数料一覧:新宿区
営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報|厚生労働省
食品衛生法 | e-Gov法令検索
許認可を得ずに事業を始めてしまった時の対応策 - リーガルメディア|Legal Media
福岡市 食品関係の営業許可・営業届出について|福岡市
福岡市 新たな営業許可・届出制度がスタートしました|福岡市
営業許可・営業届出制度が新しくなりました / 熊本市ホームページ
営業許可が必要な業種のまとめ | 起業家バンク
カフェと喫茶店の違いはなくなる?「喫茶店営業」の終了を分かりやすく解説!|USENの開業支援サイト|canaeru(カナエル)
飲食店の営業許可証とは?取得までの流れと必要な書類、更新についても解説|法人のお客さま|NTT東日本
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監修者:原島 純一
プロフィール | 株式会社STAYDREAMの代表。株式会社すかいらーくにて店舗マネジメント、従業員教育などを担当。また、フロアーの新フォーメーションの構築や、新メニュー開発などを経験。2006年にビジネスコーチ、コンサルタントして独立。2008年中小企業診断士の資格を取得。現在は、全国の飲食店の新規開業から、既存店の立て直しなどの支援を実施している。また、「わかりやすい言葉で伝え、明日から実践できる」をテーマに、全国でセミナー講師活動も実施中。 |
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